2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

産後ケアと出稼ぎ 2  <途上国からの海外出稼ぎ>

日本にもかつて農村の余剰人口の対応のために、積極的に出稼ぎとしてあるいは移民として海外に送り出す側であった時期がありました。 日本でも海外渡航が庶民の手の届く金額になり、海外との人の移動が格段に増えた1980年代に、日本は海外からの労働者を受け…

産後ケアと出稼ぎ 1

「産後ケアと出稼ぎ」 突拍子もない題名と感じられる方が多いことでしょう。 こちらの記事で岩手県の「母子健康センターのあり方」という資料を紹介しましたが、当時の女性をとりまく社会環境の変化についても書かれています。 岩手県の穀倉地帯であり、「誘…

産後ケアとは何か  21  <「産後ケア」が意味するもののあれこれ>

「産後ケア」という言葉自体が、まだ定義もされていないということは書きました。 周産期医療の中での、「産後ケア」はどのようなことを意味するのでしょうか。 あるいは保健センターなど行政の中での、「産後ケア」はどのようなことを意味するのでしょうか…

産後ケアとは何か 20 <こういう施設もあります>

島が多く急峻な山が背骨のように走っている日本の地形で、山間部や離島の分娩施設が少ない、あるいは全く無い地域があることはその地域の方々にとってもそして受け入れる周産期施設にも負担が大きいことでしょう。 妊娠後期になると妊婦さんがご家族と離れて…

産後ケアとは何か  19 <宿泊型ケア施設の需要と現状>

いわゆる産褥(さんじょく)入院のような、出産後1〜2ヶ月以内に母子共に入所できる施設の需要はどうなのだろうと気になって調べているのですが、そうした調査や研究はあるのでしょうか。 あるいは、実際に産褥入院や産後ケアシステムを始めた施設の利用状…

産後ケアとは何か 18 <「産褥入院」−宿泊型ケア施設の利用>

今まで2〜3人ですが、私の勤務先のクリニックを退院後に宿泊型ケア施設の産褥入院を利用する相談を受けたことがあります。 どの方も30代後半の初産婦さんでした。 退院後に自宅での手伝いがないことが理由の方と、退院時にちょうど夫の転勤に伴って引越しの…

産後ケアとは何か 17  <産褥(さんじょく)入院ー入院延長への補助>

産後ケアの中でしばしば使われる「産褥(さんじょく)入院」ですが、主に「一旦、産院を退院したあとに別の施設に入所して母体の休養を図る」といったニュアンスで使われているようです。 「産後ケア」もそうですが、この「産褥(さんじょく)入院」という言…

産後ケアとは何か  16 <産後ケアとレスパイト事業の経緯>

産後ケアについて調べていくと。「レスパイト」という言葉や考え方を見受けます。 たとえば今年3月から開催されていた少子化危機突破タスクフォースが出した「妊娠・出産検討サブチーム報告」に「『産後ケア』の強化」(p.3およびp.9)として「産後レスパイト…

助産師だけでお産を扱うということ 6 <「役割は終わった」>

助産婦だけで分娩を取り扱う助産部門があった母子健康センターは、農山漁村やへき地地域だけでなく、実は都内にもかつてありました。 1970年代終わり、看護学生の時に都内23区内にある母子健康センターを見学したことがあります。 分娩も扱っていました。 19…

助産師だけでお産を扱うということ 5 <母子健康センター助産部門>

産後ケアの話題から少し離れて、助産婦だけで分娩を担っていた母子健康センターの助産部門について考えてみたいと思います。 「日本で助産婦が出産の責任を負っていた頃」で紹介した伊関友伸氏のブログで、丹波地方の母子健康センターについて書かれた部分を…

産後ケアとは何か 15 <昭和40年頃の母子保健の課題>

長野県と岩手県の母子保健についていくつかの資料を紹介してきました。 今回は、1965(昭和40年)頃の日本の母子保健の課題について書かれた資料を紹介しながら、当時の産後ケアとしての産後の休養がどのように取り上げられていたかをみていこうと思います。…

産後ケアとは何か 14 <昭和40年代、無介助分娩が多かった地域>

前回に引き続き、1975(昭和50)年に岩手県の状況について書かれた「母子保健センターのあり方」を参考に、当時の医療格差の大きな問題点とされた無介助分娩についてみてみようと思います。 無介助分娩というのは、医師あるいは助産師の介助がない出産です。…

産後ケアとは何か 13  <岩手県の1970年代の母子健康センターの記録より>

今回は1975(昭和50)年に書かれた岩手県のへきち地域が抱える問題点についての資料を紹介したいと思います。 「母子健康センターのあり方」 (第二報)実態調査と指導効果 第一篇 母性保護の立場から 岩手県、岩手医大による調査報告です。 昭和30年代から5…

産後ケアとは何か 12  <「長野県における母子健康センターの歩み」より>

こちらの記事で参考にさせていただいた「長野県における近代産婆の確立過程の研究」を書かれた湯本敦子氏の、母子健康センターについての論文がネット上で公開されていました。 「長野県における母子健康センターの歩み:塩田母子健康センターの事例を中心に…

産後ケアとは何か 11 <母子健康センターの変遷と資料>

出産の医療化の流れの中で、1950年代に有床助産所とともに母子健康センターが作られたことで、産後の休養という点では大きな転換期になったのではないかと思います。 こちらの記事では、母子健康センターの主に助産部門、分娩を取り扱う部門について書きまし…

