産後ケアとは何か 5 <韓国の産後ケア施設>

前回の記事で紹介した、「子育て支援に向けた産後ケア施設の開設要件の研究」では、韓国の4ヶ所の産後ケア施設を視察した報告が書かれています。


<保健医療的ケアを中心にしたケア施設>


まず韓国の産後ケア施設の法的根拠については、以下のように書かれています。

4施設共に2006年の「母子保健法、改正法律」を受けて人材と施設設備を整え届出を行った施設で、立地条件の良い雑居ビルの1フロア、もしくは2フロアで開設していた。

全ての施設かどうかは上記研究では明確ではないのですが、小児科医との連携があるようです。

 新生児については小児科医が週に1回ないし2回の診察を行う体勢がとられており、新生児に異常がみられた場合、診察を行っている小児科医が病院を紹介するのではなく、施設長が近隣の小児科医もしくは救急病院へ連絡し受診する。

また、褥婦に異常が発生した場合は、出産した病院もしくは近くの医療機関に搬送する施設が一般的であった。

韓国の出産事情はネットで少し読む程度しかしらないのですが、「自然分娩の場合、2泊3日」と書かれているものが多いようです。


「2泊3日」ということは、通常は分娩当日、そして翌日から産後1日、2日と数えますから、「産後2日目」の退院ということになります。


日本と比較するとかなり早い時期の退院なので、日本の私達が「韓国は産後ケア施設があってすごい」と単純には思えない状況ではなのかもしれません。

近年、産婦人科の病院が産後ケア施設を併設するケースでは継続したケアが行われているとのことであった。

むしろ早期退院ではなく出産した施設で長く入院する方向、つまり今までの日本の入院期間と同じ方向へ変化していると解釈できるのではないでしょうか?


<視察した韓国の産後ケア施設の問題点>


韓国の産後ケア施設は、母子保健法に基づくものですが、医療施設ではないための問題点があるようです。

しかし、これらのケアサービスは経営者の職種(助産師、看護師、医療従事者以外)の違いによって差がみられた。

韓国の産後ケア施設で提供されているケアサービスについては、以下のようにかかれています。

産後の生活や家族計画・避妊法などの指導、乳房マッサージ・母乳育児への援助、身体的回復へのケアや、沐浴指導・ベビーマッサージなどの新生児ケアであったが、施設により指導者の職種や内容に差がみられた。

ベビーマッサージを「新生児ケア」ととらえるか、アロママッサージなども「身体的回復へのケア」とらえるかによって、たしかに「産後ケア」の差は大きくなることでしょう。


小児科医の診察はあっても施設長が近隣の小児科に連絡・調整するように、その小児科医は施設内での治療介入ができないことが問題と解釈できるのでしょうか。

一方、産後ケア施設は業種としてサービス業に分類されているため運営やサービスの質を規定する法律がなく、施設内での産科医や小児科医の診療は医療法の違反になるとの課題を抱えていた。

もうひとつ、この研究をされた坂梨薫氏の平成21年に提出した研究成果報告書の概要には、上記の文に続けて以下のように書かれています。

特に新生児に感染が発症した場合の拡大の危険性等の課題を抱えていた。


<韓国の状況を踏まえて>


韓国の産後ケア施設の視察から、坂梨薫氏は日本の状況について以下のように書いています。

昨年世田谷に開設した本邦初の産後ケア施設もホテル業とされており、医療法に基づく施設とする課題や、産褥婦や新生児に対するサービスの質の保証と安全性担保の検討の必要性が示唆された

今後本邦においては、産業分類を宿泊施設とせず医療機関とするための方策を考える必要がある。その一つとして、院内助産院と同様に産後ケア施設の病院内設置が考えられる。

医療法に基づく施設にすることが大事であることに賛同します。


ただ、産後ケア施設を新たに作るというよりも、まずは早期退院をさせなくてよいように産科施設の減少を食い止めることが優先課題ではないでしょうか。


それでも尚、宿泊型の産後ケア施設のニーズがある場合、なぜ産後ケア施設は医療法に基づくべきなのか。
そのあたりを次に考えてみようと思います。




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