助産師と自然療法そして「お手当て」22 <マクロビベビー>

マクロビベビーという言葉があることを知ったのは、2010年の頃でした。


妊娠中にマクロビ食を実践して生まれた赤ちゃんのことらしいです。
検索すれば、この言葉を使っている人たちが実際にいることもわかります。


doramaoさんの「マクロビとホメオパシー 共通点や類似点」へ、私が書いたコメントです。

「マクロベビー。内側から光を放っているらしい。胎芽時代の純マクロビ育ちの妹たちは二人とも言いようのないかわいい子だった。何が違うのか?細胞レベルから生命力のある穀物と野菜ばかりで体ができていること」
卵子精子でなく、「胎芽時代から」というのは正しいかもしれないですね。
このかた3人のお子さんのお母さんのようで、一人目の時はマクロビ食ではなかったそうです。
マクロビ食になってから妊娠出産した第2子、第3子はとてもかわいい・・・と。
一番上の子どもの気持ちを考えると泣けてきます。
お母さん、それはマクロビのおかげでなく、お母さんが育児の体験をして余裕があるから二人目をかわいいと思えるのですよ。

このコメントを書いた当時、行けるものならすぐに行って、一番上の子をギューッと抱きしめたいと思いました。


<親は特別な存在>


数の子どもが生まれれば、親も心の中で「どちらかの子の方がかわいい」とか「気が合う」と感じることは仕方がないことかもしれません。


たぶんそれでも自分の子ども時代の何らかの感情が、それをあからさまに表現することにブレーキをかけているのではないかと思います。


子どももまた、親のそういう感情をそれとなく察してしまうものです。
「私より○○ちゃんのほうが親にとってはかわいいんだろうな」と。


でも見放すことなく成長に必要な物事を整えてくれれば、その忍耐力が親の愛情なのだと、いずれは気づくものではないでしょうか。
親は完璧な人間ではなく、未熟な人間が親になっていくことがわかる年代になれば。


でも「△△をしたから、この子はかわいい」と、条件まではっきりつけて言われてしまったらどうでしょうか?



△△の部分はいろいろなものに言い換えられるでしょう。
(病院ではなく)助産院や自宅分娩で産んだから。
帝王切開や吸引分娩ではなく)自然なお産だったから。
(ミルクではなく)母乳だけで育てたから。


それは子ども自身の努力で変えられるものではないことです。
親の価値観でしかないのですから。


「△△をしなかったから(かわいく思えない)」と親に思われていることを知った時の、子どもの絶望感を想像するだけでも泣けてきそうです。
そしてその絶望感は憎しみとなって、心に残り続けるかもしれません。


<生き方を教えてくれるかもしれないけれど差別もまた・・・>


助産師が代替療法を取り入れ妊産婦さんに勧めることに対して、私が批判を続けるのか。
なぜ妊娠・出産・育児周辺にあふれる言葉について、あれこれと批判的な記事を書いているのか。


最初は、わが子にできるだけよいことを・・・という純粋な思いでも、のめり込んでいくうちに自分の達成感のほうが強くなったり、強固な信念へと変化しやすいのかもしれません。


あるいは、一人の人間を育てることの責任の重さから、「こうすれば病気にならない」とか「いい子に育つ」と言い切ってくれるものを信じこみやすいし、不安を理解してくれる温かい存在だと認識しやすいこともあるでしょう。


その点、医療の根幹である医学はある意味冷たいと感じるのもしかたがないかもしれません。


時には正常と異常に境界線を引き、診断名をつけなければいけない場面もあります。
そして精神的サポートもしますが、医学は生き方までは教えてくれません(*)。


だから代替療法が生き続けるのだろうと思います。


そしてわかりやすく温かい存在として入り込んだ先には、人とは違う自分たちという信念が結果的に差別的な気持ちを生み出してしまうこと。
特に妊娠・出産・育児であれば、差別の意識はわが子に向かっていく危険性があります。


助産師は本来、親が自分の未熟さを乗り越えてどの赤ちゃんも大事に育てられるように援助する側であると思います。


それなのに、「人とは違う」という意識を出産方法、授乳方法あるいは育児の中に積極的に取り込み、自らおいしい母乳で育っている赤ちゃんの特徴のような差別化を図ることに疑問も批判もない日本の助産師の世界はやはりおかしいのではないかと思います。


栄養的な偏りとともに、子どもたちの人権に無頓着な危険な思想があることを見抜けずに助産師が広げてしまった点が、助産師とマクロビにおける問題点だと思います。


そして、マクロビの関連商品の販売促進のための広告塔として助産師の資格が利用されているのはホメオパシーの時と同じといえるでしょう。



(*)これはこちらの記事で紹介した、菊池誠氏の「科学と神秘のあいだに」(筑摩書房,2010年)の中に書かれている「科学は身も蓋もない」「科学は『生き方』なんて教えてくれない」を真似させていただきました。
すみません。




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