昨年の12月は、湧水に関する本に出会ったことで、湧水を訪ねて本当によく歩きました。
記録が追いついていないので、記憶のほうが怪しくなってきています。
日記代わりの手帳と、iPhoneに残っている写真や動画を観ながら思い起こしています。
最近、散歩の時によく写真を撮るようになりました。
以前は、歩いていて気になったところは単語や文章でiPhoneのメモに残していたのですが、最近は写真を撮ることがメモ代わりになっています。
他の人が見ると何の変哲もない交差点の写真でも、そこにはハケがわかるような高低差が写っています。
動画はほとんどが湧水で、一見同じような風景なのですが、それがどこなのか記憶が甦ってくるのは不思議です。
さて、今回は拝島段丘の続きで、国分寺崖線の続きです。
国分寺崖線は、以前歩いた丸子川へと続いています。
<お鷹の道>
「東京せせらぎ散歩」(高村弘毅氏、丸善出版)は、「お鷹の道・真姿の池」から始まっています。
国分寺市から世田谷区まで続く武蔵野段丘の国分寺崖線は「ハケ」と呼ばれる。崖(がけ)がハケになったとも、湧水を吐くからハケだとも言われるが由来は不明。
(中略)
崖線は雑木林に覆われ、その裾に台地に降った雨が湧水となって流れ出し野川を作っている。
一帯には国分寺境内、真姿の池、お鷹の水(真姿の池東側の湧水を土地の人はそう呼ぶ)のほか民地にいくつもの湧水がある。いずれも水量は豊富だがお鷹の水が一番多い。付近の人は湧水の流れを「カウ」とよび、水道になるまで、飲み水、炊事、風呂、洗い物など一切をまかなっていたという。水路には水音から「ポンポ」とよばれる洗い場が今も残る。
その写真から、川で沐浴をしたり、川や泉を水源として1本の水流が上水道から下水道の機能を持っていた東南アジアの村の風景を思い起い出して懐かしくなりました。
1990年代に中央線で通勤していた頃、車窓から見える西国分寺駅周辺は都会の風景でしたから、その先にまったくそんな風景があるとは想像もできなかったのでした。
西国分寺駅を降りて、しばらく歩くと武蔵国分寺公園があります。
その途中から急な下り坂になって、武蔵国分寺と万葉植物園があります。
境内には湧水があって、まず国分寺崖線のハケ下にいることを実感。
そのすぐ隣りから、お鷹の道と呼ばれる湧水群と水路が続いています。
散策路として整備されているので、平日でしたが訪れる人もけっこういました。
あちこちから水音が聞こえ、昔からのお屋敷のような民家があって、中央線からみていたハケ上とは別世界が広がっています。
東南アジアで暮らした村にいるかのような、錯覚に陥りました。
水が沸き上がり、水路を流れていく。
そのそばで暮らすなんて、なんて豊かな時間なのだろうとうらやましさを覚えながら、先を急いだのでした。