代替療法について調べていると、代替療法を実践されている方々の体験記を読む機会が増えました。
あくまでも印象ですが、ひとつの代替療法を厳格に実践し続けるというよりは、「ゆるふわ」といろいろなものを適度に取り入れているという方が多い印象ですね。
助産師の世界も同じで、なんだかマクロビ的な考えのようでそうでもないものが、ゆるゆるとつながりあっている感じです。
今回は母乳哺育について一般向けに書かれた書物の中の食事について、みてみようと思います。
医師の監修となっているので、助産師だけではないのですが。
<「桶谷式 母乳で育てる本」>
「桶谷式 母乳で育てる」(桶谷式乳房管理法研鑽会/編、小林美智子/監修、主婦の友社、平成14年)から引用します。
「おいしい母乳を飲んでいる赤ちゃんの特徴」が書かれています。
・全体的なバランスがよい
・からだが引き締まり、いわゆるかた太りの体格
・顔色がよい 顔がしまっている
・あごやこめかみの筋肉が発達している
・頭の形がよい
・動きが機敏で発達が早い
・胃腸が丈夫で下半身がしっかりする
・病気になりにくい、かぜをひいても回復が早い
・情緒が安定して機嫌がよい
・表情が豊かで、よく笑う
これを読むだけで私は胸がズキンとうずくのですが、今回は食事に焦点をあてることにします。
「おいしい母乳をたくさん出すためには、どんなものを食べたらよいのでしょうか」という質問に対して、以下のような説明があります。
(前略)、しかし何を食べていても、人間は母乳を出しつづけ、脈々と子どもを育ててきました。
人間は昔から、その土地でとれるものを十分食べることができれば、ちゃんと母乳が出て、赤ちゃんを育てることができるのです。むしろその土地以外でとれたもの、またその民族が昔からあまり食べてこなかったような食べ物を急にたくさんとるようになったときに体に異変が起きやすくなったり、トラブルが起きたりしています。
マクロビの身土不ニに似ている考え方ですね。
日本人は長い間、米を主食とし、小魚や野菜を中心とする食生活を送ってきました。しかし現代の食生活を見てみると、急速に欧米型の食事に近くなり、ここ50年間に動物性脂肪と動物性蛋白質の摂取量はそれ以前の3〜5倍に達し、パン、牛乳、乳製品、肉類、食肉加工品、油脂類、砂糖を多くとるようになってきました。その結果、日本人の伝統食であるご飯を中心にした和食であれば見られない肥満や心臓病、乳がん、大腸がんなどがふえています。
具体的に桶谷式がどのような食事を勧めているか、ポイントだけ引用します。
桶谷式では、毎食ご飯をたくさん食べることをすすめています。
さあ、授乳中は「朝、昼、夕のご飯は2杯ずつ」を目標に、もりもり食べましょう。
母乳中のタンパク質はお母さんの食べた食事の影響はあまり受けないと言われています。栄養状態の異なるお母さんの母乳中の蛋白質を調べても、ほとんど一定です。したがって授乳中に特別たくさんのタンパク質をとる必要はありません。
全体的にそれほどトンデモな内容はないのですが、「伝統食である和食」に重きを置いている印象です。
でも、「産後の食事はご飯と塩・味噌のみ」「副食物は血にさわる」といった「これまでの誤った習慣の改善」に近代産婆や戦後の助産婦が苦労をしていたのもそれほど遠い昔ではないのです。
「伝統食の和食」はいつの時代の、どのような食事なのでしょうか。
<「新 母乳育児なんでもQ&A」>
こちらは同じく2002(平成14)年に婦人生活社から出版された、「日本母乳の会編」の本です。
やはり「和食」が強調されています。
Q. おっぱいがよく出るような食事はあるのですか?
あります。日本に住んでいるみなさんは和食が基本です。特に根菜類はかかせません。中でもごぼう、れんこん、にんじん、大根は必須です。ごぼうの種はおっぱいを出す薬として使われているくらいです。ごぼうは基礎体力をつけます。れんこんは気力を、にんじんは血を養い、大根は体をきれいにします。
菜っぱ類や海藻はおっぱいをサラサラにして出をよくします。でもサラダは体を冷やしますから、できるだけ火を通すことです。
なんだか呪術的な表現が多いですね。
こうやって、「身土不ニ」「伝統的な和食」「お米がよい」「魚がよい」「乳製品、肉類、砂糖は控えたほうがよい」というママクロビ的な考えがじわじわと母乳育児の本や助産師によって浸透していくのかもしれません。