出生後の新生児は、通常、顔を左右どちらかに向けた姿勢をとっています。
これも統計がないかずっと探しているのですが、見つかりません。
案外、その左右どちらに向いているほうが多いのかという割合は調べられていないのかもしれません。
私の見た感覚的なものとしては、右向きと左向きの割合は9:1ぐらいでしょうか。
ごくごくまれに真上を向いた新生児もいます。
いずれにしても、ほとんどの赤ちゃんが左右どちらかに顔を向けています。
<変形性斜頚>
新生児のこの左右どちらかに向いた状態を、医学的には変形性斜頚というそうです。
赤ちゃんの『頭のゆがみ』とは?で紹介した、「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル 第2版」(『周産期医学』編集委員会編、東京医学社、2009年)から引用します。
病因と病態
頭蓋の変形の大半は、分娩時、狭い産道を通過する際の圧迫による変形、ならびに胎内や出生後の向き癖、斜頚など体位による変形斜頚といわれているものである。
一方、病的なものとしては頭蓋骨の骨縫合早期癒合症に伴う変形があげられる。
(以下、略)
臨床症状と経過
胎内あるいは出産時に生じた変形性斜頚は数ヶ月以内に自然に治癒していく。また生後の向き癖による軽度の変形性斜頚も頭部を起こすことが多い時期になってくると頭部への外力が減り徐々に修正されてくる。(以下、略)
つまりは、病的な変形性斜頚というのはごくわずかで、大半が病的ではないし様子を見るだけでよいということですね。
<右向きの多い理由はなにか?>
右向きになる新生児の割合がどれくらいか、またどうして右に向くのかについて書かれたものを目にしたことがないので、あくまでも私の観察と考えです。
昨日書いた「胎向」、子宮胎内で胎児が母体の左右どちらに背中を向けていたかと関連があるのかとも思ったのですが、あまり関係もないような気がします。
分娩時に児頭の先進部は圧力がかかるので、出生直後に産瘤(さんりゅう)というこぶができたり、1〜2日たってから頭血腫(ずけっしゅ)という内出血でふくらみができたりします。
この産瘤や頭血腫は、たとえば第1胎向だった新生児なら頭頂部の右側にできます。
でも、産瘤や頭血腫が左側にできた第2胎向の新生児でもやはり右向きになるので、関係はないのかもしれないと思っています。
なぜ、新生児の多くは右向きになるのでしょうか?
<なぜ、左右のどちらかを向くのか>
これもまた、説明されたものを目にした記憶がありません。
ですから、あくまでも私の考えです。
ひとつは、溢乳(いつにゅう)が多い時期の窒息予防になっているのではないかということです。
胃結腸反射や赤ちゃんの眠りと行動4あたりで書きましたが、新生児にとっては腸蠕動に伴って胃内容が逆流しやすくなっています。
最初は溢乳が起きそうになると激しく啼いたりしてサインを送っているように感じます。
ところが1〜2週間もすると、睡眠の途中で溢乳が起きそうになっても「こんなのは平気。お母さんに知らせなくても大丈夫」という感じで、突然ゲボッと吐いてお母さんをあわてさせます。
大量に溢乳して服への被害は甚大ですが、だいたいは顔を横に向けているので、案外うまく吐いてむせこむことはないようです。
もうひとつは、足の動きで書いたように、寝返りをうつために備えられたものではないかと思えるのです。
右向きの新生児は、左側の足をしきりにつっぱて大きく蹴ろうとしているような動作をよく見ます。
そのうち、顔の向いている右へ右へと体を移動させて、右向きにバタンと寝返りを打てるようになる・・・ような気がします。
新生児の変形性斜頚、案外と新生児にとっては『自然体』なのではないかと私には思えるのです。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。