観察する 31 <蚊に刺されなくなった>

ここ2〜3年ぐらいの変化なのですが、めっきり蚊に刺されなくなりました。
たまに刺される程度です。


物心ついてからというもの、どこにいても誰よりも蚊に刺される体質のようで、春から秋まで悲惨でした。
いえ、近年は越冬する蚊が家にいて、真冬でも電気蚊取を使う日もありました。
職場でもよく刺されたので、いくところいくところに電気蚊取を置いて回っていました。


気温と湿度が上昇し始める3月頃から使い始めていた電気蚊取も、この2〜3年、使う日が激減しました。


「ああ、虫もよらなくなるお年頃か」と思っていたら、ちょうど、タモリ倶楽部で「赤ちゃんと高齢者は蚊にさされても無反応」という話をしていました。
え?まだ高齢者じゃないですけれど、と思いつつ、やっぱり蚊にさされにくいと感じたのもかなりいい線をいった観察だったようです。


でも、誰がこの「赤ちゃんと高齢者は蚊に刺されても無反応」という状況を観察したのでしょうか。
それも大事な「生活史」のひとつですよね。


蚊取り線香の開発史>


子どもの頃から夏と言えば蚊取り線香の香りで、今でもたまに通りすがりの家から蚊取り線香の香りがすると懐かしく感じます。
店頭にもまだたくさん蚊取り線香が売られているので、根強い人気があるのでしょうか。


Wikipedia蚊取り線香を読んでいたら、英語でモスキートコイルと呼ぶことを思い出し、いろいろと回想の世界へ。


1980年代に東南アジアで働いた時に、とりあえずの蚊取り線香を持参しました。
蚊が一年中いる国ですから、蚊取り線香も現地で調達できるだろうと考えたのが安易であったことに、あとでとても後悔することになりました。


見た目も日本製と同じ蚊取り線香が、やはりたくさん売られていました。
ところがそれに火をつけたとたん、頭痛がするような臭いがたちこめて、1cmも使わないうちに廃棄したのでした。
この時に、モスキートコイルは日本で開発されたものであるというトリビアを、どこからか知りました。
日本製の蚊取り線香がなくなったあと、どうやり過ごしたのか記憶にないのですが、しばらくは天井の大きな扇風機をがんがんと回して蚊を吹き飛ばし、刺されたら薬を付けてしのいでいたのかもしれません。


赴任して半年後に一時帰国する機会があったので、秋に入って日本では店頭に少なくなった蚊取り線香をたくさん買ったのでした。
その後、たぶん、高額でも日本製の蚊取り線香を販売している店を見つけたのだと思います。


一緒にいる人は刺されないのに、なぜか私だけ蚊やぶよに好まれて、あちこちかき傷だらけになるのでした。
一度だけひどい悪寒戦慄と高熱が出て、すわマラリアかと覚悟しましたが、なんとか大丈夫でした。


現在のような蚊取り線香は、1890年に上山英一郎氏によって作られたのですね。

平安時代から日本に残る伝統的な風習「蚊遣り火」のように粉末にした除虫菊におがくずを混ぜて燃やす方法を考えたが、夏に季節外れの火鉢が必要であったために普及に至らなかった。

そこで上山は、今度は線香に除虫菊を練り込むことを考案、1890年に世界初の棒状蚊取り線香金鳥香」が誕生した。


平安時代に、何かを燃やすと蚊が寄り付かないことを観察していたこともすごいことですね。
そして除虫菊に蚊を殺す成分があること、人体には害はないことを見つけるまでにどんな歴史があったのでしょうか。


線香に練り込んだだけでは1時間ももたないことから、上山氏の妻が渦巻き形のデザインを考えついたこともすごいですね。
発見したきっかけは「倉の中でとぐろを巻く蚊を見て驚いた」という、なんだが呪術的なものなのですが、その90年後には東南アジアで暮らす日本人(私)が喉から手が出るほど必要とする物になるとは、想像もしなかったことでしょう。


蚊に刺されても反応しなくなれば、もう蚊取り線香も私には必要がないことになるわけですが、ちょっと寂しいのでアロマの気分で使ってみましょうか。




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