乳児用ミルクのあれこれ 8 <哺乳ビンの消毒はどうすればよいか>

「3〜4ヶ月になると『手やオモチャを舐めるんだから、哺乳ビンの消毒だけじゃ意味無いよ』っていう話もよく聞きます」


以前いただいていたyamyamutohさんのコメントについて、今日も資料をご紹介します。yamyamutohさん、お待たせしました。


今回参考にするのは「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル 第2版」(「周産期医学」編集員会、2009年、東京医学社)の、「270 哺乳びんの消毒はいつまで続ければよいのでしょうか?」(p.654〜)です。


<実際の回答モデル>


お母さんへの説明のモデルが以下のように書かれています。

新生児期から乳児期には、細菌やウィルスに対する抵抗力が弱いといわれています。胎内でお母さんから免疫成分が赤ちゃんに移行していますが、生後2〜6ヶ月には低くなります。生後数ヶ月間は免疫機能が不十分で相対的な免疫不全の状態にあります。

また実際の重症感染症(敗血症や化膿性髄膜炎)は、生後3ヶ月までの発症が多く見られます。
以上のことから、生後3ヶ月までは、ミルクを飲んだ後は哺乳ビンをすぐ洗い、ミルクかすが残らないようにし、消毒をして、できれば乾燥させておくことが望ましいでしょう

解説の中では、「哺乳びんの消毒の必要性については、そのエビデンスはみあたらないが、慣習的に指導および実施されている。新生児期および乳児期の免疫額的背景からその妥当性を説明する」となっています。


つまり、消毒をした場合としなかった場合の効果の違いについてはまだそれほど明らかにはなっていないけれど、3ヶ月ぐらいまでは慎重にということでしょう。


また解説には以下のような記述もあります。

生後3〜4ヶ月になると自分の指を吸ったり、手にしたものを口に入れ始め、この時期になると哺乳ビンだけを消毒してもあまり意味がない。

世の中の親が感じていることがそのまま書かれています。


<症状がわかりにくいために慎重に>


消毒の効果は明らかではないがなぜ勧めるかについて、医学的に全て正しいわけではないのですが、私は実際にこんな感じで説明しています。


*生後1ヶ月までの新生児、そして2〜3ヶ月までの乳児は、感染症にかかっても症状がわかりにくい。感染性胃腸炎(下痢・嘔吐)の症状ではなく、髄膜炎などのように発熱や元気がないといった全身症状になりやすい。


*上の子から風邪をもらった新生児も、鼻水や咳といったあきらかな症状が無い場合が多い。これは、のどや鼻でばい菌をやっつける局所の抵抗力が未熟ということがある。お腹も同じで、下痢や嘔吐という症状よりも全身症状がでやすい。


*生後3ヶ月頃からは、緑がかったねばっこい「下痢」あるいはくさい「下痢」などの症状がわかりやすくなり、感染も全身ではなく局所的な抵抗力で押さえられるようになってくる。


*消毒薬や煮沸などの消毒は、だいたいこのころまでを目安に。ただし、清潔な水と洗剤で十分にミルクかすを洗浄し、十分に乾燥させて清潔に保管できれば消毒は不要という考え方もある。


<消毒は不要でも、洗浄・乾燥はしっかりと>


3〜4ヶ月以降でも、哺乳ビン・乳首の清潔な管理が大事なのは同じだと思います。


それは哺乳ビンの乳首の構造が、ミルクかすが付着しやすいことと乾燥させにくいことにあると思います。
また哺乳ビン自体も、食器とは違って中までしっかり乾燥させることが難しい深さです。


ミルクかすに細菌やカビが付着し、そこに水分があれば、繁殖にふさわしい環境になることでしょう。
それは粉ミルクの場合でも、搾母乳の場合でも同じです。
特に1日に1〜2回あるいはたまにしか使わない場合は、使う前にもう一度洗うぐらいでも良いかと思っています。根拠はありませんが。




昨日の記事でも書いたように、乳児期の感染性胃腸炎は原因が特定することも難しいですし、社会全体で哺乳ビンや乳首を介した感染がどれくらいあるのかなども、まだまだわかっていないことだらけといえるでしょう。




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