産後ケアとは何か 10  <産屋(うぶや)と小屋場ー昭和30年代から40年代の変化>

前回までに紹介した資料を読むと、1960(昭和35)年代頃までの日本国内の生活習慣というのはかなり地域差があったことが伺えます。 特に出産に関してさまざまな古い慣習を見直すためには、「出産の医療化」が大きな転換を果たすことになったのではないかと思…

境界線のあれこれ 6 <自然と人工的な自然ー東南アジアの熱帯雨林>

1980年代半ばに東南アジアへ赴任する前までは、東南アジアの国々というのは熱帯雨林がうっそうと茂った土地だと思っていました。 ところが、車で走っても、あるいは国内線の飛行機から見る風景も、木がほとんどない山々が広がっていることに驚きました。 「…

境界線のあれこれ 5 <自然と人工的な自然ー都市計画道路>

先月、玉川上水について書いたあと、小平市を通る都市計画道路建設のために玉川上水の一部が道路になることの是非を問う住民投票についてのニュースを聞きました。 これまでも、玉川上水の他の地域でも同様の反対運動があったと記憶しています。 そこに住み…

産後ケアとは何か 9 <日本のここ一世紀の産後の過ごし方の変化>

「昔」というのはいつのことか。 私にとって20〜30年前はまだ「少し前の過去」なのですが、現在20〜30代の方にとっては「昔話」にもなることでしょう。 一世紀ぐらいの産後の過ごし方の変化を、もう一度まとめてみようと思います。 あまり参考になる文献が少…

産後ケアとは何か 8 <「昔はよかった」のか、昔とはいつか>

都内に新しくできた「とよくら産後ケアハウス」の<産後ケアハウスって何?>には以下のように書かれています。 昔から産後は十分な休養をとることとされていました。 「産後の肥立ち」「床上げ」といった言葉は妊娠・出産を機に大きく変化したからだを、ゆ…

産後ケアとは何か 7 <里帰り分娩の受け入れ中止と実母の手伝いの変化>

2004年以降、分娩施設が次々に分娩取扱いを止めました。 あるいは分娩は受け入れるけれど、里帰り分娩の受け入れは中止する施設が出始めました。 こちらの記事で紹介させていただいた医師ブログの新しいブログサイト、「勤務医 開業つれづれ日記・2」では20…

産後ケアとは何か 6 <新生児のケアと新生児黄疸>

産後ケアを保健医療的に見た場合、褥婦(母親)のケアと新生児のケアに分けれられます。 社会的視点まで広げた産後ケアにすれば、家族へのケアも含まれるのかもしれませんが。 今回は、新生児のケアとは何か、考えてみたいと思います。 「新版 助産師業務要…

産後ケアとは何か 5 <韓国の産後ケア施設>

前回の記事で紹介した、「子育て支援に向けた産後ケア施設の開設要件の研究」では、韓国の4ヶ所の産後ケア施設を視察した報告が書かれています。 <保健医療的ケアを中心にしたケア施設> まず韓国の産後ケア施設の法的根拠については、以下のように書かれ…

産後ケアとは何か 4 <産後ケア施設に関する研究の紹介>

こちらの記事で紹介した「助産雑誌」2010年4月号の特集の1記事、「産褥入院の現状と入院期短縮化の条件」の共著者である坂梨薫氏(横浜市立大学、母性看護)の研究結果報告書がネット上で公開されていました。 「子育て支援に向けた産後ケア施設の開設要件の…

産後ケアとは何か 3  <産後ケア施設に関する法律>

産後ケアとは、何をさすのか。 いつまで、誰によるケアを指すのでしょうか? 前回の記事で紹介した、横浜市の「横浜市産後ケア推進要綱」の定義を再掲します。 産後ケア 産後3日以降に、医療機関において、通常実施が予定されるじょく婦および新生児に対する…

産後ケアとは何か 2  <早期退院推進と産後ケア>

残された産科施設で分娩を受け入れるためには早期に退院をしてもらう方法を取り入れるところが増え、それにともなって「産褥入院」という言葉が聞かれ始めたのは2000年代終わりの頃だったと記憶しています。 「助産雑誌」2010年4月号(医学書院)でも、「特…

産後ケアとは何か 1  <産褥(さんじょく)入院>

前回の記事で取りあげた産後ケアセンターについて、引き続きしばらく考えてみようと思います。 <産褥入院・・・宿泊型の産後ケア> 「産後ケア」という言葉自体、まだ明確な定義を持ったものではないと私は認識しているのですが、その中で出産後に長期に宿…

産後ケアセンターと「骨太の方針」

6月1日のニュースに次のようなものがありました。 政府の骨太の方針素案判明 政府が今月中に決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」の素案が1日、分かった。地方財政は「リーマン危機以前の状況に向けて適正化を図る」とし、危機対応で導入した地方交…

医療介入とは  92  <CTGについての看護技術化の遅れ>

こちらとこちらの記事で紹介した「鑑定からみた産科医療訴訟」(我妻 尭氏著、日本評論社、2002年)の中には、訴訟例の実際の胎児心拍陣痛図(CTG,cardiotocogram)がいくつも掲載されているので参考になります。 なぜ私がこの本を購入したのかというと、2002…

医療介入とは  91  <CTGに対する看護技術化の変化>

「医療介入とは 10 <CTGの普及と助産婦の『自然なお産』の時間的なずれ」で、CTGがいつ頃からどのくらい普及したかについて書きました。 1980年代半ばから急速に普及しましたが、1993(平成3)年の時点では病院では92.6%に対し診療所ではまだ63.7%でした。…