助産師と自然療法そして「お手当て」19 <マクロビとアトピー性皮膚炎>

穀物菜食の育児をすれば(予防接種の適応になるような)感染症は発病しても軽くすむか、発病しないという体験をもっているのが普通」と信じて予防接種を受けさせなかったとしても、他の人たちが予防接種をすることでそういう子どもたちを流行から守ることはできるでしょう。


ところが、アレルギー性疾患に関してはそういうある意味他力本願な方法は通用しないことになります。


今回は「自然派ママの食事と出産・育児」(大森一慧氏、サンマーク出版、2005年)に書かれているアトピー性皮膚炎の内容を見ていこうと思います。


<マクロビのアトピー性皮膚炎についての考え方>

Q. アトピー性皮膚炎だと除去食をしなくてはいけませんか?


除去食を、私はすすめません。それよりも、穀物と野菜、海藻の食事を正しく実践することをおすすめしますアトピー性皮膚炎も、今までの食事の誤りの結果です。食生活や生活習慣を変えること以外に、完治する方法はありません。

Q. 顔、背中、手、足など、アトピーが出る場所と、その原因となる食べ物との関係はあるの?


背中や手足のアトピーのほうが、顔にでるものより陽性の症状で、動物性食品が原因です。顔の中でも、まゆ毛から上は甘いものや果物と関係があり、まゆげと口の間は、肉、乳製品と、そして口から下、あごにかけては魚類と関係があります。
いずれにしても、本来人間が必要とする米、麦、野菜、少量のごま油、自然塩、自然醸造のみそとしょうゆでは、アトピーは一切出ません。

Q. 子どものアトピーがあまりにひどいので、毎日憂鬱です。薬を塗るとアッという間に皮膚がきれいになるので、ときどきそうしてしまいたい気持ちになるのですが、塗り薬はどれほど害があるのですか?


ひと塗りで肌はつるつる、かゆみから解放され、夜も熟睡してくれるため、つい薬に頼りたくなる気持ちはよくわかりますが、薬を使用すれば、長い目で見て症状の重症化につながるのです。
体内に不必要な物質(酸化血)が蓄積すると、体は生命維持のために、自己治癒力による排出を始めます。これがアトピー性皮膚炎です。本来肝臓や腎臓が健全であれば解毒・排泄されるのですが、誤った食生活によってそれらの機能が弱まり、通常の代謝では排出しきれなくなります。それを春から夏にかけては皮膚炎として毛穴から、冬はぜんそくの形で排出しています。
ここで薬を使用するということは、排出を妨げることになり、毒素は体内に蓄積されるだけでなく、薬の化学物質が薬害としてプラスされます。薬の有効期限(一週間前後)が切れると、薬がまたアレルゲンとして働き、症状は重くなるのです。

ここまで自己流の解釈をしたものを出版するのはすごいと思います。


<マクロビのアトピー性皮膚炎への対応>


上記の本の「家庭でできる自然の手当てと食事法」に書かれているアトピー性皮膚炎の部分を紹介します。

アトピーは、「抗原抗体反応」といって、体内への異物の侵入を防御するシステムによって起こる症状、「抗原」とは、体にとっての異物のことで、アレルギーを起こす元になるもので、肉、卵、大豆、乳製品、花粉、動物の毛、環境ホルモンなどさまざま。そして「抗体」とは、外から「抗原」が入ってきたときに、自分を守るために白血球がつくる物質をいう。アトピーはこの「抗原」と「抗体」の反応が激しく出たものと考えればよい。

ところどころ?の部分はありますが、大きく間違った解釈でもないと思います。この説明と、先にあげた「酸化血」とか「薬害」とかがどうつながるのかがわかりませんが。

このようにアトピーの要因はいろいろ考えられるが、特に毎日の食事が大きくかかわっている。現に食事内容を変えることで、症状が治癒する例はとても多い。
(中略)
特に皮膚を丈夫にするのは食物の皮の部分なので、精白した穀物や皮をむいた野菜ばかり食べていると、皮膚に必要な栄養素が足りなくなるので注意が必要。

「除去食は不要」と言いつつ、マクロビ自体が乳製品、卵などのアレルゲンになりやすい食品をとらないわけですから、マクロビで良くなったと感じる方もいることでしょう。
ただし大豆も醤油に使う小麦粉も、そして米もアレルゲンになりますし、人工的だからアレルゲンになるわけではなく自然な物も同じアレルゲンですから、こうした自己流の解釈は危険だと思います。



医学教育を受けたわけでもない大森一慧氏が、ここまでアレルギー性疾患に踏み込んだ発言をするのは、最初に働いた医院の院長、沼田勇氏の影響が大きいのかもしれません。


その沼田勇氏の薬剤忌避について紹介したdoramaoさんの記事「マクロビと食養の薬剤忌避」と、同じく身土不ニ・風土食論・一物全体食論についての「病は食からー食養と謂う名の病?−」が参考になると思います。(丸投げ、すみません)



<アレルギー性疾患と代替療法


でも「マクロビをすればアトピー、ぜん息などアレルギー疾患は出ない」と言い切ってもらいたい方々がいらっしゃるわけで、そういう方たちはほんのちょっとしたきっかけで入り込んでしまうのだと思います。


そして、勧める側も取り入れる側も、ひとつの代替療法だけでなくホメオパシーなどさまざまなものを取り込んでいることも共通しているのではないかと思います。


以前、小児科との混合病棟に勤務していた時に、ぜん息発作で毎年のように入退院を繰り返すお子さんとご家族が何組かはいらっしゃいました。
特に治療を拒否したり、特別な代替療法を取り入れている方はいらっしゃらなかったのですが、もしかしたら私たちが気づかなかっただけで、自宅ではいろいろなことを試していらっしゃったのかもしれません。


代替療法と標準的医療のはざまで悩んでいる方がたくさんいらっしゃるという社会的問題を、看護の問題として取り上げられた記憶はほとんどありません。


実は大きな社会問題であり、どのような看護が必要であるのか対応が求められている部分ではないかと痛感する昨今です。





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