医療

行間を読む 42 <東京都監察医務院の公開講座の資料より>

こちらの記事で紹介したNHKのニュースにあった「事故などで突然亡くなった人たちの死因を調べている東京監察医務院では、東京23区で平成24年までの10年間に扱った、5歳未満の子ども119人の事故死の傾向や経緯を今回、初めて分析した」という点につい…

行間を読む 41 <「子どもの死を無駄にしない最低限の礼儀」>

2008(平成20)年の内閣府の白書の「青少年の成育環境」に乳児死亡に関する統計があります。 (直接リンクできないので、「乳児死亡、原因」で検索されると見つかると思います) 昭和30年代には年間7万人近い1歳未満の乳児が死亡していたようですが、現在は…

行間を読む 40 <子どもの死に関する情報収集システムの確立に向けて>

2月12日に「乳幼児の事故死、授乳後の窒息が最多」というNHKのニュースがありました。 全文は以下の通りです。 乳幼児の不慮の事故で亡くなるケースを減らそうと、東京都監察医務院が平成24年までの10年間に、突然亡くなった5歳未満の子どもの死因や経緯を…

記憶についてのあれこれ 48 <「がん治療を支える手作り帽子」>

先日、NHKのお昼の番組「ひるまえほっと」で「がん治療を支える手作り帽子」を作っていらっしゃる女性を紹介していました。 ここ10年ほどは産科診療所勤務になったので抗がん剤治療を受けている方の看護には携わらなくなりましたが、1980年代初めに看護職に…

夜勤の労働環境についてのあれこれ 3 <夜中の通勤の怖さ>

子どもだった頃は、夜というのは魑魅魍魎が出てとても怖い時間でした。 年とともに、世の中に怖いものが減って来たのは、おばさんになった証拠だと思っています。 それでも夜中の通勤はしたくないし、未だに怖いと感じるものの一つです。 日勤・準夜・深夜の…

夜勤の労働環境についてのあれこれ 2 <電話が怖い>

1960年代、私がまだ幼児だった頃は、電話といえば電電公社(NTT)の固定式黒電話しかありませんでした。しかも電話は「近所に借りにいくもの」であり、自宅の電話を持つようになったのは1970年代に入ってからでした。 幼稚園の頃は、あれはなんという電話機…

夜勤の労働環境についてのあれこれ 1 <夜起きているのがつらい>

「夜勤をしたくない」と思う理由にはいろいろあるのではないかと思います。 「夜起きているのがつらい」これは自然なことでしょう。 1970年代終わり頃、私が看護学生だった時には夜勤実習がありました。 「夜中に働く」ことがどういう状況なのか想像もつか…

看護職の夜勤について思うこと

私はどちらかというと夜勤が好きです。 昨日書いたように3交代勤務は体に合わないのですが、2交代なら日勤をするよりは体が楽です。 翌日が日勤だと思うと、反対に「朝きちんと起きなければ」と緊張して夜中すぎまで眠れなくなるのです。 子どもの頃から目…

看護職の夜勤、二交代か三交代か

「『看護師2交代制』3割に 夜勤含む労働、16時間声も 労組が病棟調査」(朝日新聞、2014年11月7日)という記事がありました。 看護師らの長時間勤務につながる「2交代制」を採用している病棟が3割に達したと、日本医療労働組合(医労連)が6日発表し…

武勇伝(根拠のない自信)

朝日デジタルの10月31日の記事に、「出産体験などを語り、命の大切さへの思いを分かち合う『バースカフェ』」の話題がありました。 「母と子が『命をかけてチャレンジした』出産について体験を話す」らしく、11月は「医師の手を借りずに5人の子どもを自宅出…

なにがなんだかわからない

エボラ出血熱の感染国で活動してきた医療従事者への対応については、「犯罪者のように扱われたのか」や「潜伏期から発症のグレーゾン」で書いたように、潜伏期間と考えられる日数を過ぎてからの帰国が感染症対策としては合理的ではないかという疑問を書きま…

境界線のあれこれ 54 <潜伏期から発症のグレーゾーン>

こちらの記事で書いた西アフリカでのエボラ出血熱の医療救援から帰国した看護師への対応について、その後もなんだか本質ではない話が多くてもやもやしています。 「国境なき医師団など感染地域で活動したスタッフは、現地で21日間留まり、発症のおそれがな…

行間を読む 29 <犯罪者のように扱われたのか>

西アフリカの医療救援から帰国したアメリカの看護師が、帰国後に隔離されたことを批判するニュースを読みました。 AFPニュースの「西アフリカから帰国の米看護師隔離で「犯罪者扱い」と当局批判」(2014年10月26日)という記事です。 この看護師は「国境なき…

記憶についてのあれこれ 35 <予防接種とCDC>

看護学生の頃、なかなか覚えられない疾患が小児感染症でした。 特に予防接種が必要な疾患になると、潜伏期や症状そして感染力がなくなる期間など、何度教科書を読んでもすぐに忘れてしまうので、実は小児科は苦手でした。 大きな声では言えないのですが、今…

行間を読む 25 <「もともと消防署には『赤い車』しかなかった」>

タイトルは、先日たまたまm3comという医療関係のサイトのバックナンバーを読んでいた時に見つけた一文です。 「医療維新」の2009年3月24日に、都立墨東病院救命救急センター部長濱邉祐一氏のインタビュー記事、「『スーパー周産期』でモラルハザード誘発の…

