出産の正常と異常について考えたこと 5  <正常であることの証明>

前回の記事にhaccaさんがコメントをくださいました。ありがとうございます。


haccaさんを担当した助産師の対応に対して、haccaさんが以下のように感じられたことを書かれています。

このような精神論で物事を見る、科学的な検証を避けるといった姿勢が助産所や自宅分娩にはあるのではないでしょうか。


<正常分娩を証明する難しさ>


結果的に正常分娩だったとしても、「正常分娩だからこのお産は助産師だけで介助できる」と判断した場合には、そのお産が正常に経過していることを助産師自身が証明できなければいけないわけです。
これは助産所や自宅分娩だけでなく、医療機関で分娩経過を任されている助産師にしても同じです。


こちらの記事で書いたように、産科医に比べて助産師の異常に対する知識は絶対的に少ないし、異常の経験量にも助産師間の個人差があり、また異常を怖いと思わなかったり気づいていない助産師もいます。


何が異常かわかっていなければ医師に報告することもできませんが、そのお産の経過が正常であると第三者に説明できるだけの記録と判断の根拠が明確にされていないければならないのです。


「正常な分娩経過だったことを証明する」、これはよく考えればとても難しいことです。


<胎児のwell-beingを証明する>


日本語での適切な訳がないからかwell-beingのままで、臨床でも使われています。
簡単に言えば胎児が元気かどうかということですが、それを知るために使用されているのが主にエコーと陣痛胎児心拍モニター(いわゆる分娩監視装置、CTG)です。


分娩経過中の胎児の元気さを知り、苦しいサインを見逃さないための客観的なデーターは現時点では連続したCTG所見以外はないといえます。


その分娩経過が正常であったかどうかを証明するのに不可欠なのが、このCTGモニターの記録です。


「自然なお産」の流れの中では、分娩台とともにこの分娩監視装置CTGが忌み嫌われてきた代表といえるでしょう。


3年前から始まった産科医療補償制度の原因分析報告書で、助産所のケースが公開されています。
http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/pdf/220003.pdf
分娩第2期に全く胎児心拍の聴取もされていなかったことは驚きですが、たとえ陣痛ごとにドップラーで心拍数を聴いて記録に残したとしても、現在の産科医学では胎児の元気さの証明をするには不十分なものです。


その報告書の中では、以下のように書かれています。

イ.日本助産師会は「助産所業務ガイドライン」に記載されている「胎児well-beingの評価」とは何を示すかを具体的に掲載するよう要望する。


CTGを装着することは確かに、産婦さんには多少の負担にはなります。
でもそれは決して産婦さんをベッドに縛りつけようとしているわけではなく、現時点で一番赤ちゃんの状態を正確に把握できる方法だからです。


CTGで連続した陣痛と胎児心拍を行ってwell-beingの評価を行わない限り、現時点の医療レベルでは「正常な経過という思い込み」に過ぎないことになります。
そして分娩介助した助産師にとっても、「正常な経過であった」証明には欠かすことができないデーターのはずです。


「自然なお産」「医療介入を少なくする」ことを強調すると、肝心の正常分娩のプロとしての「正常」を十分に証明できなくなるという矛盾に助産師は気づかなければならないといえるでしょう。



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