私自身の中にも「人とは違う」という自意識の強い部分があって、そのために人生経験を豊かにできた面もあれば、今思い出すと赤面する体験もあります。
今までの記事の引用で使用してきた大森一慧氏の「自然派ママの食事と出産・育児」(サンマーク出版、2005年)ですが、サンマーク出版といえば自己啓発本が多い出版社ぐらいの認識でした。
今回ふと、この出版社の詳細をみてみようとHPを見てみたところ、いろいろと記憶が蘇ってきたのでした。赤面の・・・。
「母原病(ぼげんびょう)」とは、母親の態度や考え方が原因で子どもが病気になるという主張です。
ありえないこともない・・・と思わせてしまう絶妙なタイトルです。
これを世に広めた出版社がサンマーク出版であったことを、今回マクロビについて調べている中で知りました。
サンマーク出版の<沿革>より
1981(昭和56)年 (株)サンマーク出版に社名変更
『母原病』(久徳重盛著)シリーズが80万部を超えるベストセラーとなり、母原病ブームを巻き起こす
これを読んで、私自身が「食養」に接近していた記憶が蘇ってきたのです。
この本が出版されて間もない頃、新聞でこの久徳重盛氏の講演会があることを知って出かけたのでした。
会場は数十人の小さな研究会という感じでしたが、母原病と食事について考えるという主旨でした。うっすら残っている記憶では、「食養」という言葉を聞いた記憶があります。あくまでも記憶ですが。
さて、母原病とは何だったのでしょうか。
それは、ぜん息です。
つまり母親の育て方によって、ぜん息が起きるというものです。
いわゆる過保護が原因だと。
当時私は外科系病棟に勤務でぜん息を持つ患者さんとはほとんど接することもなく、現在に比べてぜん息はそれほど多い疾患ではなかったので、今考えるとなぜ「ぜん息」にそれほど関心を持って研究会に聞きにいったのか自分でも謎です。
1970年代から80年代初頭、当時はアレルギー性疾患が徐々に知られ始めた頃でした。食物アレルギーについても厳しい食事制限や除去食が主流だったことはこちらの記事で紹介しました。
看護学生の授業でも当時アレルギー性疾患はマイナーな科目で、教科書も薄く、ぜん息に至っては「ぜん息で死ぬ人はいない」と授業で内科医師から習った記憶があるぐらいです。
卒後、しばらくして「ぜん息で死ぬこともある」という認識になりましたが。
外科系病棟で勤務し始めた新卒の時に、術後の患者さんに抗生物質の点滴を始めた直後にアナフィラキーシーショックを起こし、すぐにICUに移して一命をとりとめたという経験をしました。
新卒の私だけでなく先輩たちも「こんな怖いことは初めて」と言っていたくらいですから、当時は病院でもまだ薬剤アレルギーさえ少なかったのかもしれません。
その体験が、アレルギー性疾患への関心となり、母原病の講演を聞きに行く動機になったのかもしれません。
それとともに、同じ職場で働いている同期とは違って勉強熱心な自分という自意識からくる行動だったのかもしれないと、ちょっと赤面するのです。
勉強の方向が間違っていたわけですから。
<バイブル商法とは>
なぜ、私はまじめに「母原病」の講演を聞いてしまったのでしょうか。
ひとつは大手新聞社の生活面に、その研究会主催の講演会が掲載されていたことで信用したことが理由のひとつです。
当日の会場では、医師や栄養士という医療従事者の参加者がけっこういたことも信用する理由になりました。
そして今はまだ医学ではよくわかっていない問題に取り組み解明した医師と、それを医学界に先駆けて理解している先見の明のある人たちへの尊敬の念が、なんだか変だなと感じる気持ちを上回ってしまったのだと思います。
当時はまだ「バイブル商法」という言葉さえ聞かれなかった時代でしたから。
バイブル商法とは、健康食品や代替療法に関して、その効能、理論、体験談を書いた本(通称「バイブル本」という)を実質的な広告にして薬事法の規則を抜けようとする商法のこと。
ある特定の健康食品や民間療法行為で完治したという内容の本を出し、その本の巻末やしおりなどに健康食品の販売会社や医療機関、民間療法の連絡先が記載されている。その連絡先はその本の著者や出版社と関係が深いことが多い。またその健康食品はその効果は広く認められているとしても、劇的な効能を期待させるのには無理なことが多い。効果な自由診療(保険外診療)や研究・実験段階の医療であるものも多い。根本的な治療法がなかったり、難治性や末期の病気で苦しんでいる人を対象としたものが多い。またその本の新聞広告なども宣伝を兼ねている。
さて、サンマーク出版の企業理念は「天地自然の理」とあり、HPには「エネルギー」「転写」「創造」「バイオリズム(波)」などが書かれています。
また出版物を見ると、船井幸雄氏、比嘉照夫氏や江本勝氏の名前があります。
方向性ははっきりしていると思います。
「自然派ママの食事と出産・育児」の巻末には、「自然分娩ができる菜食対応の産院と母乳指導&おっぱいケアの施設」に助産所のリストが使われています。
そして「健康家族に欠かせない食品&生活用品の購入先一覧」もあって、マクロビ系商品の販売ルートが紹介されています。
これがバイブル商法というものなのです、社会問題としての。
またマクロビの一組織である日本CI協会のHPには、「健康相談・病院情報 食事や自然医療を行っている医療機関リスト」のページがあり、助産所名も掲載されています。
ホメオパシーの時もそうでしたが、助産師個人がその民間療法に関心を持つのは自由なことです。
私たちの国家資格の範疇ではない民間療法を他人に薦めたいのであれば、助産師の資格を出さずにすれば問題はないかもしれません。
ただし、助産師の資格を出して民間療法を他人に薦めたときに、それは「バイブル商法」という社会問題に自ら踏み込んでしまったことを自覚する必要があります。
そして広告塔として使われてしまっていることも。
今思えば、あの母原病の講演会は食養とかマクロビへの一歩だったと思います。
なぜ私がそれ以上踏み込まずにすんだか。
とっても単純な理由です。
なんだか「食養」という雰囲気が辛気臭かったからなのです。
「マクロビオティック」だったら、もしかしたら「おしゃれ!」と思ったかもしれません。
長々と続けてきたマクロビオティックについては、一旦ここまでにします。
doramaoさんの力作エントリーがなかったら、とても書こうという気にはなりませんでした。
あらためてお礼を申しあげます。
そして皆さま、あるいはマクロビについてもっと知りたい方は「とらねこ日誌」のマクロビ関連エントリーを是非お読みくださいね。(最後まで思いっきり丸投げ、すみません)
なぜマクロビで牛乳や砂糖が批判されるのか、マクロビワールドがよくわかると思います。