医療介入とは 10 <「科学的根拠に基く快適で安全な妊娠出産のためのガイドライン」>

8月21日の琴子ちゃんのお母さんのtwitterで、タイトルにあるガイドラインに対しての意見公募があることを知りました。



平成24年度厚生労働科学研究 分担研究
「科学的根拠に基く快適で安全な妊娠出産のためのガイドライン(改訂案)」の意見公募
http://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/~osanguid/index.html


この度、平成24年度厚生労働科学研究(政策科学総合研究事業)の分担研究「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査」に基き、正常経過の妊婦、産婦、新生児を対象とした「科学的根拠に基く快適な妊娠出産のためのガイドライン」の改訂をしました。
これは平成17-18年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)による「科学的根拠に基く快適な妊娠・出産のためのガイドラインの開発に関する研究」を改訂したものです。


医療介入の記事を書くために、平成17−18年度に出されたガイドラインの中の「リサーチクエスチョン(RQ)」を参考にするつもりでいました。


リサーチクエスチョンというのは、たとえば「RQ4 分娩中、始終自由な姿勢でいられるか」「RQ9会陰切開の適応は?」「RQ10 分娩時にルテーィンの点滴は必要か?」「RQ11 分娩時の胎児心拍数の観察は?」といった内容です。


このRQは、それまでの「自然なお産」を求める動きの中で「過剰な医療介入」や「管理されたお産」とまさに重なるものといえるでしょう。
そんな時にちょうど今回の意見公募のお知らせがでたので、少し考えてみようと思います。


ガイドラインの目的と領域>


今回はあまりこのガイドライン自体について細かく考えていくつもりはなかったのですが、「目的と領域」に少し気になった箇所がいくつかありましたのでご紹介しようと思います。

1.背景
産科医や小児科医を始めとした周産期医療に携わるマンパワーの医療者がいまだに不足しています。今も周産期医療のマンパワーやシステム等の体制の立て直しをすることが急務となっています。このため本来、周産期医療の中心に在るべき母子は、ややもすれば意識の片隅に追いやられています。このような状況だからこそ、子どもを産み育てるお母さんと日本を担う子どもの立場に立った質の高い周産期医療も忘れてはならないと考えます。


「本来、周産期医療の中心にあるべき母子は、ややもすれば意識の片隅に追いやられています。
それはどういう点で、そのように言い切ることができるのでしょうか?


たとえば私の勤務先の地域でも、2004年以来の産科崩壊と言われる時期から、特に看護師内診問題以降、産科施設の減少が続いています。
住んでいる地域の産院に妊娠4〜5週で分娩予約をしようとしてもとれずに、一時間以上もかかるところを選択せざるを得ない妊婦さんもいました。
勤務先でも、分娩件数は1.5倍近くになりました。


その反面、地域の周産期医療ネットワークが本当に多くの方の努力によって拡充したことは実感として感じています。


以前は、高次病院へ母体・新生児搬送する場合は医師が自分で何箇所もの病院へ電話をかけ続ける必要がありました。受け入れ先決定までに数時間を要することは普通にありました。
今は、センターにかけるとそこで受け入れ先を探してくれます。
早いと数分で決まりますし、長くても1時間程度の待ち時間で受け入れ先が決まるようになりました。
胎盤早期剥離などの超緊急では、すぐに受け入れてもらえます。


また周産期センターや高次病院へ、母親だけあるいは新生児だけが搬送になって母子分離になっても、状況によって「赤ちゃんも(あるいはお母さんも)一緒に転院してください」と、できるだけ母子分離の状況にならないように配慮してくれています。
あるいは基本的な治療が終わり次第、早めに搬送元の施設に送り返してくれます。


分娩件数が増えて忙しさは倍増しているけれども、私たちはお母さんと新生児、あるいはご家族の皆さんにできるかぎりのことをしたいと考えています。
決して「忙しくなったので、我慢して」ということはしていないつもりです。
勤務先も人件費が経営を圧迫しているのですが、安全と質の高いケアを維持するためにスタッフ数を増員してくれました。


「ややもすれば意識の片隅に追いやられています。」
具体的にどういうことなのか、きちんと示して欲しいと思います。


現状を観察する、現状をできるだけ正確に把握する、そして分析する。
それが「科学的根拠にもとづく」考え方の基本ではないでしょうか。

こういう論文が出ていると論文を比較することが「科学的」ではないはずです。


周産期医療では、「過剰な医療介入」「あたたかなお産」「自立していない助産師」など、内容が不明確なまま実態をともなわない言葉が跋扈していると思います。
それは余計な誤解・曲解を生み出し、現場で、その溝を埋めるまでにとほうもない労力を費やすことになります。
研究者の皆さんには、そういう配慮を是非して欲しいものです。


そして、私たちは「日本を担うこども」だけを大事にしているわけではありません。どの国の方が出産されるときにも、同じです。


このガイドラインは何を目的にしているのだろうと、改めて考えさせられる一文でした。



<おまけ>


以前の助産師の会陰切開・縫合に関するパブコメもそうでしたが、いつもなぜか琴子ちゃんのお母さん経由で知ることになります。


なぜこういうパブリックコメントの機会を、医療機関経由や看護協会経由で定期的に医療従事者に知らせないのだろうかと不思議です。
産院にお知らせを貼って、来院する方にも知ってもらえる機会にもなるのに。


結局は、あまり積極的には意見は求めていないということでしょうか。
あるいはできるだけ欲しい意見がくるようにしているのでしょうか。



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