院内助産とは 7 <産む人にとってのイメージ>

院内助産院を選択した気持ちを公表していらっしゃるものを見つけました。


どのようなイメージがあり、何を期待されているのか少し参考にさせていただこうと思い抜き出してみます。


決して、これを書かれた方を批判したりする意図はありません。
あくまでも妊婦さんにこのように信じ込ませてしまった、助産師側の問題としてとらえる意味で引用させてもらいました。


まずは助産にかかることを決めたわけ。

とってもアットホームな雰囲気の院内助産院を見つけてからはそこに惹かれてそこで産んでみたい!!という思いが強くなっていました。

それでも、やっぱりこの助産院で生みたいと思った理由としては
分娩台を使わない、フリースタイルでの出産
極力医療介入を行わない方針
・産後すぐからの母子同室(初乳から赤ちゃんにあげることができる)
母乳に配慮した玄米菜食の入院食
・○○(*)では珍しく完全個室(しかも和室アリ)で上の子にも優しい環境
・妊娠中〜出産後まで、母体のことを考えた助産師さんたちのケアの手厚さ

(*)地域が特定されるので、伏せておきます。



前回の出産についても書かれていて、「助産院」(院内助産院)で産みたいとかかれています。

前回の出産時は、ほとんど知識がなかったとは言え、当然のように陣痛促進剤を使い、会陰切開もアリ
産んで一日後にやっと母乳ケア開始(それまではミルクを飲ませていた)
入院食も牛乳とか普通に出ていたので「アレ?」と思うこともあったのです。
まぁ、それが普通だし、私もそんなもんか〜と思ってたんですが、
小さく産まれてくる分母乳希望の私としては退院後本当に苦労しました。
その点今回は、妊娠中からいんろんなアドバイスやケアをしてもらえるし、早産のリスクを減らすためにできることも色々相談できそうだし、万が一の転院があったとしても後悔しないだけの準備ができると思ったわけです。
近所の総合病院はいつも混んでいて、なかなか細かいことまで相談できる感じではなかったので、
そういう意味でも助産院で心ゆくまで助産師さんとお話できるのはかなり安心。

<どこかで見てきた既視感・・・「助産院は安全?」>


前回のお産は医療介入があり、母乳もうまくいかず・・・、だから今回は妊娠中から助産師さんに話を聞いてもらえて、手厚いケアが受けられる助産院へ。


この方の文章の中には、「助産院」と「院内助産院」が混在して使われています。


助産院は安全?」を読んで心配だったこと。
同じことが繰り返されているように思えてしまいます。


そこには、本当に必要な安全性への問題意識が出てこないから。


「リスクも理解した上で、助産院を選択しました」
助産院は安全?」で何度もこの言葉がでてきました。
医師不在の場で、しかも医療介入に否定的な価値観を強く持つ一部の助産師の介助で母子が危険だった話が実際に紹介されていても、それを自分の身に起こる可能性を考えなくさせてしまう魔法の言葉のようでした。


それは産む人たちにそういう言葉を言わせてしまった助産師側に大きな責任があると思っています。


院内助産院の場合には「医師がいつでもいる」ことの安心感を全面に出しています。
本当でしょうか?
だったら、今までの医師が立ち会うお産が最も安全だと思います。


「自然に産むための体づくり」「お産は自然な営み」などという漠然とした表現で、真のリスクから目をそらせてしまうことに、本当はそんなものじゃないよと言えるのがたくさんの分娩を知っている助産師のはずなのですが。


助産院あるいは院内助産院をユートピアのようにとらえて、病院での出産と対峙させていく、いつの間にかそういう感覚が病院出産を選択した方たちの中にも広がっていくことが心配です。


助産院のような院内助産院ではなく>


冒頭で紹介した方は、前回早産だったそうです。


早産であれば、状況により医療介入が多くなるのは児の安全な娩出には当然必要になります。
産道での児頭圧迫によるストレスは正期産よりもより少なくする必要があるので、初産であれば会陰切開をして早く娩出させることは早産では多くあります。


早産児は、出生直後の低体温と低血糖が容易に生命の危機を起こします。
ですから、通常、保育器に入れて保温して全身状態の観察をし、低血糖予防のために血糖チェックと早期からの授乳を開始します。
多くは出生直後の母子接触や授乳よりも優先して保温が必要になります。


また早産で予定日より1ヶ月以上も早く生まれている赤ちゃんというのは、黄疸が強く出たり、なかなか出生時体重に戻らなかったり、哺乳力も弱くて直母だけでは体重が増えないことも多いので、しばらくは混合栄養にする必要もでてきます。


おそらく、このお母さんも当時はこういう説明を受けていてそれなりに納得されていたのではないかと思います。


でも気持ちのどこかに「十分なことができなかった」という前回の出産や子育てについての思いをもっている人はけっこういらっしゃいます。


だから助産師は、経産婦さんのお話を伺う時にはそういう心理を十分に汲む必要があります。
前回のお産が医学的根拠に基いて実施されていても、どこかで納得しきれていない思いが妊娠と同時にでてくるのかもしれません。
ですから、前回のお産が他院だったとしたら、その状況を直接知らない助産師側から否定的な発言をするべきではなく慎重にお母さんの気持ちを受け止める必要があると思います。


「病院のお産はすぐに手を出す」とか「母子を引き離す」と批判することで、自分たちの良さをアピールするようなことは、ぜひとも院内助産では避けて欲しいと切に思います。


気になったのは、「母乳に配慮した玄米菜食の入院食」と「入院食も牛乳とか普通に出ていた」という部分です。
もしかすると、マクロビとか一部の牛乳・砂糖批判の根拠のない「食餌療法」を勧めているのではないでしょうか?


根拠も明らかになっていないたくさんの民間療法を、早産予防、逆子予防などとして勧めている助産院があります。
それを「話を聞いてくれる」「手厚いケア」と受けとめることがないように、イメージにまどわされないようにと思います。



*「助産院は安全?」
http://d.hatena.ne.jp/jyosanin/






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