周産期の災害対策シンポジウム

日本看護協会発行の「協会ニュース」Vol.535 2012.2.15号に、去る2月4日に行われた「東日本大震災を受けて − 周産期における災害対策シンポジウム」の報告が載っていました。


記事にはあまり参考になる詳細は書かれていないのですが、今後「分娩施設における防災マニュアル作成ガイド」ができるようです。

本会の助産師職能委員会が行った「周産期における防災マニュアル」の収集・調査に関して、宮川祐三子委員が活動を報告した。
2011年6月の全国助産師交流集会の参加者アンケートで、約半数の施設が「防災マニュアルの中に産科に関する記載がない」と回答。そのため、22都道府県から74施設のマニュアルを収集して分析を行い、2012年度に「分娩施設におけるマニュアル作成ガイド」の策定を目指す。


「マニュアル作成ガイド」ですから、それを参考にしてさらに各施設でマニュアルを作成していくことになるわけです。
上記の74施設というのは、おそらく大学病院や総合病院がほとんどでしょう。
できれば、全国の分娩の半数を受け入れている中小規模の産科診療所で参考になるようなガイドになってほしいと思います。


そしてマニュアル作成のためには、実際にどのような状況がありどのような困難な点があったのか、それに対してどのように対応したのかという経験を伝えて欲しいものです。


昨年の大震災の際、被災地全ての地域でどれだけの産科入院中の妊産婦さんがいらっしゃったのか。
切迫流早産、その他ハイリスクで管理入院中の妊婦さんは何人いたのか、その治療は継続して行われたのか。
NICUの状況はどうだったのか。
母体搬送、新生児搬送はどれくらいあり、受け入れ困難はどのくらいあったのか。
電気・水道が復旧しない期間の分娩件数、帝王切開術数はどれくらいあったのか。どのように具体的に対応したのか。
分娩時に使用する器具の滅菌消毒はどうしていたのか。
医薬品、衛生材料などの調達はどのようにしていたのか。
妊産褥婦さんへの食糧や水の配給、入院・避難所の生活状況はどのようだったのか。


知りたいことがたくさんあるのですが、なかなか全体像がわかるような調査報告を目にすることがありません。
阪神大震災の際の医療活動が書かれた本を書店で見ましたが、日記のような記述のため、病棟業務の対応策を立てるのにはあまり参考にならないものが多い印象でした。


1年中を通して自然災害の多い日本ですから、災害毎の医療機関の状況をデータベース化してどの医療機関からもその情報を知ることができるようにすること、インフラが復旧するまでたとえば医療器具の消毒はどうするのか根拠に基づく感染予防対策を提示するなど、そろそろそういう災害時の看護に関する研究所のような組織ができても良いのではないかと思います。


<おまけ>


阪神大震災の当日から1週間ぐらいの避難生活で配給された食糧は、250〜1000Kcal/日ぐらいだったようです。(本の立ち読みで得た情報なので不正確ですが)
さらに被災地が広範囲だった東日本大震災での食糧・水の配給量や状況はどうだったのでしょうか。


そのような状況で「吸わせれば母乳はでる」「ミルクや哺乳瓶の配給は受けないように」という情報を流すことが適切だったのでしょうか。
その点も反省点として、今後の災害時の対応策に生かされる必要があると思います。