2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

院内助産とは 20  <助産師の病院嫌い その2>

医療の進歩、診断・治療技術の進歩、そして医療機器の進歩の中で、産科に限らずどの科でも、その恩恵の部分と反対に患者さんの日常生活への制限が増える部分との兼ね合いではおおいに悩むものです。 特に初めてあらたな技術が出始めた時には、まだ患者さんの…

院内助産とは 19 <助産師の病院嫌い その1>

看護系の専門医療職には、保健師、助産師、看護師があります。 この中でなぜ助産師には「病院嫌い」を公言する人が多いのだろうと、不思議に思っています。 いえ、たぶん人数的に多いのではなく、公言する人は少なくても声が大きく感じられるというところで…

医学的知識に誤りがあったら訂正を

一晩仕事をして家に帰ってきたら、なんだか大変なことになっていました。 昨日から琴子ちゃんのお母さんのブログにアクセスできなくて、何かあったのかと気になっていました。 実名が掲載された上で、信仰を理由に危険な助産行為をしているという事実無根の…

院内助産とは18 <助産師の「やりがい」が目的なのか>

前回ご紹介した「助産師からみた出産の問題点」という新聞記事の中に「問題点と提言を聞いた」とあるのですが、読んでも提言のような内容はなく、助産師の仕事の魅力が語られていて締めくくられています。 もし出産する方たちが「点滴や機械にしばられている…

院内助産とは 17 <「助産師からみた出産の問題点」>

院内助産について、妊産婦さん、産科医側からのあれこれを考えたところで、次に助産師側から見直してみようと思っていたところ、ちょうどネット上で山梨県の自宅分娩の記事が紹介されていました。 「ウォッチング'12:自宅出産 『赤ちゃんが生まれた』家族全…

院内助産とは 16 <その責任は誰にあるのか>

前回の記事で平成18年(2006年)に日本看護協会から出された「病院・診療所における助産師の働き方」という資料を紹介しました。 http://www.nurse.or.jp/nursing/professional/jyosanshi/pdf/jyosansinohataraki.pdf 2006年当時は、助産師の自立や助産院…

院内助産とは 15 <産科医にとっての効果は?>

前回の記事の岩手県立釜石病院のように、産科医不足の地域によっては院内助産を取り入れることで反対に、産科医療の完全撤退を防ぐことができる場合もあるかもしれません。 産科医にとって、院内助産はなんらかの良い効果があるのでしょうか? 厚生労働省医…

院内助産とは 14 <地域で出産できる場所がない>

日本中をみれば、人口が集中している地域と過疎化の進む地域との医療施設へのアクセスの利便性には大きな差があります。 自治体にひとつも産科施設がなく、妊婦健診や分娩も車で1時間以上もかかる隣町の病院で受けざるを得ないなどのニュースを聞くと、何か…

院内助産とは 13 <分娩数や助産師確保のため>

思い返せば私の助産師としての二十数年は、ちょうど出産場所のアメニティ(快適性)がどんどんと変化した時期に一致していました。 30年前に看護師になった頃の病院というのは、大病院でも大部屋が標準で、個室というのはよほどのVIPか急変や重症患者さんだ…

院内助産とは 12 <産科医による医療介入への反論>

1980年代頃から病院での出産に対する医療介入への批判、そしてより自然なお産を求める社会の動きに反応したのは助産師だけではなく、産科の先生方の中にもいらっしゃいました。 1990年代に「自然なお産」「産む人が主体のお産」などを考える集会に行くと、そ…

院内助産とは 11 <院内助産を推進する産科医>

院内助産を推進する産科医の先生方というのは、どのような考えを持ち、何が動機になっているのだろうということにずっと関心がありました。 助産師になって二十数年たくさんの産科の先生と一緒に働いてきましたが、私が出会った産科医は皆、問題がなければ赤…

院内助産とは 10 <助産師を見守る産科医の思いとは>

助産師に分娩経過の判断を任せる。 産科医の立場にしたら、これは相当大変なことではないかと思います。 私がもし医師の立場なら、無事に出産が終了するまで気が気ではないと思います。 自分自身を振り返って、助産師になって数年目から10年目頃が一番、「自…

院内助産とは 9 <日本産婦人科医会の資料の紹介>

おさママさんのコメントで、日本産婦人科医会が出した資料をご紹介くださいました。http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120712/1342045829#c1342183490 ありがとうございます。 「助産師主導分娩システムにおける助産師と産科医の連携について」 日本産婦人科医…

院内助産とは 8 <院内助産のメリットとデメリット>

産む人にはきちんと院内助産のメリットとデメリットは伝わっているのでしょうか? その前に院内助産を推進している側は、院内助産のメリットとデメリットをどのようにとらえているのでしょうか。 厚生労働省医政局看護課が出している「院内助産所・助産師外…

院内助産とは 7 <産む人にとってのイメージ>

院内助産院を選択した気持ちを公表していらっしゃるものを見つけました。 どのようなイメージがあり、何を期待されているのか少し参考にさせていただこうと思い抜き出してみます。 決して、これを書かれた方を批判したりする意図はありません。 あくまでも妊…

院内助産とは 6  <産む人にとっての「院内助産」>

出産場所を選ぶというのは、なかなか大変だろうと思います。 最近は「選ぶ」余地もない地域が増えてきたようですが。 日本の場合、ローリスクの出産は診療所、ハイリスクほどではないけど医学的管理が必要な場合は総合病院、そしてハイリスクは周産期センタ…

院内助産とは 5 <院内助産のイメージとは>

定義や言葉の意味を先に書いてきたのですが、いったい「院内助産」って何ですか?と思われる方のほうが多いのではないかと思います。 院内助産を開設している病院のHPを見ると、「あたたかいお産」「あなたらしいお産」「助産師が寄り添います」などの言葉が…

院内助産とは 4 <院内助産という言葉の矛盾>

日本看護協会が2004年に助産師外来・院内助産の普及推進を始めた頃、ちょうど新しい臨床研修医制度が始まり大学の医局からの産科医が派遣できず、分娩休止に追い込まれた病院が増えました。 市民病院など、それまで長く地域に根ざしていた医療機関から産科が…

院内助産とは 3 <院内助産はどのようなものか>

何を持って「助産師が主体的」であるとするのか、そのあたりがいまだによくわかりません。 総合病院と診療所で勤務してきましたが、医師とともに働いてきて私自身が「主体的でない働き方だったのか」というとそんなことはないと思っています。 それでも、私…

院内助産とは 2 <院内助産の目的と定義>

院内助産について考えていく前にきちんと定義を見直す必要があると思いますので、今日はちょっと退屈かと思いますが定義のお話です。 でも読めば読むほどいったい「院内助産」とは何か、何を求めているのか、助産師の私でもよくわからなくなりますが。 <「…

院内助産とは 1 <「院内助産」いつ頃から使われたか>

「院内助産」、ここ数年でマスコミの報道などでも耳にするようになりました。 きっとなんとなくよいイメージができあがっているのではないかと思います。 私からみたら、「院内助産」という言葉はもっと違うニュアンスでずっと前から使っていました。 きっと…

「産む力」「生まれる力」と院内助産

女性には本来「産む力」が備わっている。赤ちゃんにも「生まれる力」がある。 「自然なお産」という流れ、あるいは「医療介入の不要なお産」という流れではよく耳にする表現です。 女性の体が妊娠準備のために周期的に変化し、受精卵の着床から分娩までそれ…