カンガルーケアを考える 2 <安全性に関する調査報告>

カンガルーケアの危険性を呼びかけている久保田医師のサイトで見つけたカンガルーケアに関する調査報告の内容を参考に、今日はいきなりですが核心部分の安全性について考えてみようと思います。


<カンガルーケアの安全性に関する調査報告>

平成20年度こども未来財団調査研究事業「妊娠・出産の安全性と快適性確保に関する調査研究」の中で、カンガルーケアの実態調査が行われたようです。


研究課題「赤ちゃんに優しい病院における分娩直後に行う母子の皮膚接触(early skin to skin contact)の実態調査
http://www.s-kubota.net/kanri/10040401.html

この調査によると、赤ちゃんにやさしい病院(BFH)42施設のうち23施設で、原因不明のチアノーゼや心肺停止、呼吸障害、体勢が崩れて転落しそうになったといった57ケースが報告されたとのことです。
実際の事例としてあげられている内容をみると、
1)原因不明のチアノーゼ 9例
2)羊水、肺水による気道閉塞 3例
3)体勢が崩れて気道閉塞 6例
    児の体勢が崩れて顔が乳房間に埋もれた
    (母は寝入っていた)
    うつぶせになってしまい鼻が閉塞した
    体勢が崩れて口を圧迫した
4)原因不明の窒息
5)無呼吸
6)呼吸器疾患 13例
  (新生児一過性多呼吸TTNB、胎便吸引症候群MAS)
7)転落しそうになった 2例
8)低体温 2例
などがあげられています。

興味深いのは「事例と実施時間の関係」に関する報告では、カンガルーケアが30分以内の施設では事例はゼロ、30〜90分の施設では66.7%、120分実施する施設では75%と、長時間実施するにつれて事例が増えています。


次回以降にカンガルーケアの「定義」などを詳しくみていきたいと思いますが、2010年度のカンガルーケア・ガイドラインでは「出生後30分以内から、出生後少なくとも最初の2時間、または最初の授乳が終わるまで、カンガルーケアーを続ける支援をすることが望まれる」と、できるだけ長くskin to skin contactを実施することを推奨しています。
長く実施すればするほど事例が多く発生していることが示された調査報告を読めば、「カンガルーケアのリスクは実施時間に比例して高くなる」と普通は考えるのではないかと思います。


kikulogの「出産における自然と不自然」(2009/5/29)というエントリーで、カンガルーケアについて以下のようなコメントを書きました。
[http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1243559151

#20. ふぃっしゅーJune 4.2009@11:00:41

カンガルーケアを勧める研究会が、安全のためのモニター装着を提案していますが、モニターまでつけて実施して得られる「自然な」あるいは「豊かな」母子関係の早期確立などは本当に必要なことなのか問い直す必要があるのではないでしょうか。
自然に生まれて問題のなかった赤ちゃんに、発見が遅れれば蘇生術が必要になるようなことは無意味以上のことのように思います。

このあとつぎつぎに事故報告を目にするようになりました。
正期産児の出生直後のカンガルーケアはリスクが大きく実施しないほうがよい、という気持ちは強くなるばかりです。
それが結論で終わりにしたいのですが、短時間なら良いのか、カンガルーケアとは何か、なぜ根強く実施されているのか、その考え方の問題点は何かなど、次に考えていこうと思います。


それにしても出産直後に母親の胸の上に生まれたばかりの赤ちゃんを載せて2時間も過ごすなんて、苦行に見えませんか?




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