助産師の「開業権」とは何か 1

助産師は看護職の中で唯一独立開業し、助産業務を自立して実践できる>


私が助産婦学校(当時は助産婦)で印象に残っているのは、「助産婦は開業権がある」「正常なお産は助産婦だけで介助できる」ということでした。
深く考えることなく自分の職業の誇りのように思っていた時期がありました。


1980年代後半はいわゆる自然なお産のブームの始まりの時期で開業助産婦の方々の仕事がメディアを通して紹介され、助産婦教育の中でも地域の中に根付いた助産院のともし火を絶やしてはいけないという雰囲気が感じられました。
その影響を受けて、私もいつか開業してみたいと思って卒業しました。


その頃の開業助産婦さんたちの「待つお産」「会陰保護」の技術や母乳育児支援の具体的方法が紹介されたことは、とても参考になりました。
当時は分娩や母乳育児に関してはまだ助産婦学校の教科書ぐらいしか出版物がなく、実践的な技術を伝えてくれる本としては貴重なものでした。



卒業してからは、医師とともに出産介助していたからこそすぐに救命救急処置ができて大事にいたらなかったようなお産を数え切れないほど体験しました。
そうした自分の実体験とは反対に、1990年代になると世の中ではますます助産所や自宅分娩が持ち上げられて伝えられるようになりました。
病院での産科の医療事故はニュースになっても助産院や自宅分娩の事故は助産師の中でも知る機会がなく、助産院や自宅分娩というのはローリスクであれば大丈夫なのだろうか、でも病院ではローリスクのお産でも予想外の怖いこともあるのに何が違うのだろうかと気持ちが揺れていました。


今考えると、なぜか、開業助産師さんたちは事故を起こすような分娩介助はしないベテランの人たちという思い込みでした。
滑稽なほどにその思い込みから逃れられずにいて、自分のように病院で医師と共に働く助産師よりも開業助産師のほうが力量も度胸もある人たちだと信じていました。


そして数年前に琴子ちゃんのお母さんのブログ、「助産院は安全?」に出会いました。
そこで知った事実は、「病院でも産科の医療事故はある」とか「病院でも助けられないこともある」という次元の話ではなく、「開業にこだわりすぎた故に起きた事故」ではないかと思われるような話ばかりでした。


助産師の誇りとして教育されてきた「開業権」とは何か。
言葉の意味を問い直す作業の第一弾は、助産師の開業権について考えてみたいと思います。





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