助産師の世界

助産とは 7 <産師法と現代の助産医への動き>

これまでの記事で、「女性学年報」の木村尚子氏の論文をたびたび紹介しました。 その木村尚子氏が本を出されたことを琴子ちゃんのお母さんがブログで紹介してくださったので、早速購入して今読んでいるところです。 「出産と生殖をめぐる攻防 産婆・助産婦団…

助産とは 6 <助産は医療>

「私たち助産師は医療行為ができないので、自然な経過を大事にするお産をします」 よく耳にします。 助産師は本当に医療行為をできない人でしょうか? 前回の記事で、保健師・看護師と助産師の相違点について2008年版の助産師業務要覧では以下のように書かれ…

助産とは 5 <助産診断と開業「権」>

厚労省から出されている就業医療関係者の報告によれば、2010(平成22)年の助産師の就業者数は29,672人となっています。 現在、どれくらいの分娩取扱い施設があるかというと、「周産期医療の広場」では2643件のようです。 2012(平成23)年の出生数は約103万…

助産とは 4 <「産婦と胎児の健康診査」?>

昨年出された「新版 助産師業務要覧 第2版」(日本看護協会、2012年)には、聞きなれない言葉が使われています。 「産婦と胎児の健康診査」です。 「実践編」の「2.分娩期のケア」で使われていて、以下のように書かれています。 分娩時の健康診査は、産婦…

助産とは 3 <「助産」とは何か>

保助看法第3条に「助産師の定義」が書かれています。 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう そして同法30条には以下の項目があります。 第30条 助…

助産とは 2 <助産診断と助産師の「診察」>

看護診断ということばが広がるにつれて、助産師の中でも「助産診断」が使われるようになってきたと記憶しています。 私が助産婦学生だった1980年代後半ではまだ助産診断という言葉はなくて、助産計画という言葉で表現されていた内容のことではないかと思いま…

助産とは 1 <「診断」とは何かー看護診断>

分娩監視装置(胎児心拍陣痛モニター、CTG)と超音波画像診断機器はどちらも超音波診断検査であり、周産期医療の中では欠かせないものになりました。 どちらも「診断」機器です。 これらの超音波診断機器を助産師が使用する際の法的根拠について考えていく…

医療介入とは 81 <助産師と超音波画像診断機器、本当に必要?>

2012年に日本看護協会から出版された「新版 助産師業務要覧 第2版」では、超音波画像診断機器は「胎児位置、大きさなどの診断」のために、助産師独自の判断で実施できる「助産業務に付随する行為」(保助看法第37条)という解釈が以下のように書かれているこ…

医療介入とは 80 <助産師と超音波画像診断機器、現在の法的解釈>

前回の記事では、2008年の「助産師業務要覧」で助産師が超音波画像診断機器を自らの判断で使用することに対しては、「異常の早期発見」のための手段でありむしろ超音波画像診断機器を使用することが「注意義務」あるいは「助産業務に当然付随する行為」とい…

医療介入とは 79 <「助産師業務要覧」と超音波診断機器>

助産師の業務について根拠となる法令と解釈について書かれた「助産師業務要覧」が、日本看護協会から出版されています。 2008年の「新版 助産師業務要覧 増補版」の序文を読むと、1970年に初めて出版されたようです。 その後、1990年には法令だけでなく助産…

医療介入とは 78 <院内助産システムと超音波画像診断機器>

なぜ、いつの間にか助産師が超音波画像診断機器を取り扱うようになったのでしょうか? 産科医が少なくなり分娩施設も減少して産科医の過重労働が問題になる中、助産師が「忙しい医師に代わって超音波画像検査で、胎児推定体重や胎位の確認をすれば、産科医も…

医療介入とは 77  <実際に助産師はどのように超音波画像診断機器を使用しているのか>

実際に助産師が超音波画像診断機器を操作している施設がどれくらいあるのかはよくわかりません。 そのような施設では、助産師は具体的に超音波画像診断機器で何をしているのでしょうか? 「写真でわかる助産技術」(平澤美恵子・村上睦子氏監修、インターメ…

医療介入とは 76 <1990年ごろの助産師が使った超音波診断装置とは>

前回の記事で紹介した「助産師・看護師のための超音波画像診断」という本の初版の序文の中で、よくわからない部分がありました。 「第1版 序文」には以下のようなことが書かれています。 全国助産婦教育協議会が3年前に行った調査によれば、約20%にあたる…

医療介入とは 75 <いつ頃から助産師が超音波画像診断機器を扱うようになったのか>

私自身は、今までの勤務先で超音波画像診断機器を操作した経験はありません。 羊水検査などで、医師が処置をする際に助手としてエコーのプローブ(超音波をあてる部分)を固定する介助をした程度です。 数年前に「助産院は安全?」に出会ってから助産所のH…

医療介入とは 74  <助産師と医療機器に関する法律>

現代の医療の現場では数多くの医療機器があります。 私たち看護職の身分や業務を定めた保健師助産師看護師法が、1948(昭和23)年に定められました。 その法律の中に「医療行為の禁止」という条項があります。 第37条 医療行為の禁止 保健師、助産師、看護師…

医療介入とは 73 <助産師と超音波検査>

ここ数年で、院内助産の助産外来や助産所の写真には決まって助産師が超音波画像機器を自ら操作してみている写真が使われるようになりました。 助産師は、この超音波画像で何をしているのでしょうか? 検査、つまり異常の発見として行うために、助産師には必…

