2012-01-01から1年間の記事一覧

医療介入とは 53 <赤ちゃんを「取り上げる」こととトリアゲバアサン>

赤ちゃんを「取り上げる」。よく耳にする表現です。 昔の無資格の産婆さんのことを「トリアゲバアサン」とも呼んでいました。 私自身はほとんど使わないのですが、助産師になって二十数年にして初めてこの「取り上げる」という表現の由来について最近知りま…

医療介入とは 52 「分娩第2期のケア」学生時代の教科書より

お産が始まって陣痛を乗り越える分娩第1期には、昔から「産婦のとるべき体位、姿勢の原則はないので、産婦が最も安楽だという体位にまかせればよい」という認識が助産師にはあり、教育の中でもそのように教えられていたことを前回の記事で書きました。 その…

「分娩第1期のケア」学生時代の教科書より

お産で入院した産婦さんにどのように具体的に対応するのか、二十数年前に学んだことを昨日に続けて振り返ってみようと思います。 日本看護協会出版会の「母子保健ノート2 助産学」(1987年)からの引用です。 ちなみに編者は青木康子氏、内山芳子氏、加藤尚…

「産婦の快適性」助産師はどのように教育されるのか

「産婦の快適性」について、助産師はどのように教育されてきたのでしょうか? 私が二十数年前に助産婦学校で使った教科書、「母子保健ノート2 助産学」(日本看護協会出版会、1987年)を参考に振り返ってみようと思います。 とても基本的でよいことがたくさ…

医療介入とは 51 「終始自由な体位」とはなにかー分娩第1期

分娩進行中に自由な姿勢をとれることが産婦さんの快適性を高める、という点に関しては反論は出てこないのではないかと思います。 今日は、分娩進行の中の分娩第1期の産婦さんの自由な姿勢と快適性について考えてみたいと思います。 <「自由な姿勢」の主張の…

医療介入とは50 「仰向けのお産」は医療者の都合?

アクティブ・バースやフリースタイル分娩について、医学的あるいは看護学・助産学的には統一した定義はまだなさそうです。 「医療介入とは 49 <アクティブ・バースとフリースタイル分娩>」で紹介したように、フリースタイル分娩では「産婦の身体や精神を抑…

「看護の本質」というタグをつくってみます

いつの間にか「医療介入とは」で始まるタイトルが50近くになってしまいました。 ブログを訪れてくださる方も、「あれ?まだやっている」とタイトルを見ただけでお腹がいっぱいになられているかもしれないとひそかに心配しています。 「医療介入とは」は、…

医療介入とは 49 <アクティブ・バースとフリースタイル分娩>

「アクティブ・バース」や「フリースタイル分娩」とは、具体的にどのような内容を指し、何を求めているのでしょうか。 11月6日の「医療介入とは 41 <主体的なお産とはどのようなことか>」の中で厚生労働省科学研究の「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠…

医療介入とは 48 <再び、「主体的なお産」とは何か>

長々と主体的なお産という表現について考えてきたのですが、そもそも妊娠・出産に関することに「主体的」という表現を使うこと自体が矛盾を含んでしまうと思います。 主体的・・・自分の意思・判断に基づいて行動するさま (YAHOO!辞書より引用) あくまでも…

医療介入とは 47 <「自分で産む」という表現>

妊娠・出産そして育児というのは、「努力や準備をしてもどうしようもないことがある」ことを痛感させられる機会ともいえるかもしれません。 それまでの自分1人の人生なら、がむしゃらに努力したり計画的に準備をすればそれなりに結果が出ることも多かったか…

医療介入とは 46 <「産ませてもらう」と感じる時ー出産編>

前回の記事で、妊婦さんに対して医療者側が「『産ませてもらう』と思っている人」に通じる気持ちを抱くのは、妊婦さんが妊娠・出産に対しての見通しがうまく立たないときの言動ではないかと考えていることを書きました。 そして医療者側と妊婦さんの見通しの…

医療介入とは 45  <「産ませてもらう」と感じる時ー妊娠編>

医療者側にとっては、妊娠した女性が前向きに妊娠・出産そして育児までに必要な知識を得て準備してほしいという期待があります。 それが危険な状況を回避し、より順調に過ごすための最低限のことだと医療者側は考えます。 危機的な状況とは妊娠・分娩に伴う…

医療介入とは 44 <「産ませてもらう」と感じる時は?>

私の助産師生活も、できるだけ医療介入をしないことや正常なお産は助産師だけで介助できるということにこだわったり、代替療法的なものや考えもそれなりに取り入れたりしていたので、いやはや人のことは言えませんと思いつつこのブログを書いています。 ただ…

医療介入とは 43 <「産ませてもらう」お産>

昨日の競泳ワールドカップも楽しかった! 応援していた古賀淳也選手も2位、酒井志穂選手も3位、それそれ日本選手の中ではトップに戻ってきたので来年の世界水泳が楽しみです。 そしてハンガリーのカティンカ・ホッスー選手にはまた圧倒されました。 400m個…

競泳ワールドカップ東京2012

「主体的なお産」とは何か書きますと意気込みながら、競泳の話ですみません。 昨日と今日の2日間、東京の辰巳国際プールで競泳ワールドカップが開催されています。 http://www.japan-swim.com/swc2012/index.html これは10月初旬にドバイから始まり、世界…