医療と解剖

医療ドラマはなんだか見ているのが気恥ずかしいような気分になるので、今までほとんど見た事がないのですが、「ゼロの真実〜監察医・松本真央〜」は録画してみています。 きっと実際の刑事さんたちも、「相棒」を観るのは同じような気恥ずかしい気持ちかもし…

行間を読む 16 <「もう少し親身になってほしかった」>

先日のこちらの記事で、「最初に相談したときにやはり医師ももう少し親身に対応して欲しかった」と言われたことを書きました。 「最初」というのは産後1ヶ月の頃に、便失禁があることを相談した時のことです。 私はその状況に実際に立ち会っていないのですが…

境界線のあれこれ 46  <精神の正常と異常>

月経周期による精神のアップダウンが激しかった時期でも、自分は「精神異常ではない」と思っていました。 今、精神的に安定した状況で毎日を過ごせるようになって、あの時期は異常ではないかもしれないけれど、正常でもなかったのではないかと感じています。…

産科診療所から 15  <診療所で働く人たち・・・清掃や洗濯など>

産科診療所で働くスタッフで、この方たちがいなければなりたたないと思う仕事が清掃や洗濯など院内の環境を守ってくださっている方たちです。 クリニックの近くに住んでいる方たちが、スタッフ募集を見て働いてくださるようになりました。 クリニックで出産…

行間を読む 13 <病院で食べる食事>

最近は、カフェテリアがあって簡単な軽食まで食べられる病院ができる時代になりました。 私が看護婦として働き始めた1980年代には、考えもしなかったような変化です。 病院で食べる食事と言うのは、入院食だけでなく職員用の食事も含めて、なんとなく薄暗い…

看護師基礎教育の大学化 25 <大学化の矛盾・・・助産師>

産科診療所に勤務していると、総合病院時代のように20代の若い助産師に接する機会が少なくなってしまいました。 先日、久しぶりに20代の助産師さんと話をする機会がありました。 大学化の流れの中にあって、ここ数年で新設された助産師専門学校を卒業された…

看護基礎教育の大学化 24 <大学化の矛盾・・・保健師と助産師の教育期間>

前回の記事で書いたように、看護大学で看護師資格にくわえて保健師課程も必須としたことで、保健師の資格を持つ看護職が急増しました。 それに対して、新たな助産師資格取得者数は微増でとどまっています。 たとえば平成26年の国家試験合格発表を見ると、保…

看護基礎教育の大学化 23 <大学化の矛盾・・・保健師教育>

少し行きつ戻りつしますが、また看護基礎教育の大学化についての続きです。 1990年代から本格化した看護大学の広がりと、その4年間の中で看護師・保健師そして助産師の資格取得もできる統合教育というものが始められたことで、実質的に教育時間を減らされた…

人を育てる ー プリセプターシップ

5月に入り、新人を迎えた組織も少しひと段落した頃でしょうか。 「経験は積んでいくもの」で書いたスーパーのレジ係の方たちのように、社会を構成している仕事それぞれに熟練していくまで人を育てるスキルがあり、それは個人個人の経験として言葉に表現しき…

看護基礎教育の大学化 22  <看護職を育てるには4年は必要>

長々と看護基礎教育の大学化について書いてきました。 少しまとめてみると、私個人は看護職を育てるには今までの専門学校の3年間では少なくて4年間ぐらいは必要だと思っています。 臨床で必要な基礎知識の理解に3年、そして臨床での研修に1年、計4年です…

看護基礎教育の大学化 21 <一般教養として学びたいもの>

もし私がもう一度看護学生として学ぶ機会があれば、是非、医療経済と医学史・看護史、そして統計学・疫学を一般教養として学びたいと思います。 医学史・看護史は私の学生時代にもありましたが、こちらやこちらに書いたように、間近の半世紀ほどの歴史、つま…

看護基礎教育の大学化 20 <各大学の特殊性や独自性の前に>

私自身は産科診療所で働いているので、おそらくこのまま産科で働き続けて終わることになると思います。 ところが日本の病院というのは、長い間、看護職にオールマイティを求めてきました。 突然、違う病棟に配属されてもすぐに働くことができるかのように。 …

看護基礎教育の大学化 19 <「看護診断」を受け入れてしまった看護学>

今から十数年前のことですが、厚労省の臨床指導者研修を受けたことがあります。病棟の中堅層を集めて、学生への指導者を育てるために2ヶ月間研修をうけるものです。 臨床実践の場を離れて、学生を教えるための系統的な知識を学ぶ機会は、助産師学校以来の集…

看護基礎教育の大学化 18 <なぜ標準的な手順が作られないのか>

前回書いた看護手順がなぜ未だに統一したものができないのでしょうか? 実際に使用するにはそれぞれの施設の状況に合ったものになるように多少変更をする必要がありますが、その根幹となる日本全国の施設が参考にできるような標準化した手順があり、定期的に…

看護基礎教育の大学化 17 <看護業務基準と看護手順>

私たち看護職の業務の核ともなるものがあります。 それが「看護業務基準(2006年度改訂版)」です。 私が学生の時からこの「看護業務基準」という言葉があり、上記リンク先にあるように「看護職の責務を記述したもの」として各施設で作られていました。 ただ、…