2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

観察する 8 <荒乳というとらえ方と胎便の変化>

科学的に検証された初乳の知識を容易に手に入れることができる人にとっては、初乳を荒乳として捨てていたのはなんと知識がないことによる残念な方法だったと感じるかもしれません。 「だから途上国の人は」という視線が、1970年代に母乳育児推進の原動力にな…

母乳のあれこれ 37 <初乳とは何か>

現在では、「初乳」についての栄養的な重要性を疑う周産期スタッフはいないと思います。 ただ、なぜ「」つきで「初乳」と書いたかというと、初乳の定義はいまもまだ文献によってまちまちなのです。 特にいつからいつまでを初乳というのか、あたり。 今回はち…

実験のようなもの 3 <「荒乳を飲ませない」「初乳は大事」>

少し間があいてしまいましたが、母子同室という言葉はいつごろから広がったのだろうと考えていた時に、きいろい月さんがご自身の体験を書いてくださいました。ありがとうございます。 きいろい月さんのコメントの中には、これから記事へと続けたいような視点…

「沐浴のあれこれ」まとめ

私の人生の初めての写真は、日当りのよい縁側で沐浴をしてもらっている写真です。 たぶん、大きさからいって生後2〜3ヶ月ぐらいでしょうか。 生まれた直後の写真もないし、乳児期の写真はほんとうに数えるほどしかありません。 1960年代初頭生まれというの…

母子同室という言葉を問い直す 4 <母子同室とともにある母乳代替品のマーケティングに関する国際基準>

母子同室という言葉はいつ頃から、どのように広がったのかと考えていたら、こんさん、きいろい月さん、suzanさんからコメントをいただきました。ありがとうございます。 こんさんからは、驚くような状況を教えていただきました。 また、関東から引っ越して分…

「看護基礎教育の大学化」のまとめ

看護大学は必要だと思っていました。 臨床の看護職を育てるためというよりは、管理職や研究者を育てるためです。 看護職になって30数年。 医療や医学はどんどん進歩しているのに、看護はなかなか標準化が図られない。 他の施設はこんな時にどう対応している…

簡単なことを難しくしているのではないか 9 <看護師を育てるのに必要な年数>

医療介護系のサイトCBnews、2016年5月18日に「看護師の教育年限、4年に延長をー日看協が要望」という記事がありました。 日本看護協会(日看協)は、厚生労働省に対して、看護師養成の教育年限を現行の3年から4年に延長することなど盛り込んだ要望書を提出し…

虚をつかれる

昨日は、競泳ジャパンオープン2016(50m)の最終日でした。 5月20日(金)から開催されていたのですが、今回は残念ながら観戦できたのは最終日だけでした。 日本水泳連盟のジャパンオープンの記事を読むと初日や2日目の熱戦が書かれていて、残念! 特に、松…

数字のあれこれ 7 <カエルは動物だが、動物はカエルではない>

昨日の記事で「AはBであるが、BはAではない」と書きながら、思い出したのが今日のタイトルです。 なぜそれが、「数字のあれこれ」なのか。 私が数学が苦手になったのは、高校1年で数学の担任になった先生がきっかけでした。 話し方がはっきりしなくて、授業…

母子同室という言葉を問い直す 3 <いつ頃から、どのように広がったのか>

周産期看護の中では、未だに「母子同室」に関する看護基準や手順が書かれたものがありません。 あるいは母子同室に関してのリスクマネージメントについても、全国の分娩施設でヒヤリしたことやインシデントが集められて、各施設にその注意点がフィードバック…

母子同室という言葉を問い直す 2 <預けたら負け>

時々、看護職の出産があります。 看護師、保健師、そして助産師です。 まあ、分母が少ない話なので、本当のところはどうなのかは断定もできない話ですが、助産師が出産した場合、ほぼ100%出産直後からの母子同室を選択するのがここ数年のトレンドのような印…

母子同室という言葉を問い直す 1 <似て非なる言葉>

時々、ふとめまいに近い気分になることがあります。 それは現在の周産期看護で管理的な立場にいる50代ぐらいの世代、つまり私と同世代のほとんどは、私と同じように「新生児室に新生児を集めて世話をする」ことが当たり前として教育を受けたことです。 よほ…

実験のようなもの 2 <現代の「母子同室」>

「母子同室」という言葉は、私が看護学生で母性看護を学んだ1970年代終わりの頃にはまだありませんでした。 産まれたばかりの赤ちゃんというのは新生児室にいて、お母さんたちが時間ごとに授乳室に集まって授乳をする。 そういう方法を学び、何の疑問も感じ…

実験のようなもの 1 <妊娠・出産と壮大な人体実験>

なんだかおどろおどろしいタイトルですが、毎日新聞の連載記事「母と乳」第3部を読んで、ずっと以前から感じてきた言葉が思い浮かびました。 「実験」です。 たとえば 水中出産についてこう書きました。 水中出産は、人類が経験したこともない産み方を実験し…

