新生児の表情 5 <緊張とリラックス>

新生児にとって身の危険を感じることは、激しく泣いたり、顔の表現でそれを伝えようとしているのではないかということを前回書きました。


危険な状況か、危険を感じていない状況かの間に、緊張とリラックスという段階もあって、それを表現しようとしているのではないかというのが今回の話です。


<目を開けるー緊張>


出生直後2時間ぐらいまでの新生児は、しっかり目を開けていることがよくあります。
じっとお母さんの方を見つめたり、まるで世の中を見渡して確認しているかのような表情です。


その後は眠っていなくても目を閉じていることが多いので、「この子が目を開けたところを見たことがない」と心配されるお母さんもいます。


そんな出生直後の赤ちゃんが突如として目を開けてじっとしていることがあります。
以前も書いたようにうんちが出る前です。
「危険」と呼ばなければいけないようなゲボッとくるお腹の動きと違って、ひとりでうんうんといきめばよいのでしょう。
一人で静かに全神経を肛門に集中させている時です。
危険ともちがう緊張という表情のような気がします。


それ以外に目を開けるタイミングがあります。
哺乳ビンでの授乳をするときです。


そのあたりは「新生児にとって『吸う』とはどういうことか4」http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120215でも書きましたが、おそらくあの人工乳首の白っぽい色は、新生児にはよく見えないので危険かどうか確認するために目を開けているのではないかと推測しています。


ですから哺乳ビンで目を開けて飲んでいるのは、「おいしいと目を輝かせている」というよりもやや緊張した表情ではないかと思っています。



<目を閉じているー緊張>


新生児が目を閉じると大人はすぐに「眠った(ほっ)」と思いますが、ほとんどの場合あれはただ目を閉じているだけのようです。


抱っこしていると静かにしていますが、「眠った」と思っただけで新生児は口のあたりをもぐもぐ動かし始めたり、手足を動かして「眠っていないよ」とアピールします。


本当にこちらが「眠った(ベッドに置こうかな)」と思っただけで、こういうしぐさをして「寝てませんアピール」をするので、新生児恐るべしです。


「しまった。置こうとしていたのがばれてしまったか」と本当に眠りにつくまで抱っこして待っている間に、片手でメールをしたり新生児から視線をはずそうものなら、「ちゃんと見ていないでしょ!」とぱっちり目を開けて見られていたりします。
新生児、恐るべし。


小さな子どもを寝付かせるのは、本当に時間がかかりますよね。
こちらが「早く寝て欲しい」という思いが強ければ強いほど、相手もまた「眠ったらお母さんやお父さんがどこかへ行ってしまうのでは」という緊張感との駆け引きのような感じです。


新生児もまた同じで、深い眠りに就くまでは周囲に見守られているのを必要な緊張の時間があるようです。
そして新生児の場合は、目を閉じているのは腸蠕動が落ち着くのを待っているようです。


<リラックスと微笑み>


目を閉じているだけの状態から、まぶたのあたりがぼってりと重くなってくるといよいよ眠りに入っていきます。
口をもぐもぐしたり顔で表現していた緊張も手足の力も抜けていきます。


その少し前に、ちらちらと時々薄目をあけるしぐさがあります。
「眠くなってきたけれど、ちゃんと見ていてくれているかなぁ」と確認しているかのようです。


じっと見ていると、時々ひくひくと頬が動いて微笑みのような表情がでます。
この時に、「大丈夫。ちゃんと見ているからね」とこちらが笑顔で話しかけると、私の笑顔を真似たかのようにふわーっと笑顔になります。


このタイミングで笑顔を見せると、9割以上の確率で新生児を笑わせることに成功します。
生まれて数時間ぐらいの新生児でも笑顔になります。


相手の表情がはっきり見えているはずでもないので「真似している」わけでもないと思うので、私のリラックスした気配を感じて新生児もリラックスして笑顔になるのでしょうか。
リラックスしたら笑顔になる。これは生得の表現方法なのでしょうか。
不思議ですね。


出生直後の新生児でもこうした笑顔になるのですが、「得意満面」というのがふさわしいようなとびっきりの笑顔を見せることがあります。


それは、夕方からの長い長い腸蠕動との闘いが終わって、うんちが出たりお腹が動き終わる真夜中です。
つきあっていたお母さんも疲労困憊する頃に、「今日のお仕事終わり!」のようにきらきらの笑顔を見せることがあります。


きっとこの場合は、達成感に満ち溢れたリラックスなのでしょう。
そしてつきあってくれたお母さんへのプレゼントかもしれません。