助産師と自然療法そして「お手当て」 46 <母子整体の『仮説』は何か>

私からみるとトコちゃんベルトは「腰痛や恥骨痛のある妊婦さんにとって締めやすそうな骨盤ベルト」のひとつにすぎないものですが、パンフレットやHPを読むとベルトの装着・操体法と合わせた「骨盤ケア」でさまざまな効果があることが書かれています。 母子…

助産師と自然療法そして「お手当て」 45  <「妊娠9週までに丸ナス型の子宮作りを!」>

「妊娠9週までに丸ナス型の子宮作り」って何のことやらと思う方がほとんどだと思います。 助産師なら「助産雑誌」などに掲載されている広告で、見たことがある人は多いでしょう。 「こわいことが書いてあるから」と捨てられたパンフレット」にも説明が載って…

助産師と自然療法そして「お手当て」 44 <赤ちゃんの頭のゆがみの原因>

さて例の怖いことが書いてあるパンフレットを少しずつ見ていこうと思います。 「なぜ赤ちゃんの頭がゆがんでいたらダメなの?」という漫画があって、次のようなことが書かれています。 最近の子供たちの中にはまっすぐに走れない子や・・・でんぐりがえりが…

助産師と自然療法そして「お手当て」 43 <赤ちゃんの「頭のゆがみ」とは?>

先日、退院間際のお母さんが「こわいことが書いてあるから」とゴミ箱に捨てていたので、そのパンフレットをもらって帰りました。 トコちゃんベルトを購入されたときについてきたパンフレットだそうです。 「トコちゃんのベビーケアー おかあさん!赤ちゃんの…

助産師と自然療法そして「お手当て」 42 <母子整体とは?−新生児・乳児編>

母子フィジカルサポート研究会のHPの最初には「キーワードは『姿勢と発達』」とあり、中の「母子フィジカル研究会とは」には、以下のように書かれています。 当会の提唱する「母子フィジカルサポート」とは、「母と子がその人らしく妊娠・分娩・育児に適応で…

助産師と自然療法そして「お手当て」 41 <母子整体とは?ー妊産褥婦編>

助産師の中の整体の火付け役ともいえる母子フィジカルサポート研究会(母子整体研究会)はどのような考えに基づき、どのような対応を行っているのでしょうか。 しばらくこの母子フィジカルサポート研究会(母子整体研究会)についてみていこうと思います。 …

助産師と自然療法そして「お手当て」 40 <新生児や赤ちゃんへの整体>

出生直後の新生児を逆さづりにする助産師の話を直接聞いてショックを受けたのは数年前のことでした。 知人の孫が自宅分娩で生まれた時のこと、分娩介助した助産師が生まれた直後の新生児の足を持って逆さづりにしたというのです。 「胎内で歪んだ体を、左右…

助産師と自然療法そして「お手当て」 39 <出産・育児周辺の整体>

「整体」と称している療法はまさに百花繚乱という感じで、考え方も「施術」もさまざまだということが調べているうちにわかりました。 そして、妊産婦さん、あるいは産後のお母さんや赤ちゃんに対する整体もけっこうあるようです。 <野口整体> 野口整体とい…

助産師と自然療法そして「お手当て」 38 <助産師が行っている整体的なもの>

おそらく助産師の中で「整体」という表現を使って妊産婦さんあるいは新生児・乳幼児になんらかの行為を行っているひとたちのほとんどが、前回の記事に書いたように母子整体研究会に関係しているのではないかと思っています。 その内容については、後に少しず…

助産師と自然療法そして「お手当て」 37 <恥骨痛と母子整体>

いつ頃からでしょうか。 助産師の中に「整体」という言葉が聞かれ始めたのは。 よくわかりませんが、開業助産師さんたちの間では古いのかもしれません。 でも私たちのように病院・診療所で勤務する助産師にとって、整体というのは聞きなれないものでした。 …

助産師と自然療法そして「お手当て」 36 <整体の歴史と出産の医療化 3>

前回の記事で参照した「我が国の分娩場所の推移」(pdf注意)を見ると、1950(昭和25)年代初頭にはほとんどが家庭分娩であり、1955(昭和30)年の時点でも助産所を含む医療機関での出産は20%以下に過ぎませんでした。 その後1960(昭和35)年頃には半数の出…

助産師と自然療法そして「お手当て」 35 <整体の歴史と出産の医療化 2>

整体が妊娠・出産・育児の中で代替療法として残っている理由のひとつとして、「妊娠・出産は病気ではない」という認識が社会の中に根強く残っていることもあるのではないかと思います。 前回の記事で、野口晴哉氏が15歳で整体の療術団体を始めた1926(昭和元…

助産師と自然療法そして「お手当て」 34 <整体の歴史と出産の医療化 1>

野口晴哉(はるちか)氏の講演をもとにした「誕生前後の生活」(全生社、昭和53年)を参考に、整体の中での妊娠・出産・育児の考え方について一部を紹介してきました。 その本が出版された1978(昭和53)年頃までは、「誕生前後の生活」が書かれた時代1とそ…

助産師と自然療法そして「お手当て」 33 <新生児・乳児への整体>

整体とはどのような手技なのか検索していくと、整体院のHPには「うちではボキボキしたり痛いことはしません」「マッサージとも違います」といったことがよく書かれています。 では整体とはどのような手技なのでしょうか? 特に新生児や乳児に対して、何を…