周産期関係

帝王切開について考える 29 <助産師が帝王切開で出産すること>

1990年代に東南アジアを行き来していた頃、助産学生だった現地の友人と出会いました。 彼女は、その国の内戦が続く地域での国内難民として物心ついた頃から暮らしていました。 しかも彼女たちは「反政府ゲリラを支援する側」の少数民族とみなされていました…

帝王切開について考える 28 <「わが国における帝王切開分娩の最近の動向」より>

「周産期医学」2010年10月号(東京医学社)の「特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」の初めに、「我が国における帝王切開分娩の最近の動向」という記事があります。 その「全国の帝王切開率の動向」には以下のように書かれています。 帝王切開…

ニュースはどのように取捨選択されるのだろう

新聞を読まなくなってどれくらいたったでしょうか。 新聞だけでなくテレビのニュース番組も、あるいはネットのニュースもほとんど目にしません。 新聞を読まないとリテラシーが身につかないとか、受験に不利といった半ば強迫観念のようなものがあって、とに…

 帝王切開について考える 27 <「お産を家族にかえす」?>

前回の記事の「産み方は生き方?」で、「助産雑誌」2014年2月号(医学書院)の「帝王切開のお産をケアしよう」という特集の中に「『お産を家族にかえす』当院での取り組み」という記事があることを紹介しました。 サブタイトルに「帝王切開も尊い出産の1つ…

帝王切開について考える 26 <「産み方は生き方」?>

帝王切開を受けるお母さんと赤ちゃんのケアに関するまとまった本というものがなかなかないことは、「専門書がほとんどない」で書きました。 その中で紹介した2冊の本以外に、ここ最近で帝王切開についての特集が「助産雑誌」2014年2月号(医学書院)にありま…

帝王切開について考える 25 <帝王切開の入院期間の移り変わり>

私が助産師になった1980年代終わり頃から90年代を思い返すと、帝王切開での入院期間が半分になりました。 その間に3カ所の総合病院で働きましたが、最初の施設では入院期間が2週間でした。 経膣分娩のお母さんたちの入院期間は1週間でした。 だんたんと入院…

帝王切開について考える 24 <マズローのニーズ理論と術後の安全なケア>

「周手術期看護論 第3版」(ヌーヴェルヒロカワ、2015年)では、前回の「手術による変化・喪失の受容支援」の次に「安全の保障」としてマズローの理論から説明が書かれていました。 このマズローの理論はWikipediaでは自己実現理論として書かれていますが、1…

帝王切開について考える 23 <「手術による変化・喪失の支援」より>

何度か引用させていただいている「周手術期看護論 第3版」(ヌーベルヒロカワ、2015年)ですが、今の看護学生はここまで言語化された周手術期看護を学んでいることが本当にうらやましい限りです。 30年前、私たちが感覚的に感じていたことが言語化され、理論…

帝王切開について考える 22 <術直後に何を優先するか>

帝王切開や手術を経験された方でないとイメージしにくい話が続きますが、どうぞおつきあいください。 私自身、こちらの記事に書いたように、経験10年目ぐらいで帝王切開術直後の弛緩出血、20年目ぐらいで縫合不全による腹腔内出血を経験してからは、「お産…

帝王切開について考える 21 <聞かれなくなった「創部の安静」という表現>

数年前に母が心臓の手術を受けることになり、久しぶりに循環器系の手術看護の本を購入しました。 30年前の外科看護とはだいぶ様相が変わっていることを感じたのが、「麻酔覚醒後からリハビリが始まる」ということでした。 母の場合にも、術中合併症がなけれ…

帝王切開について考える 20 <帝王切開術後の合併症>

前回の記事に書いたように、帝王切開術後に起こる合併症の怖いものとして術後出血と肺塞栓症があります。 術後出血に関しては前回、「周産期医学」2010年10月号(東京医学社)からその内容を紹介しましたので、そちらを参照してください。 肺塞栓については…

帝王切開について考える 19 <「10年やってわからなかった怖さを20年やって知るのがお産」>

「10年やってわからなかった怖さを20年やって知るのがお産」 これを産科医の先生から学んだことは、こちらの記事に書きました。 「こんなことも起こるのか」と肝を冷やすことが、母胎にも胎児や新生児にも起こる。それが分娩というものだと、つくづく思うこ…

帝王切開について考える 18 <「帝王切開が育児行動に与える影響」より>

今回は、こちらの記事で紹介した「周産期医学」の「特集 帝王切開ー母と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)に掲載されている「帝王切開が育児行動に与える影響」から考えてみようと思います。 「はじめに」では、以下のように「分娩様…

帝王切開について考える 17 <「母性」という言葉>

なぜ帝王切開術後のケアについて手術中から授乳をしたり、帰室直後から母子同室を始める分娩施設があるのでしょうか。 おそらく、キーワードは「母性」なのではないかと感じています。 ところで、30年以上前に私が看護学生の時の教科書は「産婦人科看護」で…

帝王切開について考える 16 <「母子同室、母子分離の場合の母乳育児支援」より>

帝王切開術後当日から、夜間でも手術後のお母さんを起こしてまで授乳をする施設があるのは、どのような考え方があるのでしょうか。 「助産師だからこそ知っておきたい術前・術後の管理とケアの実践 帝王切開のすべて」(ペリネイタルケア2013年増刊号、メデ…

