私が助産師になった二十数年前に比べて、周産期医療あるいは出産育児の話題の中で使われる用語がとても多くなりました。
医療の進歩に伴ってあるいは社会の変化に伴って、概念が変わったり新たな表現を必要とする場合もあると思います。
あるいは状態や処置内容を説明する医療用語で表現としては本来中立的であった言葉が、いつのまにか「何かに反対する」とか「こちらの方がよい」という価値観を伴って強いメッセージを持つものに変えられてしまったものもあります。
完全母乳、いいお産、自然なお産、自然分娩、人間的なお産、家庭的なお産、温かいお産、院内助産、自律(あるいは自立)した助産師、フリースタイル分娩、アクティブバース、水中分娩、畳の上でのお産、私らしいお産、主体的なお産、バースプラン、母と子の絆、カンガルーケア、産む力、生まれる力、寄り添う、体つくり、冷え、骨盤のゆがみ、自然療法、代替療法、ドゥーラ、分娩台、会陰切開、促進剤、分娩監視装置、医療介入、まだまだあります。
自分自身がその言葉の持つ意味を十分に理解できているのかわからないものがたくさんあります。
定義は何か、探してもよくわからないものがあります。
言葉が表現する実体が不明確で、イメージだけが社会に浸透しているのではないかと思われるものがあります。
その言葉を発する側と受け取る側の認識にも、大きな差があるのではないかと思われるものもあります。
それをしなくても大丈夫なのに、しなければと思い込んでしまうこともあると思います。
時に強いメッセージ性をこめて使われることで、社会全体が変わり役に立つ場合もあります。
社会の変化に伴って、私たち周産期医療にたずさわる側も求められていることに耳を傾ける姿勢は大事だと思います。
でもここ20年ほどで急激に増えた表現の多さに、現実の妊娠・出産・育児とは違う虚像の世界がどんどんと作られていくような居心地の悪さを感じています。
キャッチーな表現とでもいうのでしょうか。
そんな言葉が量産されて、消費されて、いつの間にか消えて、でも結局は多くの出産する女性を右往左往させているだけのように思うのです。
特に出産に関わる助産師はそうやって作られた言葉をそのまますすんで使う立場ではなく、理想に対して現実的に実行可能であるのか、メリットとデメリットはどうか、それをした場合としなかった場合の違いはどうかなど、できるかぎり根拠を示して合理的な判断ができるように手助けする立場であると考えています。
<言葉の意味>という新しいタグを作って、ひとつひとつの言葉と何を表現しているのか少しずつ考えていきたいと思っています。
<追記:2012年4月6日>
誤字・脱字を訂正しました。
いつの間にかたくさんの方に訪れていただいて、ありがとうございます。
ブコメをいただいた方もありがとうございます。参考になります。
突然競泳ブログになるので、驚かしてすみません。