院内助産とは18 <助産師の「やりがい」が目的なのか>

前回ご紹介した「助産師からみた出産の問題点」という新聞記事の中に「問題点と提言を聞いた」とあるのですが、読んでも提言のような内容はなく、助産師の仕事の魅力が語られていて締めくくられています。


もし出産する方たちが「点滴や機械にしばられているように感じる」のであれば、あるいは「不必要な医療介入をされていると感じる」のであれば、そう思わせる原因は何でどのように改善可能か考えていくことが解決策です。


あるいは「毎回健診のたびに違う医師や助産師が関わり、分娩時にも誰が担当になるかわからないのが不安と感じる」方がいる場合、どのような説明や対応が可能か考えることが解決策になるはずです。


助産師が出産をめぐる問題点を語るときには、なぜかいつも助産師の仕事の魅力という情緒的なことを語っているだけで実際にどうしたら解決できるかという話がなかなか出てきません。


問題点が助産師のやりがいにすりかわり、医師のいないところで助産師だけで出産介助をすることを賛美することは、問題解決どころか危険なことだと思います。


<院内助産助産師のやりがい>


院内助産について書かれたものの中でもかならず見かけるのが、「助産師のやりがい」という言葉です。


厚生労働省医政局看護課の「院内助産所助産師外来の効果」では、助産師については以下のように書かれています。
「院内助産所助産師外来について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1104-3j.pdf

*健診・分娩を任されることで専門性を高めることができ、責任感とやり甲斐、喜びを感じる
*妊娠中から継続してかかわることで助産師としての視野・活動範囲が広がる
助産師としての役割を知ってもらうことが出来るので分娩時の安心につながる
*医師と何かあれば相談し協力し合うことで、業務の効率化およびリスクの回避ができる
*経済的に貢献できる

仮にこの「効果」を得るための何か新しい助産師の働き方があるとすれば、それは「院内助産助産師外来」でなくてもよいと思います。
というよりも、より安全により効果を導き出せる他の方法があるはずです。


そして、「正常な経過の妊娠・分娩」だけを担当することで、本当に助産師のやりがいになるのでしょうか?


助産師のやりがいに論点をずらして、実は医師のいない場での分娩介助を国が推進しようとしていることが、将来にわたって出産の場の安全性に大きな禍根を残すことになるのではないかということが何よりも心配です。


実際に助産師がどのように働き何が不満や不安になるのか、どのような改善策が考えられるのかについて、しばらく考えてみようと思います。





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