新生児

乳児用ミルクのあれこれ 35 <歴史は繰り返すーミルク受難>

今回も「母乳が足りなくても大丈夫」(二木武・土屋文安・山本良郎氏、ハート出版、平成9年)の内容を紹介しましす。 前回の記事で、フードファデイズムに陥らないためにも乳児用ミルクの歴史や改良の変遷を知った方がよいのではないかと書きました。 もうひ…

乳児用ミルクのあれこれ 34 <乳児用ミルクの改良ー1980-1990年代>

前回の「母乳並みのミルクの誕生」の冒頭では、昨日紹介した時代よりもう少しあとの時代のエピソードも書かれています。 「明治さん、よくぞ先生方の夢を叶えてくれましたねえ」 とため息まじりに話しかけてこられた、かなり年配のお客様の笑顔が、今でも忘…

育児用ミルクのあれこれ 33 <「母乳並みのミルクの誕生」>

今回も「母乳が足りなくても大丈夫」(二木武・土屋文安・山本良郎氏、ハート出版、平成9年)を参考に、戦後、乳児用ミルクについての研究によって乳児にとってどのようなベネフィットがあったのか紹介したいと思います。 「母乳並みのミルクの誕生」(p.113…

乳児用ミルクのあれこれ 32 <乳児用ミルクの改良の変遷>

今回も「母乳が足りなくても安心」(二木武・土屋文安・山本良郎氏、ハート出版、平成9年)から、乳児用ミルクの変遷を紹介しようと思います。 「第二次大戦後の進歩」の中で、乳児用ミルクが大きく3段階に分けて改良されたことが書かれています。 長いので…

乳児用ミルクのあれこれ 31 <ミルクに関する「事実」とは何かー夏季熱>

こうして乳児用ミルクのここ一世紀の変遷をみるだけでも、今、ミルク缶をパカッと開けてすぐに新生児に安全に飲ませるミルクを作れることはなんとすごいことだろうと思います。 「母乳栄養に失敗」「人工栄養に失敗」、そのどちらも乳児の生命に直結すること…

乳児用ミルクのあれこれ 30 <安全優先のための計画授乳>

私が看護学生だった1970年代終わりの頃の産科病棟は、新生児室に赤ちゃんを預かり3時間ごとに授乳をする母児別室、規則授乳でした。 なぜそういう方法なのかあまり深く考えることなく、教科書にも「ミルクの消化時間が3時間」ぐらいしか書かれていなかったの…

乳児用ミルクのあれこれ 29 <「育児用乳製品の店」があった時代とは>

先日、マツコ・デラックス氏の「夜の巷を徘徊する」という番組で、葛飾区の立石仲見世の様子が放送されていました。 その中で目を引いたのが、「育児用乳製品の店」という古い看板がそのまま残されていたお店でした。 検索すればけっこうそのお店の写真が出…

乳児用ミルクのあれこれ 28 <人工栄養と腸内細菌について>

「帝王切開で生まれる」からちょっと横道にそれて、久しぶりの「乳幼児用ミルクのあれこれ」です。 前回の記事までで引用した「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文に、「母乳栄養児と人工栄養児における糞便中の菌叢の推移(Yoshiokaら、1983)」とい…

帝王切開で生まれる 9 <「帝王切開出生児に理想的な腸内細菌叢を定着させるには」より>

「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文の最後の部分を紹介します。 「帝王切開出生児に理想的な腸内細菌叢を定着させるには」として以下のように書かれて…

帝王切開で生まれる 8 <「帝王切開分娩と腸内細菌叢」より>

引き続き、「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌」について紹介していきます。 <「帝王切開分娩と腸内細菌叢」> 帝王切開で出生する新生児は産道を通過するという過…

帝王切開で生まれる 7 <早産児と正期産児の葛藤と矛盾>

前回の記事に引き続き、「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」を紹介しながら考えてみようと思います。 <「腸内細菌叢の新生児期の役割」> 前回の記事で紹介した…

帝王切開で生まれる 6 <「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」より>

「周産期医学 特集ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の中に、「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文があります。 今回はこの論文を主に紹介してみようと思います。 長くなりそうなので何回かにわけながら、それぞれの項…

帝王切開で生まれる 5 <産道を通過しないことによる違い>

帝王切開で生まれる時には産道による胸郭への刺激がないために出生後の呼吸障害が起こりやすいかどうかについては、在胎週数の影響のほうが大きいのかもしれません。 それ以外に、胎児から新生児へと変化する過程で、帝王切開と経膣分娩で異なる状況にはどの…

帝王切開で生まれる 4 <帝王切開と新生児一過性多呼吸>

「産道」を通らずに帝王切開というバイパスを通って生まれることで、出生直後には何か影響があるのでしょうか? 早産についてはかなり状況が違うので、今回は正期産での帝王切開について考えてみたいと思います。 経験的に、「帝王切開の赤ちゃんは一過性多…

帝王切開で生まれる 3  <産道とはなにか>

帝王切開と経膣分娩の明らかに違う点が、産道を通過したかしないかの違いであり、それは多くの人が漠然と理解していることではないかと思います。 この「産道を通る」ということは、具体的にどういうことなのでしょうか。 こちらの資料に書かれているように…

