2012年に日本看護協会から出版された「新版 助産師業務要覧 第2版」では、超音波画像診断機器は「胎児位置、大きさなどの診断」のために、助産師独自の判断で実施できる「助産業務に付随する行為」(保助看法第37条)という解釈が以下のように書かれていることを、前回の記事で紹介しました。
2.胎児位置、大きさなどの診断
レオポルド触診法による妊産婦診査は助産師の診査技術として重要であるが、近年超音波診断機器の普及により、より確実に診断できるようになった。
これら超音波診断機器の活用も、助産に付随する行為としてその技術の習得を図ることが重要である。
胎児位置や大きさの確認のために、本当に助産師が独自の判断で超音波画像診断機器を取り扱う必要があるのでしょうか?
<胎児位置の確認・・・頭位の確認>
経膣分娩か帝王切開か、分娩方法を決定するのに重要なことが胎位の確認です。
まれに横位もありますが、通常は頭位か骨盤位(逆子)かどうかの確認です。
「周産期医学必修知識 第7版」(『周産期医学』編集委員会編、東京医学社、2011年)の「骨盤位」(p.298)の「診断(鑑別診断)」には以下のように書かれています。
まず、外診で児頭を子宮底部に触知する。さらに超音波断層法で胎位を確認し、先進部により殿位・膝位・足位の鑑別を行う。ただし、分娩進行時など子宮口開口後では先進部位がどの部位であるかは、内診が最も正確に診断する手段である。
胎位の診断方法として「まず、外診で児頭を子宮底部に触知」としています。
超音波画像診断機器を診断に使用するのは、胎位の確認ではなく、骨盤位の場合に足が先進しているのか臀部が先進しているかの「鑑別」としています。
また、骨盤位の「頻度」は以下のように書かれています。
妊娠中期には約半分が骨盤位であるが、胎児の自己回転により次第に減少し、骨盤位分娩の頻度は全分娩の3〜5%である。
つまり、助産外来で超音波画像診断機器で骨盤位を「確実に」観察するほどの臨床的意義はないともいえるでしょう。
助産師だけで分娩を取り扱う場合、骨盤位でないかどうか胎位の確実な確認が37週前後に必要になりますが、それでも「まずは、外診」であり、さらに内診で先進部を確認することで十分だということになります。
レオポルド触診法と内診は助産師にとって重要な技術であり、そのふたつをもって十分に胎位の確認はできることなのです。
<胎児の大きさ・・・胎児発育不全の発見>
胎児が十分に胎外生活に適応できる能力を持っているかどうか、胎児発育不全がないかどうかを確認するために、胎児の大きさを測定しています。
前述の「周産期医学必修知識 第7版」の「胎児発育不全」(p.394)では次のように書かれています。
胎児は細胞増殖期、器官形成期などの形態的発育期と各臓器の機能的成熟期を経て、胎外生活に適応する能力を獲得する。胎児発育不全(FGR)はこれらの過程が、何らかの疾患や状態により障害される一種の症候群と位置づけられる。したがって、単に体重や身長が小さいだけでなく、種々の臓器の機能的未熟性も問題となり、正常胎児に比べて新生児罹患率や死亡率が増加する。
超音波画像診断機器で胎児を検査しているのは、ただ大きさだけではなくこの「種々の臓器の機能的未熟性」に関しても同時に検査しているわけです。
助産外来ではせいぜい胎児の大きさ、胎児推定体重の計測ぐらいではないでしょうか?
この胎児発育不全の「診断と分類」には、次のように書かれています。
胎児発育不全のスクリーニングは通常の妊婦健診での子宮底長測定が推奨されている。また、診断には超音波測定により児体重を推測する。
そう、まずは子宮底長の測定なのです。
正確に子宮底長を測定すること、その上で「週数よりは小さい可能性」「子宮底長の増大が止まっていて、胎児が発育していない可能性」をスクリーニングすることが、助産師にとっての「異常の早期発見」であり「注意義務」であるといえるでしょう。
さらに必要があれば、医師が超音波検査で確認し診断する、それで十分ではないでしょうか?
そして不必要な医療介入を少なくすることにもなります。
<誰が何を求めているのか?>
医師でさえ骨盤位は「まずは外診で児頭を触知する」、発育不全は「子宮底長の測定が推奨」という診断方法が基本なのに、助産師が超音波画像診断機器を使うことを「当然、助産業務に付随する行為」であると主張する人たちは何を求めているのでしょうか?
分娩監視装置を使用することで母子の安全性が飛躍的に改善されることをなかなか認めず、「トラウベこそ助産師の誇り」と言っていた人たちの方が超音波画像診断機器を積極的に取り入れているように感じるのは気のせいでしょうか?
「病院はすぐに医療介入をする」、だから医療処置をしない助産師のお産の方がよいと主張していた人たちのほうが積極的に超音波画像診断機器を取り入れているように感じるのは気のせいでしょうか?
胎位と胎児の大きさを確実に観るには、手とメジャーがあれば十分なのですけれどね。
一見「操作が簡単で、画像の読影が容易」(「助産師業務要覧」2008年版)でも、「所見、データーの判読を誤れば誤読である」検査です。
助産師にすればただ胎児推定体重(胎児の大きさ)だけを測定しているつもりでも、妊婦さんやご家族にしたら胎児の発育を総合的にみて異常の早期発見をしてくれていると思うことでしょう。
それに応えるだけの知識や技術はあるのでしょうか?
いえ、それよりもレオポルド触診法と内診の技術をきわめていくことに助産師としての誇りを持ってよいのではないかと思います。