乳児用ミルクのあれこれ 4 <サカザキ菌に関する資料>

粉ミルクの製品の段階でサカザキ菌あるいはサルモネラ菌が混入し乳児に感染症を起こす可能性があるので注意するようにと、勤務先にも2009年頃に通達が来ました。


その時にこちらの記事で紹介した、「教科書に書いてあること、その行間を読めるようになってください」と教えてくださった先生のもうひとつの言葉を思い出しました。
やや不正確な記憶ですが、たしか「今(1980年代終わり)、わかっているウィルスはほんの一部でしかない。人は細菌やウィルスとの戦いなのです」というようなことでした。


1980年代終わり頃には、ウィルスに比べれば細菌についてはすでにかなり解明されていると受け止めていました。
ところが「まだまだわからないことがたくさんあるものだ」と震撼させたのが、1996年におきた腸管出血性大腸菌O157による感染拡大でした。


大腸菌は知っていてもO157というのを耳にするのは当時初めてでしたし、感染により溶血性の全身症状がでて、透析が必要になるような食中毒があるなんて私自身も周囲の同僚も知りませんでした。


しかも感染源になる細菌はどこにでも生息しているので、従来の食中毒予防の知識のレベルではない食品管理方法を知らなければ身を守れないのです。
このO157の時も、感染症の先生のあの一言を思い出していました。


日本住血吸虫症でも書いたように、ひとつの感染症が解明され治療法や予防法が確立されていくまでには、本当に気が遠くなるような地道な研究があるのだと思います。


前置きが長くなりましたが、今回はエンテロバクターサカガキ菌について書いてあるサイトを私の覚書きがてら紹介します。


「乳製品の微生物危害とその制御」
国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 第一室長 五十君 静信氏

サカザキ菌だけでなくリステリアについても書かれています。
ところで「五十君」はどのように読むのでしょうか?名前は難しいですね。

「乳児用調整粉乳が汚染されているとしたら?」
「小林先生の専門家コラム」 小林一寛氏 (獣医師、医学博士)

1958年以降の「E.sakazakiによる主な乳幼児感染事例(抜粋)」の表があります。

「サカザキ」が日本人名であることは推測がつくのですが、細菌学者、坂崎利一氏についても触れています。
またこのコラムが掲載されている「食中毒予防教室」も参考になるのではないかと思います。

「9.エンテロバクターサカガキ (『食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書』よりの抜粋)」
社団法人 畜産技術協会作成

情報整理シートが、参考文献を探すのに役に立ちそうです。


<おまけ>


病院内で清潔に大量調乳をしている施設での、調乳後の落とし穴としてミルクウォーマーへの注意喚起の記事です。

「ICN実践  Vol.14 NICUでの感染対策〜施設での改善事項〜
東京慈恵会医科大学付属病院 感染管理対策室 美島 路恵氏

ICNというのは感染管理看護師(Infection Control Nurse)のことです。


NICU(新生児集中治療室)に限らず大量に一括調乳をしている分娩施設では、大きな瓶に調乳されたミルクを使う時に哺乳ビンに小分けし、加温して授乳しています。
その加温に使われるのが、38〜42度程度に常時温められたお湯が入っているミルクウォーマーです。
通常、一日に一回、内部の洗浄をして湯を交換しているのではないかと思います。


ちょうど飲みやすい温度に温まる代わりに、「微生物にとっては発育しやすい環境」であるというわけです。
実際に、「複数の施設においてグラム陰性桿菌による患児伝播の報告」があると書かれています。


東京慈恵界医科大学病院で湯煎式ミルクウォーマーの培養検査を実施したところ、「多数のグラム陽性桿菌などが(予想通り)検出され」たため乾式のウォーマーへ変更したという報告です。


もうひとつ、粉ミルクとは別の話題ですが、病棟で使用する搾乳器の消毒も見直されたことが書いてあります。


もちろん、まだ一施設での調査や対応についてだけですので、やはりこうしたことを全国的にきちんと調べて一定の方向性を示せるような周産期看護の研究センターが望まれるところです。




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