院内助産について考えていく前にきちんと定義を見直す必要があると思いますので、今日はちょっと退屈かと思いますが定義のお話です。
でも読めば読むほどいったい「院内助産」とは何か、何を求めているのか、助産師の私でもよくわからなくなりますが。
<「院内助産」の経緯>
いつ頃から「院内助産」という表現が公的に使われてきたのでしょうか。
日本看護協会の資料によると、2004年のようです。
「院内助産システムの推進について −助産師の活動に関する用語の定義ー」
http://www.nurse.or.jp/home/innaijyosan/innai.html#yougo
本会は、平成16年度より助産師職能委員会において助産師が自立して助産ケアを行う体制の検討をし、助産師外来・院内助産の普及をしてきた。
日本助産師会(開業助産師を主とする職能団体)ではなく、病院・診療所に勤務する助産師が中心の日本看護協会の助産師職能委員会から始まっています。
その後、2008年(H20)に厚生労働省が「院内助産所・助産師外来施設整備事業」を開始し、助産師外来・院内助産を普及させるための助成を行うことで、助産師外来・院内助産は国の施策として位置づけられることになります。
同じ年に日本看護協会の重点事業として「安全で満足度の高い出産環境に向けた助産センターの設置促進」のための検討プロジェクトというものをあげているようですが、この中の「助産センター」という表現があいまいであるとしてのちに「院内助産システム」に統一されていきます。
2009年(H21)に、厚生労働科学研究が「助産外来や院内助産に関するガイドライン」を出しています。
2011年(H23)に、日本産婦人科学会・日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン 産科編2011」の中で、「『助産師主導院内助産システム』で取り扱い可能なローリスク妊娠・分娩の規定」を明示しました。
<院内助産システムの用語の定義>
院内助産システムには以下の3つの用語の定義があります。
(日本看護協会から出されている前出の資料より)
1.院内助産システム
病院や診療所において、保健師助産師看護師法で定められている業務範囲に則って、妊婦健康診査、分娩介助並びに保健指導(健康相談・教育)を助産師が主体的に行う看護・助産提供体制としての「助産外来」や「院内助産」を持ち、助産師を活用するシステムをいう。
2.助産外来
妊婦・褥婦の健康診査並びに保健指導が助産師により行われる外来をいう。
※ 外来における実践内容を示す標記が望ましいため、「師」はあえてつけない。
3.院内助産
分娩を目的に入院する産婦および産後の母子に対して、助産師が主体的なケア提供を行う方法・体制をいう。殊に、ローリスクの分娩は助産師により行われる。
※ 厚生労働省の使用した「院内助産所」も「院内助産」と同義である。
この場合の「院内助産所」は、医療法でいう「助産所」ではない。
「助産師が自立して助産ケアを行う体制」と日本看護協会助産師職能委員会が始めたように、定義には助産師が主体であることが明記されています。
では、この「院内助産システムの推進の目的」とは何でしょうか?
以下のように書かれています。
妊娠、出産を迎える女性とその家族に対して、安心・安全で快適な出産に関連したケアを提供する体制を整備する。
正直、この目的と用語の定義がどのようにつながるのかが理解できません。
「安心・安全で快適な出産に関連したケア」=「助産師主体のケア」ということを断言しようとしているのでしょうか。
大丈夫ですか?
どんなに目的を妊産婦さんの安心・安全な出産のためといっても、やはり本当の目的は「助産師が主体的に妊娠・分娩経過をみたい」というところなのだと思います。
そういう意味で、日本産婦人科学会・日本産婦人科医会が産科診療ガイドラインで「助産師主導院内助産システム」と表現しているのは、事実を正確に表現したものであるといえるでしょう。
まぁ直截的な言い方をすれば、「経過に問題のないお産には、産科医は口も手も出さないで欲しい」というところなのでしょう。
助産師の世界に脈々と続いている出産の場での主導権を求める動きなのに、「妊産婦さんのため」と表書きを取り繕おうとするから、何を言っても矛盾ともやもや感が残ってしまうのだと思います。
ということで、次回は「院内助産」に関するもやもや感を書いてみようと思います。