新生児の哺乳行動とは 2 <哺乳行動とは、消化・吸収・排泄までの統合的な複雑なしくみ>

*食事前後の方は、閲覧注意*


・・・と書けば、排泄のこととピンときますね。
最近は、胃や大腸の絵がリアルに表現された胃腸薬やヨーグルトの宣伝がたくさん放送されています。
おいしく食べて元気に生きるためには、消化機能が大事ですね。


そう、新生児はその消化機能がほぼゼロに近い状態からスタートします。
飲んで(食べて)、消化して、吸収する。そして排泄する。
生まれたからといってすぐにできるのではなく、出生後、段階を経ながらそうした能力を少しずつ獲得し、あるいは習得して複雑な代謝を行えるようになるのだと思います。


つまり、哺乳行動とは、消化・吸収・排泄までの総合的な複雑なしくみであると言えるのではないでしょうか?


新生児が「おっぱいを吸わない」あるいは「乳首をくわえているけれども飲まない」「激しく泣くけれど、吸わない」「ミルクを足しても眠らない」などなど、大人を悩ませる行動も、この消化・排泄機能と合わせて考えてみればまさに合点がいきます。


これだけヒトの体のしくみが解明されてきているのに、なぜ新生児に限ってはなんでも「授乳」だけに答えを求めようとするのでしょうか。
かくいう私も、以前は「母乳育児」に熱心で、お母さんのおっぱいをマッサージしたり、赤ちゃんの吸い方をなんとかしようと頑張っていました。
「育児は母乳から始まる」かのような関わり方を、私自身がしていました。


いつ頃からか、ふと新生児の排泄の変化と泣きかた、飲み方の変化が見えてきて、パターンがあるということに気づきました。
生後数日までの新生児をしょっちゅう抱っこし、授乳したりあやしたり、オムツ交換をしていくうちに、自然とデーターが体の中に蓄積されたのでしょう。
新生児期、とくに胎便から母乳便に変化する2〜3日はあっと言う間ですから、こればかりは10人ぐらい出産した人でもその変化に気づくだけの体験量には至らないのではないかと思います。
延べ人数にしたら何万人かの新生児に接していくうちに、見えてきたのだと思います。


もうひとつは、熱帯の国に暮らしていた頃の現地の方の行動がとても印象に残っていて、それがヒントにもなっていたのだと思います。
プランテーションで働く方の家に居候させてもらいながら、農村、漁村、そして少数民族の村を回り、一緒に生活し寝泊りさせてもらっていました。


熱い国ですから日本のような厚い布や紙のオムツは使いません。オムツをしていないか、薄い三角の布でくるむ程度です。
オムツ自体、高価ですしね。
あちらのお母さんたちは赤ちゃんにおっぱいをあげていると、ふと何かの拍子に赤ちゃんのお尻を外に向けるのです。
すると絶妙のタイミングで赤ちゃん達は、シャーっとかブリブリっと大地に向けてお仕事をします。
たまにお母さんの着物も多少被害を被りますが、熱い国なのでちゃちゃっと洗って干せばいいだけのことです。
いつも、「すごい!」と感心していました。


私が感心しているのをみて、あるお母さんに「母乳をあげているとちょっとした赤ちゃんのしぐさでうんちとかおしっこのタイミングがわかるのよ」と、一体この日本人は何を驚いているのと逆に驚かれてしまいました。


それから何年か後に助産雑誌にインドネシアで同じような体験をした方の投稿載っていて、日本でこうした女性の体験が途絶えてしまっている部分かもしれないと思った記憶があります。


異文化の体験はけっこう適応できる私でしたがその体験は印象強く残っていて、それ以降日本の病院で働いている時にも、いつの間にか新生児の排泄に注意をしていたのかもしれません。


そうして気づいたこと、考えたことを書いたものを。doramaoさんのどらねこ日誌で残していただきました。

母子の健康と母乳育児ー母乳育児を考える2
<4.胎便と腸蠕動について 出生当日〜1日>
母子の健康と母乳育児ー母乳育児を考える3
<5.胎便から移行便、腸内細菌叢について>
<6.移行便から母乳便へ>


*同じ内容が、「とらねこ日誌に載せていただきました」にあります。


次回からは上記の文章を少し見直しながら、新生児の哺乳行動の排泄編を書いてみようと思います。
途中で、他の記事も書くので不定期です。


<おまけ>


おそらく熱帯や途上国で私のような経験をした人たちによって、「オムツなし育児」のような話がでてきたのではないかと推測しています。
本まででたり、助産雑誌で取り上げられたりしていましたが、何かが違うのですよね、それは。


新生児や赤ちゃんが泣いたりぐずったり、ちょっとしたしぐさで排泄のタイミングを伝えようとしていることに大人が気づくことができればそれで十分だと思います。
首もすわっていない新生児から、そのタイミングでおまるに座らせるとか、そのほうが赤ちゃんは気持ちがいいとかになると・・・。


私が暮らした熱帯の某国では、新生児期から赤ちゃん達はハンモッグに寝ていて時々盛大に寝たままおしっこやウンチをしていました。床にダダ漏れです。
それも熱い国ですから、拭けばいいだけです。
授乳中はタイミングよく排泄させますが、寝ているときはほって置きます。
はいはいしたり、一人で歩くようになると、赤ちゃん達はしたいところに勝手にしていきます。
そのうちに周囲の人と同じ行動をするようになって、最終的にはトイレ(といっても「青空トイレ」で好きなこところで)でするようになる、それだけのことでした。


日本で「オムツなし育児」、それはお母さんや周囲の人の仕事を増やすだけかもしれませんね。



<2018年3月23日、追記>


doramaoさんの「どらねこ日誌」はなくなってしまいましたが、そこにコメントしたものを「とらねこ日誌」にまとめてくださいました。
今読み返すと、doramaoさんのところに超長文、連続コメントを書き込んだ私のずうずうしさに穴があったら入りたいぐらいですが、記事にしてくださったdoramaoさんの寛大さにあらためて感謝です。




新生児の「吸う」ことや「哺乳瓶」に関する記事のまとめはこちら