前回の記事で、マクロビオティックを実践している方のブログで、「マクロビを実践したから痛くないお産だった」という内容が書かれているのを何度か見たことがあることを書きました。
「自然派ママの食事と出産・育児」(大森一慧著、サンマーク出版、2005年)の中でも、マクロビオティックと出産について書かれています。
その章の小見出しは次のように書かれています。
食をととのえて迎える出産は、トラブルも少なく、安定している
(p.38)
たしかに、バランスよい食事で体重を増やしすぎずあるいは抑え過ぎず、鉄分も適切に取り、適正な塩分摂取に抑えることは、妊娠中の保健指導として行っています。
ただ、この本で挙げられている「トラブル」と「最も大きな影響力を持つのが、お母さんの毎日の食事」に関しては、周産期医学に基づいた現在の考え方とは大きく異なることが書かれています。
それについては、またおいおい考えていくことにします。
さて、この章の最後は、次のような言葉で締めくくられています。
ですから、お産がまったく痛くない、ということはありえないのですが、それを軽くすることも重くすることもできるのが食事なのです。
やはり、陣痛を痛く感じさせない効果がマクロビオティックにはあるという考え方があるようです。
<大森一慧氏の「出産心得」>
大森一慧氏の「出産心得」を引用します。
(前略)、私が考える「出産心得」を記してみましょう。ラクラク産めるかどうかは、あなたの努力しだいです。
1.穀物と野菜、海藻の食事の確実な実践。少飲少食、よくかんで腹八分目(最初の1日だけ100回数えてかむと、最後までよくかめる)。主食60%、おかず30%、汁物10%にする。食べ物によって生かされていることに、感謝する。
2.よく働き、プラス思考を心がける。
3.出産プロセスをよく理解しておく。自分が産むという自覚をもつ。排尿調節のトレーニング(排尿の途中で何回か止める)と、腹式呼吸を練習してうまくなっておく。
4.助産師や医師とのコミュニケーションを、十分はかっておく。
5.乳房の手入れをしておく。
一見、それほど間違ったことを書いていない印象ですね。
ですから、「穀物と野菜、海藻の食事の確実な実践」を始めてしまうのだと思います。
ところで「主食60%、おかず30%、汁物10%」について、あー、出所はもしかしたらマクロビオティックだったのかと思う体験があります。
<母乳相談と食事指導>
ある機関から「母乳相談に通い続けているお母さんがノイローゼ気味になっているので訪問して欲しい」と頼まれたことがあります。
かれこれ20年近く前のこと。
母乳で頑張りたいと、桶谷式の母乳相談室に週1回通われていました。
はっきり桶谷式と書きますが、桶谷式の母乳相談室でも適切な対応をされているところも多くあると思います。
たまたまその方が通われた所が、独特の信念を持ってされていたのでしょう。
私が訪問したのは産後2ヶ月頃でしたが、母乳がたりないどころが分泌過多の状態でした。
「目覚ましをかけて、寝ている赤ちゃんを起こして3時間ごとに授乳」と言われたそうで、まじめに守っていらっしゃいました。でも2ヶ月の赤ちゃんですから授乳間隔はあいて当然です。
飲んでくれない時には「刺激が少ないと出なくなる」と搾り、搾ると刺激されてますます張り、張ると搾り・・・の悪循環でした。
そして驚いたのはその母乳相談室から、「主食を6割から7割、野菜を3割、そして残りを少しの魚にすることがよいおっぱいのためのよい食事」と指導されていたことでした。
「え?お米が6〜7割で野菜が3割っていったら、おかずはほとんど野菜ということですか?」とびっくりして聞き返しました。
「はい。自分はそうしています。でも夫には別に食事を準備しています」との答えに、二度びっくりしたのでした。
ご本人は張りすぎるおっぱいを持て余し、菜食で体重がかなり落ちて本当はひもじいのに我慢していたようです。
心身ともに体調が悪くなっていく中で夫には別の食事を準備してまで、「よいおっぱい」を出したいと思っていたようでした。
いつ頃からなのかわかりませんが、どこかで助産婦(当時)とマクロビが出会い、母乳相談に結びつきながら「主食6、野菜3」の考え方が生き残って今に至っている可能性があるのではないか、あるいはもともと「主食6、野菜3」の考え方が他にあってマクロビや母乳相談とつながりあったのでしょうか、そのあたりはよくわかりませんが。
<「出産心得」を書き換えるなら>
さて、最初に引用した「出産心得」を私なりに書いてみると以下のようになります。
1.厚生労働省が出しているこれからママになるあなたへを参照に、バランスの良い食事をとりましょう。非妊時のBMIから適正な体重増加を目標にしましょう。
2.休息を十分にとりながら、適正な運動や歩行を取り入れましょう。妊娠・出産には思わぬこともありますが、全てが妊婦さんの努力で解決できるものではないと受け止めるプラス思考がよいでしょう。
3.出産プロセスを理解することでお産の不安を少なくすることができますが、お産の経過は妊娠中の努力で解決できることだけではないことがたくさんあります。
4.ですから医師や助産師とよく相談しながら、その時々でお母さんと赤ちゃんにとってよいと思われる選択をするとよいでしょう。
5.基本的に妊娠中の乳房の手入れは不要です。出産後、赤ちゃんの状況に合わせながらゆっくり授乳に慣れていけば大丈夫でしょう。
次回は、マクロビオティックの安産志向にある考え方をみていきたいと思います。