現場の狂気

こちらの記事に書いたように、私は思春期以降、考え方も生き方も違う存在として父とはとても距離を置いてきました。 最初に父への反発を感じたのが、「あの戦争(第二次大戦)に、なぜ反対しなかったのか」という点でした。 反対するどころか軍人になること…

母乳育児という言葉を問い直す 22 <母乳育児というイデオロギーにリスクマネージメントという言葉は通用しないのかもしれない>

少し間が空きましたが、以前紹介した「母と乳 第3部 生後のリスク/上 「3日分のお弁当」招く誤解」と「同 生後のリスク/中 医療者の適切な介入を」の最後の記事です。 母と乳 第3部 生後のリスク/下 「お母さんは寝ないもの」 (2016年4月16日) ●身動きでき…

水のあれこれ 42 <棚田、あの水はどこから来たのか>

5月の連休中に父の面会に行きました。 病院へ続く道には水田があって、ちょうど田植えをしていました。 普段はその道を通ってもめったに人に出会わないのですが、やはり田植えは家族総出なのですね。 と言っても、数人ぐらいでしたが。 月に3〜4回ぐらい、そ…

行間を読む 57 <新生児と血糖チェック>

毎日新聞の記事 「母と乳 第3部 生後のリスク/医療者の適切な介入を」の中で、血糖値について書かれた部分があります。 異変は生後3日目に起きた。唇を紫に変色させ激しく泣く次男に看護師が気づいた。診察すると、生後42時間で1デシリットルあたり40ミリグ…

新生児のあれこれ 51  <出生直後から飲ませることはむずかしい>

出生直後の新生児の低血糖が注目されて、哺乳瓶で糖水やミルクを補足することも大事であるという認識が再び見直される風潮が起こるのは、それはそれで新生児には朗報かもしれません。 ただ、反動のようにまた「規則的に飲ませなければいけない」「3時間以上…

母乳育児という言葉を問い直す 21 <「母乳育児」と適切な「医療介入」・・・同じことを繰り返しているのでは>

今回は、「母乳育児という言葉を問い直す 19」で紹介した毎日新聞の記事の、「母と乳 第3部 生後のリスク/中 医療者の適切な介助を」を続けて考えてみようと思います。 全文を引用します。 第3部 生後のリスク/中 医療者の適切な介入を (2016年4月15日) <…

母乳育児という言葉を問い直す 20 <「母乳育児」と「医学的根拠」の矛盾>

こちらの記事の最後は、以下のように締めくくられています。 母乳育児を推進する日本ラクテーション・コンサルタント協会の奥起久子・教育研修事業部長(小児科医)も「日本独自の表現」とみる。母乳育児を軌道に乗せるには、生後すぐに頻繁に授乳し母乳の分…

事実とは何か 8 <鵺(ぬえ)のような>

「母と乳 第3部 生後のリスク/上 『3日分のお弁当』招く誤解」 を読んで、ふと思いついた言葉が「鵺のような」でした。 私がこの言葉を初めて知ったのは、1990年代に読んだ辺見庸氏の本でした。 なんでこの言葉が浮かんだのか、検索していて思いつきました。…

母乳育児という言葉を問い直す 19 <誰がその言葉を求めているのだろうか>

こんさんから、こんさんとこんさんの赤ちゃんについて新聞記事で紹介されたことを教えていただきました。 こんさん、ありがとうございます。 昨年7月に初めてこんさんからコメントをいただき、こちらの記事やこちらの記事を書いたり、コメント欄でも往復書簡…

もやす

今日のタイトルもなんだか呪文のようですね。 Wikipediaのもやしに書かれていた説明に、「そうだったのか!」と不意をつかれたのでした。 もやし(もやし、萌やし)とは、主に穀類、豆類の種子を人為的に発芽させた新芽。 そうか、「萌やし」なのかと。 カッ…

もやし

好きな野菜のひとつにもやしがあります。 野菜炒めに入れても美味しいし、さっと茹でて酢醤油であえてもおいしいですね。 なんといっても一袋30円前後という価格もすごいと思います。 もやし料理の中で一番好きなのが、ただもやしだけを炒めて塩・こしょうで…

水のあれこれ 41 <独創性のある泳ぎが、泳ぎの究極の目標に近づく>

録画してある番組が溜まる一方で、なかなか時間がないのですが、楽しみにしていた木村敬一選手の録画をようやく見ました。 以前、偶然観たパラリンピックの競泳大会の泳ぎをみて、きれいな泳ぎだと印象に残ったのですが、あの野口智博氏がコーチをしていらっ…

数字のあれこれ 6 <濃度と流量>

日常生活や仕事の中で、濃度をいつも意識している人はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。 仕事上、薬剤や消毒液を取り扱っていますが、ちょっと間違えれば重大事故に結びつくので、「濃度」と聞くだけで体中が緊張します。 とりわけ静脈注射や点滴投与が…