助産師と自然療法そして「お手当て」2 <身近な素材でできる?>  2013年1月10日訂正あり

自然療法というと、「西洋医学的な薬を使わない」とか「体の持つ病気とたたかう力を引き出す」といったイメージとともに、「身近な素材を利用してできる」という点も人をひきつける面があるのではないかと思います。


たしかに受診するほどでないあるいは薬を飲むほどでないような症状や怪我は、自分で工夫して対応することは良いと思います。
私も風邪を引きそうと思った時点で、熱々のスープを飲んだり、体を温めたりします。


そういう意味での手当てと、「お」がついた「お手当て」とはだいぶ世界が違うようです。


ここ数年でしょうか。書店の「妊娠・出産・子育て」コーナーや図書館にマクロビオティック関連の本が増えてきたのは。
その中に書かれているお手当てについて、今日は紹介しようと思います。


<「手当て」の具体例>


「12日間集中講座 岡田恭子のハッピーマクロビオティック教室」(岡田恭子、日東書院、2006年)に書かれている「自然療法」です。
ここでは「お手当て」という言葉は使われていませんが、内容は同じものです。

自然療法
身近な材料ですぐできる、薬を使わない自然療法を紹介します。実践した人は皆とりこ!
一度でいいから、やってみてください。その威力に驚きますよ。

そして八つの方法が紹介されています。
それぞれの効能と作り方の一部分を引用します。

しょうが湿布
神経痛、リウマチ、胃痛、腰痛、肩こり、頭痛、歯痛、冷え、水虫、骨折、ねんざ、打ち身、むちうち、宿便取りの助け、出血以外の痛みすべてに効く!


1.400gのしょうがを皮付きのまますりおろして、布で作った袋に入れる。
2.水3Lを沸騰させたら80〜90度にさまして、1を湯につけて振り出す。
 (以下、略)

里芋パスター
リューマチ(*)、内臓疾患、肩こり、骨折、捻挫、痛風、痔、肺炎、虫さされ、ニキビ、しみ、喉のいたみ


1.里芋の皮をむいてすりおろす。
2.1と同量のしょうがのすりおろしを練る。
3.しょうが湿布をした後の患部に塗る。

*リウマチではなく、原文のママ

インスタント里芋パスター
やけど、切り傷、ひょうそなどに実によく効き、しかも痛みがなく、しみない。


1.インスタントの里芋粉に果実酵母飲料を味噌ぐらいの固さに練る。
2.それを患部に塗る。
*里芋粉は自然食品店に売っています。

びわ葉湿布
疲労回復

こんにゃく温罨法
疲労回復、便秘、利尿効果、風邪にも効く

豆腐パスター
38度以上の熱


1.豆腐は一時間ほど重しをして水切りをし、同量の小麦粉をつなぎに入れる。
2.1を和紙または布の上に1〜1.5cmの厚さにのばし、包んで頭に直接のせる

足浴
冷え性、肩こり


1.バケツに熱い湯を入れて、しょうが汁または自然塩を日とつまみ入れてから足をつける。

馬油
やけど、切り傷
口に入ってもいいので、唇の荒れにいい。


んー、たしかにしょうが、里芋、こんにゃくそして豆腐とか「身近な素材」ではあるのですが、しょうが400gをすりおろすなんて量も日常的ではない世界だし、「豆腐を一時間ほど重しをして」なんて料理でも面倒なのに熱が出ているときに大変そうですね。


マクロビオティックは明治時代にできた考え方のようですが(*)、豆腐なんて大量生産ができるようになった近年まではけっこう高価な食べ物だったのではないかと思います。


こうしてみると材料費と手間がかかりそうです。


面倒な人は、「お手当て」で検索してこういう通信販売を利用し始めるかもしれません。


ちょっとドキッとしたのが、馬油(バーユ)です。
出産時に使うナプキン類などを「分娩セット」として準備している施設がほとんどだと思いますが、うちで購入しているセットには業者から馬油の試供品が入ってきます。


授乳を始めたばかりの時期には赤ちゃんも浅い吸い方が多い時期とも重なって、乳首が発赤したりひりひりしたりしやすいので、保湿目的に使っています。
馬油自体は昔から民間療法的に使われてきたのだと思いますが、もう少し調べたほうがいいかと思えてきました。


<手当てを超えた治療法としての「お手当て」>


発熱やうちみとかに、手間とお金をかけることが気にならない方が上記のようなお手当てを選択するのは好き好きだと思います。


まぁ、痔に里芋やしょうがを使ったら悪化しそうな予感もしますが。
デリケートな粘膜部分ですからね。


気になるのは、さりげなく「癌」とか「リウマチ」とか「肺炎」とか、疾患名を入れて、効能を謳っているところです。
その疾患の何に効くというのでしょうか。


もう一冊、この本は次回紹介しようと思っていますが、「良い子が育つ食べ方 子育てマクロビ教室」(中 美恵、講談社、2009年)の帯には以下のように書かれています。

花粉症、更年期障害、糖尿病、癌、生理不順や不妊症、アトピー、強度の便秘、冷え症、不眠症生活習慣病で悩んでいる人のための本。


薬でなく食事で健康を取り戻したい方へ
この本のとおり実践してくだされば必ず症状は改善します。

著者の二人は医療職ではないようです。
それなのに、これだけ疾患に対して自信を持って勧められるその万能感のようなものはどこからくるのでしょうか。


そして疾患と看護を教育の中で学んできた助産師の中に、こうした内容への疑問を持たずにマクロビオティックを取り込んでいくのはなぜなのでしょうか。


「必ず症状は改善します」


大人なら自分で信じているぶんにはかまわないのですが、うまく言葉で表現できない子どもたちに代替療法を使うことにはもう少し慎重な社会であってほしいと思います。


次回は、マクロビオティックの子どもの食事に対する考え方を紹介しようと思います。


<2013年1月10日、追記>
(*)コメント欄でdoramaoさんが教えてくださったように、マクロビオティックという言葉は昭和に入ってからのものということです。
訂正いたします。
doramaoさんありがとうございました。




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