帝王切開について考える 15 <再び、こんさんのコメントより>

初めてこんさんからコメントをいただいた時に、わたしはこうたろう君のことを思い出しました。 こうたろう君は、こちらの記事で紹介したように、分娩台でおっぱいをあげている最中に呼吸停止となったようです。 助産師が肌着一枚の赤ちゃんを連れてきて分娩…

帝王切開について考える 14 <帝王切開術後の「周囲への無関心」の時期>

手術後の回復過程として術中から2〜4日ぐらいは「周囲への無関心」になる時期があることは、まだ「第1相傷害期」という言葉を看護の中では聞いたこともない30年ぐらい前でも、患者さんたちをみて経験的に感じていました。 手術直の様子についてはこちらの…

帝王切開について考える 13 <シュールな「帝王切開時の早期皮膚接触」>

さて、少し間があいてしまいましたが、「帝王切開について考える」の続きです。 こちらの記事で紹介した「助産師だからこそ知っておきたい術前・術後の管理とケアの実践 帝王切開のすべて」(ペリネイタルケア増刊号、2013年、メデイカ出版)には、ある分娩…

医療介入とは 98 <臍帯と胎盤はどのように扱われてきたのか>

赤ちゃんが生まれた後に臍帯をいつ切るかということについては、私が助産師学生だった1980年代後半あたりがちょうど、ゆっくり切るか早めに切るかの過渡期であったことはこちらの記事に書きました。 その後、「自然なお産」の流れの中では、臍帯拍動が止まっ…

気持ちの問題 4 <シュールな光景>

私が助産師になった1980年代末以降、ほんとうにいろいろと驚く方法が出現するのが出産界隈なのだと感じています。 一言で表現すると私には「シュールな光景」という感じ。 あのフリーダ・カーロの絵を見た時のような気分が襲ってくるのです。 たとえば水中分…

帝王切開について考える 12 <「帝王切開時の母乳育児支援」より>

前回の記事で紹介した「母親が裸の新生児を抱くことが育児行動の原点であり、早期授乳につながる」と書かれた記事について、今回はもう少し考えてみようと思います。 ペリネイタルケア2013年増刊号「助産師だからこそ知っておきたい術前・術後の管理とケアの…

帝王切開について考える 11 <「帝王切開と『母乳育児』」という考え方>

昨日の「赤ちゃんとの対面」の記事の最後に、「2000年代からすべきものに代わっていった」印象があると書きました。 「周産期医学」2010年10月号(東京医学社)の「特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」に、「帝王切開と母乳育児」という記事が…

帝王切開について考える 10 <赤ちゃんとの対面>

「赤ちゃんとの対面」って、日常ではきっと変な日本語に感じるかもしれませんね。医療現場では、生まれた赤ちゃんをお母さんに会わせるタイミングや方法という意味です。 1980年代末に助産師になってから数カ所の分娩施設で働いてきましたが、年代によっても…

帝王切開について考える 9 <「周囲への無関心」にさせるほどの侵襲>

ムーアの「出術侵襲からの回復過程」を前回の記事で紹介しましたが、今回はその「第1相」という時期に私自身が観察してきた様子を少し書いてもみようと思います。 第1相とは「術中から2〜4日」ぐらいまでの時期で、「傷害期ともよばれ、内分泌・代謝系の…

帝王切開について考える 8 <手術侵襲からの回復過程・・・ムーアの学説>

書店で周手術期看護の本に目を通して、私の学生時代には耳にしなかった言葉が多く使われていることに気づきました。 それがこちらの記事で紹介した「手術による侵襲」という表現です。 学生時代も、手術は身体に侵襲を与えるというのは学んだのではないかと…

帝王切開について考える 7 <手術療法とは人生の一大事である>

「帝王切開の術後の回復過程はどのようなものなのだろうか。そしてお母さんたちにはどのような休息が必要なのだろうか」 それに対する答えがみつかるような予感がする本を見つけました。 看護学生の教科書として出版されている「成人看護学 周手術期看護論 …

帝王切開について考える 6 <帝王切開についての専門書がほとんどない>

1980年代の帝王切開術の看護について、教科書に書かれていた内容を前回の記事で紹介しました。 あれから30年近くたって、私の記憶では帝王切開術の看護について網羅された専門書を見た記憶がありません。 書店で現在の「産婦人科看護」あるいは「母性看護学…

帝王切開について考える 5 <帝王切開術後の看護、1980年代の教科書より>

私が助産学生時代に使った教科書については「『救急処置』学生時代の教科書より 出産は母子二人の救命救急」の記事でも、「『客観的記述で簡潔に良くまとめられた教科書』と今読んでも感動する」と書きました。 今回の帝王切開の記事を書くにあたり、もう一…

帝王切開について考える 4 <ケアの標準化の難しさ・・・たとえば術後のシャワー>

帝王切開術後のケアについて、一部分ではだいぶケアの標準化が進みました。 その背景には、こちらの記事で紹介したクリニカルパスが浸透したこともあると思います。 90年代以前は、他の病院では手術後何時間ごろからどのように歩行開始をしているのだろう、…

帝王切開について考える 3 <帝王切開術後19時間とはどのような状態か>

手術部位や麻酔方法によって術後の経過はそれぞれ違いますが、開腹手術を受けた経験がある方には、術後19時間ぐらいといえばどんな状況だったでしょうか? まだ尿管が留置されていて、持続点滴をしています。 次第に創痛が出て来てナースコールを押しても、…