助産師と自然療法そして「お手当て」 7  <妊娠・出産・子育てとマクロビ>

自然療法や「お手当て」というのは、マクロビオティックが始まりではなく、もともとあった民間療法をマクロビオティックが取り入れたというのは、doramaoさんのコメントの通りだと思います。

お手当法はマクロビ独自のものではない民間療法ですが、それをマクロビオティックや食養が採り入れ陰陽の考え方を付け加えながら今の形にしていったのだと思います。
民間療法としては廃れていく傾向にありますが、医療機関で出される薬を好まない団体では薬に頼らない治療という事で重宝するため、その役割は大きいままなのでしょう。


私はマクロビオティックの団体内部がどうなっているのかよくわからないのですが、お手当て方法のまとめ役であったと自認されている方の本を今回からしばらく紹介してみたいと思います。


<「自然派ママの食事と出産・育児」(大森 一慧(かずえ)著、サンマーク出版、2005年)>


本の帯には以下のように書かれています。

薬にも病院にも頼らないナチュラルな子育てのバイブル

プロローグから引用します。

本書に記した「手当て法」や「食箋料理(体質や症状をよくする料理)」は、石塚左玄が提唱した理論を元に、桜沢如一(ゆきかず)先生が体系化したものに、夫と私が体験を通して見直しを加えてできあがったものです。


大森一慧氏の夫は大森英櫻(ひでお)氏で、マクロビオティックの普及団体である日本CI協会の中心的な存在だったようです。



マクロビオティック団体もいくつかに分かれているようで、その関係についてはdoramaoさんのこちらの記事が、そしてマクロビオティック内の考え方の違いは同じく後継者の主張を比較が参考になると思います。


プロローグによれば、大森一慧氏は高校3年生の時に急性肝炎で入院し、その後就職したところが「食養会」の第一人者である沼田勇院長の医院だったそうです。
その体験が以下のように綴られています。

住み込み生活が3ヶ月ほど過ぎたころでしょうか。それまでは朝寝坊で、しかも病み上がりだった私が、毎朝5時半に起き、喜々として終日働いていたのです。
自分でも、正直驚きましたが、それが病院でだされる未精白の黒いごはん(当初は「なんでこんなごはんなの」と思ったものでしたが)、つまり玄米と菜食のおかげだったと気づかされました。

奇病としか思えない入院患者さんさえ、飲食物で体質改善する方法だけで病気を完治させていました。院長の沼田勇先生は、「食養会」の第一人者だったのです。

とてつもなく重大なことが、玄米を食べることに隠されていることを実感した私は、さらに玄米食について学べる場を求めて状況しました。が、結果的には栄養学という専門分野で学ぶことに。けれど玄米の威力を実感している私にとって満足いくものでなく、時間をみつけてはマクロビオティックの普及団体である日本CI協会の会合に参加しました。そこで出会ったのが、夫である大森英櫻です。
(強調は引用者による)


大森一慧氏は1933(昭和8)年生まれと書かれていますから、ちょうど私の母と同じ世代のようです。


ところで、1970年代終りの頃に看護学生だった当時、B型肝炎が臨床的に診断できるようになったことを学んだ記憶があります。C型肝炎という疾患名もまだなく、非A・非B型肝炎としか分類されていませんでした。
肝炎がウィルスによる疾患であることを確定できるようになってから、まだ日が浅いのです。


大森一慧氏が「肝炎」と診断された当時は、確定診断方法はまだなくて、症状から類推し、おそらく安静と高たんぱく食が唯一の治療だったのではないかと思います。


ですから、高校を卒業したばかりで医療を学んだわけではないのに他の患者さんを「奇病」と感じたり、それが「玄米食で治った」と感じたのは確証バイアスといえるでしょう。


そして著者のプロフィールには栄養士とありますが、科学的な手法で築き上げられてきた栄養学ではなく、玄米にとてつもなく重要なことが隠されていると、その資格に与えられた仕事の範疇を飛び越えてしまったあたりが、助産師に通じるものがあるような気がします。


<本を書くきっかけ>


さて、大森一慧氏は「食養」に関わる本を書くきっかけについて以下のように書いています。

今回「食養」にかかわる本を、というお話をいただいたとき、常々このような子どもたちの食の現状に危機感をいだいていた私は、迷わずお引き受けすることにしました。ただ、6人の子どもを穀類菜食で育てたという実績が買われて、玄米菜食による育児相談や、講義をしてきたといえ、「陰陽」に基づいた私の体験の範囲内でしかお伝えすることができませんので、そのところはご理解いただき、おのおのの状況に応じて役立てていただければと思います。

その6人の出産・子育てについて、引用します。

やがて妊娠。「食材の選択は厳しく、少食少飲。体をよく動かす」が私の妊娠中の留意点でした。その甲斐あって、6人とも無事に自宅で出産。母乳の出はちょうどよく、赤ちゃんの体重曲線は下方でも、3ヶ月ごろには平均値に届く発育ぶりです。キラキラと輝いているわが子を見るたびに、「玄米に感謝」という思いでいっぱいになりました。

あーあ、「自然なお産」が好きな助産師と結びつくのも当たり前でしょうね。


次回から、「私の体験の範囲内」をはるかに超えた「ナチュラルな子育てのバイブル」の内容と、助産師とのつながりをみていきたいと思います。




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