新生児のあれこれ 23  <面会についての決まりごと>

生まれたばかりの赤ちゃん。
夜中でもいてもたってもいられなくて駆けつけてくれるご家族の方もいらっしゃいます。


上の子たちも、うまれてくる妹や弟のために頑張って起きて待っていてくれたりします。


できるだけご家族に赤ちゃんが祝福してもらえるような時間を大事にしたいと思っています。


1990年代初頭、まだ夫立会い分娩でさえごく限られた施設しかしていない時代でしたが、子どもの立会いもしていた病院に勤務していました。


1990年代までは、出生直後に新生児は「感染予防のために新生児室に預かる」という方法が一般的でした。
分娩室でお母さんだけが赤ちゃんを抱っこし、廊下で待っていた夫にはスタッフが少しだけ赤ちゃんの顔を見せて新生児室にすぐに預かっていた施設が多かったのではないかと思います。


まぁ、1990年代初めの頃はまだまだ男性側も「しぶしぶ立ち会う」、できれば立ち会いたくない男性がほとんどでしたし、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこするように勧めても断わられる方もたくさんいらっしゃいました。



徐々に夫立会い分娩や子ども立会い分娩が増えて、生まれた直後の新生児は母親とスタッフ以外の人にも抱っこされるようになりました。


さらに入院中いつでも面会にきたご家族が新生児と一緒に過ごすことができるようにと、規則を緩める施設も出始めました。


それで何か問題になったことは耳にしなかったので、私の勤務先でも一時、入院中にもお父さんや上の子が赤ちゃんと過ごすことができるようにしてみました。


ところが、退院して数日以内に上の子の風邪やRSウィルスに感染して入院になった赤ちゃんが、たまたまですが続きました。


この時には、お母さん達が「赤ちゃんに熱がある」と早い時期で連絡をしてくださったのですぐに治療を開始することができましたが、新生児の場合、容易に敗血症や髄膜炎を起こす可能性があります。


二人目以降の経産婦さんの場合、家に帰れば上の子が赤ちゃんにいつでも濃厚に接する機会があるわけなので、上の子から新生児は感染症をもらうのはしかたがないことです。


ただし、入院中に上の子との接触が原因で感染症を起こした場合、他の新生児への感染予防の対策を考える必要がでてきます。


結局、上のお子さんは新生児と接しないで、お母さんとだけ面会をするという方法で様子を見ています。


<面会に関する感染対策>


そのことがあってから、新生児のいる産科病棟で感染予防対策として面会の規則はどうなっているのだろうと気になっているのですが、まだ明確に標準化されたものはなさそうです。


他の施設のHPを見ると、12才以下あるいは15才以下の子どもは新生児の面会どころか来院も不可としている施設もありました。
また、小児感染症の予防接種を受けていない児は来院不可という施設もありました。


新生児のいる病棟の感染予防の点からすると、母親の入院中に子どもを来院させないという方法が最も安心とはいえます。


でも子供たちの気持ち、赤ちゃんという存在を受け入れていく心理的な過程、あるいは母親との関係を考えるとどうなのだろうとも思います。


ネット上で「ASP感染管理相談室」というサイトに「産婦人科領域の面会制限について」という質問と回答がありました。


その中では、米国小児科学会が「産科病棟、小児科病棟、NICUなどに入院している患児を、その兄弟が訪問することを奨励しています」として、基本的な考え方が紹介されています。

<兄弟の面会における基本事項>


・兄弟の面会は入院中の患児にとって有益である。
・病棟に入る前に、訓練を受けた医療従事者が、面会を希望する小児(以下、面会児)一人一人の健康状態について保護者に尋ねる。面会児の健康状態と面会を許可した事実について、診療記録に記載する
・面会児に、発熱や急性期疾患(上気道感染症、胃腸炎、皮膚炎を含む)の症状がある場合には、面会を許可しない。
・面会児が、感染症を発症した人と最近接触し、予防接種を受けていない等の理由でその感染症を発症する恐れがある場合、面会は許可しない。
・水痘患者に最近接触したが、現在無症状の面会児については、水痘の予防接種があれば水痘への免疫があると判断してよい。
・面会児が、面会の時点で受けておく必要がある予防接種を受けているか確認する。インフルエンザ流行期には、インフルエンザ予防接種を受けていることを確認する。
・面会児は、その兄弟のみと面会し、遊戯室などで他の患児と接触しないようにする。
・面会児は、患児との接触前に推奨される方法で手洗いを行う。
・面会児が他の患者と接触したり、指定された場所以外に行かないよう、面会中は保護者が面会児を監督する。

上記サイトでは、「(上記の)基本事項を盛り込み、かつ各医療機関の実情にあったマニュアルを作成し、面会を奨励すると同時に、感染予防のリスクを最少に押さえる必要があると(米国小児科学会)では言っている」としています。


この「各医療機関の実情にあった」というところが、実はとても難しいことではないかと思います。


その理由のひとつとして、産科施設側は、案外とこの新生児期の面会あるいは退院後の家族からの感染経路と思われるケースについて、どれくらい、どのように発症しているのかという基本的な情報さえないからです。


たとえば、退院後数日もしないうちに、上の子からの感染と思われる症状で入院、治療を受けた新生児は国内で、年間どれくらい発症しているのかもよくわかりません。


たまたまそういうケースに遭遇したので「あ、こんなこともあるのか」と感染予防対策を見直す機会になったのですが、退院後の上の子からの感染について情報がなければ、「新生児はあまり感染症にはかからない」と思い込んでしまうことでしょう。


上の子からの感染予防を標準化するには、国内の基本的な情報がまだまだ未整理だといえるのかもしれません。




「新生児のあれこれ」まとめはこちら