母乳のあれこれ 22 <血糖値の変化はどのように関係するのか>

乳腺炎予防のために、あるいは「よいおっぱい」のために甘いものや脂っこいもの、特に動物性食品を控えるようにというアドバイスが1980年代から育児関係の書籍で広がったのではないかということを書いてきました。



ただ、その中でそれらの食物摂取と血糖値の変化がどのように母乳に影響するのかについて言及されたものを見た記憶がありません。
ほとんど研究もされていない分野なのでしょうか。


<食品による血糖値の変化の違いは?>


炭水化物を摂取すれば脂肪やたんぱく質に比べても早く血糖値が上昇するように、食物によって血糖値は大きく変化します。


「糖尿病患者さんの間食指導の情報ファイル」というサイトにわかりやすい表があります。
直接リンクできないのですが、その中の「間食のジャンル・食品別のデーター」を参考にしてみると、大福(1個、287Kcal)と苺のショートケーキ(1個、221Kal)では、カロリーは近いのですが血糖値の上がり方が全く違います。
和菓子のように脂肪の少ない菓子と洋菓子では、血糖の上がり方や持続の仕方が違います。
また、もっとカロリーの高いポテトチップス(1袋、476Kcal)はむしろゆるやかに血糖が上昇し、持続しています。


それぞれの炭水化物、脂質の割合によって、このように血糖値の変動に大きな差をもたらすことがわかると思います。


ちなみにぼたもち1個は170Kcal程度ですが、炭水化物のみですから上記の大福と同じように急激な血糖値の上昇が起きる可能性があります。


私には、これ以上食品と血糖値について説明をするほどの知識はないのでdoramaoさんに丸投げしたいと思いますが(すみません)、ある特定の食品が乳腺炎をおこすわけではないけれどこうした血糖値の変化がなんらかの形で乳腺炎の炎症の引き金になる可能性はないのでしょうか?


<こんな状態もある>


授乳期間中に何を食べても特に何も感じない方もいらっしゃれば、ある食品を食べると必ず何らかの変化を感じるということをおっしゃる方もいます。


「ぴりぴりする」「うずく」「張りを強く感じる」などの主観的な感じ方は、それがどのような事実であるのか客観的に表現することの難しいものです。
それは相手の「痛み」を表現したり、理解することの難しさで日々痛感しています。
お産の「痛み」さえ表現しきれていないのですから。


さらにそれが「○○を食べた後に起こる」という因果関係まで調べることは、とても難しいことだと思います。


ただ、たくさんの授乳中のお母さんを見ていると「何か一定の傾向がありそう」と感じることはあるし、それを頭から「食べ物と乳腺炎は関係がない」と否定できるほど何かわかっているわけでもないかと思います。


産後2〜3日目の乳房うっ積の時期にしばしば体験するのが、「ぴりぴりとして、皮膚に触れられるだけでも痛い」方です。
通常の乳房緊満感であればゆっくり乳輪での搾乳をすればそれほど痛みを感じさせずに対応できるのですが、この「ぴりぴり」する感じを強く訴える方は触れることさえ拒否するほどです。


搾った母乳は、通常に比べてとてもベタベタしています。
味見はしたことがないのですが、感触としては脂肪分が多くてベタベタしているというよりは、何か糖分が多いときのようなベタベタ感です。


だいたいそういう方の「傾向」としては、ベット周辺に糖分の多いペットボトル飲料を何本も飲んだ形跡があったり、お腹がすくからといってお菓子を袋一杯持ち込んでいたりします。


いえ、もちろん「甘い食べ物や飲み物がそのまま甘い母乳やベタベタした母乳になった」と言いたいわけではありません。
ただ、血糖が高い状態がなんらかの形で乳腺を刺激して「ぴりぴり」した感じを強めている可能性と、そのような刺激を受けた乳腺からの母乳は多少成分が違う可能性があるかもしれないという推測です。


こういう現場の疑問を誰か研究してくださらないかと思います。
自分達で研究をしろというのが今までの看護界の流れでしたが、1施設で検証するにはあまりにも分母が少なすぎます。
現場の疑問や仮説を拾い上げて、全国レベルで検証してくれる看護研究センターがあれば、今までのように助産師が経験からの思い込みで断定していたようなことが減ることでしょう。




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