医療介入とは 42   <主体的なお産とはどのようなことか>

「自然なお産」や「アクティブバース」「フリースタイル分娩」などには、必ずと言ってよいほど「主体的なお産」という表現がでてきます。 それに対して「分娩台」というのは、「主体的なお産」の対義語的な「受身のお産」「産まされるお産」などのメタファー…

医療介入とは 41 <お産と重力>

お産の進み方は、当たり前ですが本当にひとりひとりそれぞれです。 ひとりひとりというようりは、分娩時には母体と胎児のペアですから一組一組と言った方が正しいでしょうか。 分娩介助の経験を積めば、「このお産はこんな感じで進むだろう」と入院時や途中…

医療介入とは 40  <分娩台に対する感じ方のあれこれ>

私の二十数年の助産師生活は、分娩台をどうとらえるかという時代の変化にも大きく影響されました。ちょっと大げさな書き方ですか。 分娩台は医療者側の都合のためであり産婦にとってはメリットがないような意見を見ることが増えて、「ごめんなさい。うちは分…

医療介入とは 39 <畳や床の上のお産、清潔と不潔>

前回の記事で書いたように、分娩が終わった後の分娩室に血液のあとが残っていないように徹底した清掃をする私です。 とても清潔好きかというと、職場を離れるとそれほどでもないと思います。 家の掃除も手抜きです。 住んでいた東南アジアの某国の雰囲気が好…

医療介入とは 38 <畳の上のお産について>

畳というと「畳の上で死にたい」と表現されるように、「自宅」の隠喩とも言えるかもしれません。 それはできるだけ心穏やかな状況を求めている気持ちなのではないかと思います。 現実的にはどうでしょうか。 たとえば、私の両親も高齢になり足腰が弱くなった…

医療介入とは 37 <院内感染標準予防対策の始まり>   *11月1日 追記あり

1980年代初頭に看護師として働き始めた頃は、今のように医療用のディスポ(使い捨て)製品が潤沢にある時代ではありませんでした。 血液が付いたガーゼも、消毒・洗濯して再滅菌して使う施設も珍しくはありませんでした。現在の医療従事者の感覚では「信じら…

医療介入とは 36 <分娩台と医療安全対策>

分娩台のお産というと、「仰臥位のお産」「脚を固定される」などが主な批判だと思います。 これらの批判はもちろん分娩台の構造上の問題もあると思いますが、どちらかというと助産師の分娩介助技術をどれだけ標準化し安全に実施できるかという管理的な問題に…

医療介入とは 35 <分娩台、助産師にとっての快適性>

分娩進行中、産婦さんができるだけ自由な姿勢で快適に過ごせることは看護の基本として大事なことだと考えます。 「できるだけ」というのは、時には母子の安全上、産婦さんの望む姿勢ではないことが必要な場合もあるからです。 1980年代の自然なお産を求める…

医療介入とは 34 <分娩台と分娩室>

妊娠中の母親学級あるいは両親学級で、院内見学として分娩室の見学を組み込んでいる施設が多いでのはないかと思います。 初めての妊婦さんだと、やはり分娩室を見ると緊張されるようです。 「えー、手術室みたい」「怖いなぁ」「あの台で産むのですか?」な…

医療介入とは 33 <産婦さんにとって快適な姿勢>

病院のお産というと「機械(分娩監視装置)で身動きができない」「仰臥位のお産」「分娩台に足を固定される」「分娩台のお産は医療者の都合」「冷たい分娩室」など、これまでたくさんの批判がありました。 たしかにそうだと思う点もある反面、現実はすでに違…

医療安全対策について思うことあれこれ

私が最初に看護師として働き出した頃を含めた30年ほどを振り返ると、医療が急速に進歩した時代に重なっていたことをこれまでも何度か書いてきました。 医療の進歩とともに、医療安全対策という言葉が出て医療従事者の意識も大きく変った時代だったといえるで…

新生児蘇生法研修についておもうことあれこれ

胎盤・臍帯を通して生きていた胎児が、母胎外へ出た瞬間から独立して生きていくための呼吸や血液循環が始まります。 産道から頭が出た瞬間から「うぎゃっ」と泣いて自力の呼吸が始まる新生児もいます。 多くは、体全てが産道から出て、「胎児」から「新生児…

「早期母子接触」ってなんですか? 4 <危険性には慎重な対応を>

今年に入ってから、カンガルーケアあるいは早期母子接触についての注意喚起の話題がたびたび聞かれました。 少しずつインシデントレポートやヒヤリハット報告などが蓄積されてきたということでもあり、その結果が公開されることはよいと思います。 ただし報…

「早期母子接触」ってなんですか? 3 <蘇生術が必要なケアって何ですか?>

「『早期母子接触』実施の留意点」の中で、新生児蘇生法(NCPR)について書かれています。 http://www.jspnm.com/sbsv12_1.pdf (NCPR: Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitaion) 3.分娩施設は、「早期母子接触」実施の有無にかかわらず、新生児蘇生法(NCPR)…

「早期母子接触」ってなんですか? 2 <裸でなければだめですか?>

出生後早期から母子が直接肌と肌を触れあい互いに五感を通して交流を行うことは、人間性発露の面からみても、親子が育みあうという母子の当然の権利ともいえる。 <裸でなければだめなのか?> 正期産の新生児に対する早期母子接触で、よくわからない点がこ…