助産師と自然療法そして「お手当て」 1

無痛分娩についての話はまだ続きますが、少しゆっくり考えようと思うので一旦小休止をしようと思います。


このあたりから助産関係の雑誌を紹介しながら、「冷え」について3回連続で記事を書きました。


日常の中で「体を冷やすと風邪をひくよ」とかたしかに経験則のようなものもありますし、全てがトンデモというわけではないと思います。


なぜあえて助産師の中での「冷え」の解釈について書こうと思ったのか。
それは、もしかしたらマクロビオティックに通じているのではないかという印象を最近持ち始めてるからです。


<「冷やしすぎはよくない」>


出産後2〜3日目に、乳房緊満感が強くなって熱をもつことがあります。
搾ってもまだそれほど出ないし、搾ったからといって楽になるわけでもない時期が1日ほどあります。個人差もあるので、全然平気な方もいらっしゃれば、私たちがさわろうと手を伸ばしただけで悲鳴がでるほどの張り方もあります。


今ではこういう日は無理のない程度に授乳をし、保冷剤を活用して冷やすことでトラブルは少なくなるのではないかという私なりの仮説で対応しています。


二十数年前、私が助産婦になった当時は母乳哺育に関する専門書は皆無といってよい時代でした。
あるのは主婦の友社から出版されている桶谷式の一般向けの本ぐらいでした。


先輩のやり方を見よう見まねで、「冷やしすぎてはいけない」と水でぬらしたタオルを絞ったものをあてて軽く熱をとるぐらいでした。


「冷やしすぎてはいけない」。なぜか。
まだ母乳分泌について自分自身よくわかっていなかったので、「冷やすと分泌が止まってしまう」からいけないのだろうと考えていました。


一人の助産師が、里芋湿布を病棟に導入しました。
里芋を粉末にし、生姜とかが配合されたものが自然食品のお店で購入できました。
それを水で溶いて練ったものをさらしの布などに広げて、さらに直接皮膚に付かないようにもう一枚布を合わせて、熱をもった乳房にあてるものです。
2〜3時間もすると、ドロドロだった湿布が気化熱でカピカピに乾燥して、熱をほどよい感じで吸収してくれるのです。


わーすごい、なんでそんな方法を知っているのだろうと、その助産師を尊敬してしまいました。
お母さんたちにも、びしょびしょのタオルを当てられるよりは断然評判がよいものでした。


まだ乳房用のアイスノンや小型の保冷剤などないか、あっても高価でしたし、何よりも「冷やしすぎない」という条件に合致していたのでした。


たしか桶谷式の本にもジャガイモをすりおろして小麦粉と酢を混ぜた湿布方法が紹介されていたと記憶しています。
「冷やし過ぎないように」と。


その時には、まだ助産師と自然療法のつながりというものには気づいていませんでした。
もちろん、「お手当て」という言葉にも。


助産師が勧めるお手当て>


いえ、実は助産婦学生時代に、「お手当て」の類に触れたことがあります。
実習先の助産所で、そこの助産師が「乳頭亀裂には雪ノ下が効くのよ」と、庭から取ってきた葉の表皮組織をはがして傷の部分に貼っていました。


「わーいろいろなことを知っているのだな助産婦さんは」と感心した反面、それまで自分が看護婦として働いてきた医療に対する姿勢と違うことにおおいにとまどったのでした。
「ばい菌がはいったりしないのだろうか」「傷ができて治療が必要なら医師に軟膏を処方してもらったほうがいいのではないか」「雪ノ下自体に害はないのだろうか」・・・と。


さて臨床で里芋湿布を使い出した頃、こんどはキャベツの葉をあてるキャベツ湿布というものに出会いました。
実際に使っている助産師がいましたが、すぐにおっぱいの熱で「茹でキャベツ」状態になることと、食べ物を使用することに抵抗があって、私の中では却下されました。


キャベツ湿布も「冷やしすぎない」ことが理由のようでした。
たしかに、でも冷えもしないものだと思います。
このキャベツ湿布あたりから、私自身は助産師の中に広がる「自然な○○」に疑いと距離を持ち始めました。


でもまだ「手当て」とも違う、「お手当て」というニュアンスの存在には気づいていませんでした。


2007年頃に琴子ちゃんのお母さんのブログに出会い、助産師と代替療法の親和性を考え始めてから「お手当て」とかマクロビ・ホメオパシーを知ることになりました。そしてdoramaoさんのとらねこ日誌でマクロビについて知るうちに、なんだかパズルがするすると解けていくようにこうした「冷え」とか「お手当て」とか厳しい食事も、「あれもそうだったのかもしれない」と考えるようになってきました。


<キャベツ湿布と「キャベツ原理主義」>


そんなことをまとめてこのコメントあたりから書きました。

#452
キャベツが有効と認められたら、標準的な看護技術として認められます。


ところが助産師の間では検証した結果を聞いたことがありません。


どちらかといえば、キャベツ湿布の出どころは「自然療法」などの「お手当」に端を発している印象です。
検証はせずに、不完全な理論化・体系化だけの代替療法になると、「お手当」を教えてくれるヒーラーの助産師になります。


他の看護職ではありえないほどの代替療法との親和性の理由のひとつに、ヒーラーを捨てきれない助産師の意識があるのではないかと思います。
(kikulog、「ビタミンK問題:助産院とホメオパシー」2010年7月)


ちなみに「キャベツ原理主義」は、#491のコメントへのきくちさんの返事で使われています。
言いえて妙だと思いますね。


というわけで、しばらく助産師と自然療法、特にマクロビオティック(それから整体も)の影響について考えてみようと思います。




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