帝王切開で生まれる 2 <生まれる直前の胎児心拍モニタリングがない>

お母さんのお腹が切り開かれた部分から、赤ちゃんの体の一部が見え始めます。 頭位であれば髪の毛とともに頭の一部が見えますし、骨盤位であれば赤ちゃんの腰のあたりから見え始めて最後に頭が出ます。 ほんの一瞬の静寂のあと、赤ちゃんの産声が聞こえます…

帝王切開で生まれる 1 <生まれ方で差があるのか>

「帝王切開で生まれる」 人間が生まれる方法には大きく2種類あって、ひとつは吸引分娩や鉗子分娩も含めた経膣分娩で、もうひとつは帝王切開です。 この差は何かあるのだろうか。 胎児から新生児になる決定的とも言える瞬間に、この分娩方式の違いは何か影響…

帝王切開について考える 32 <小まとめ>

こんさんからいただいたコメントがきっかけで、帝王切開についての記事を書きました。 ここ半世紀あまりの帝王切開についての考え方の変化をあらためて考える機会になりました。 私が助産師になった1980年代終わり頃は、まだエコーの診断技術がようやく積み…

思い込みと妄想 22 <ロータス・バース・・・胎盤を残したままにする>

心配な伯母さんからコメント欄でこんな相談がありました。(心配な伯母さん、ありがとうございます。そして承諾なしに本文中で紹介してすみません。) 義妹が10月に初出産を控えています。その時、自宅出産を希望しており、その理由が赤ちゃんのために胎盤を…

帝王切開について考える 2 <周手術期看護・・・手術を中心にした看護>

こちらの記事に書いたように、私は外科系看護に関心がありました。今から30年以上前のことです。 なぜ外科系に関心があったのか自分でも思い出せないのですが、手術室のあの緊張した雰囲気と、麻酔器や人工心肺を使って、目の前の人が意識もなくなり動かない…

帝王切開について考える 1 <こんさんの話を聞いてください>

「アドバンス助産師とは」についてはまだ続きを考えているのですが、昨日の記事の最後にこう書きました。 標準的な業務が明確にされていないから、それが周産期医療から逸脱しているとも認識できないのではないでしょうか。 この標準化が遅れている業務のひ…

思い込みと妄想 19 <「小指をたてる」>

本当は、久しぶりに「新生児のあれこれ」シリーズの手の動きの続きで、この「小指をたてる」を書くつもりでいました。 生まれて半日から1日ぐらいで、新生児の小指がピンと延び始める愛らしいしぐさが見られるようになります。 授乳の時のように全身で何か…

行間を読む 37 <1970年代から80年代の保育の教科書よりー乳児保育のあけぼのの時代>

新生児や乳児の授乳方法について、明治以降からすでに「規則授乳」が広がっていたことや1950〜70年代に「自律授乳」が見直されていたことはこちらやこちらで紹介しました。 なぜ私は「1960年代に医療機関で出産が行われるようになってから、規則授乳や母子別…

乳児用ミルクのあれこれ 27 <Meekさんのコメントをご紹介します>

液状乳児用ミルクのキャンペーンについての記事に、Meekさんからアメリカの資料や乳業会社の状況についてコメントを頂きました。 だいぶ時間がたってしまいましたが、コメントを本文で紹介することも快諾してくださりMeekさんありがとうございます。 物ごと…

新生児のあれこれ 47  <新生児の啼き方を客観的に表現することは難しい>

久しぶりの「新生児のあれこれ」です。 このシリーズはここから始まりました。 毎日、新生児に接して二十数年。 延べ人数にしたら、何万人いや何十万人の新生児になるのでしょうか。 まあ、自分が新生児のことをわかっているつもりで思い込んでいれば、数を…

新生児のあれこれ 46 <赤ちゃんの寝かせ方>

「赤ちゃん」と一口に言っても出生直後から1歳前後までその幅は広いのですが、今回の話題はおもに2〜3ヶ月までの赤ちゃんの寝かせ方についてです。 私の手元にある周産期関係の本や自治体の母親学級のテキストなどに目を通してみましたが、「新生児をどの…

新生児のあれこれ  45  <ペットからの人畜共通感染症予防>

ペットを飼っていらっしゃる妊婦さんやご家庭から、「赤ちゃんに気をつけることは何かありますか?」という質問はあることはあるのですが、案外少ないものです。 皆さん、ある程度知識があって気をつけていらっしゃるのでしょうか? それとも、まるで人間の…

新生児のあれこれ 44 <赤ちゃんとペット>

久しぶりの「新生児のあれこれ」です。 らばQというサイトの「ママにさわっちゃダメ!・・・妊婦のお腹を守る犬(動画)」を観て、ペットのいる家には「赤ちゃんがやってきた!」というほのぼのしたエピソードがたくさんあるのだろうなと笑ってしまいました…

自律授乳のあれこれ 13 <ラクテーションコンサルタント協会の「自律授乳」の定義のようなもの>

1980年代終り頃に私が助産師学校で使った教科書には、新生児に個性があるということが書かれていたことはこちらの記事で紹介しました。 新生児の行動を観察していると、その個性ある行動に気づく。 現代社会では「個性」という言葉は日常的に使われるので、…

行間を読む 8 <根強い「きずな」幻想>

前回の記事で紹介した「母乳育児支援スタンダード」(日本ラクテーション・コンサルタント協会、医学書院、2008年)の「早期授乳を支援するときの留意点」に以下の一文が入っています。 7)児とのきずなの形成は母親と父親の両方を含むことを心にとめておく。…