「母乳のためには和食が良い」という話は、1990年代以降の母乳育児関連の本でしばしば目にするようになったことをこちらの記事で書きました。
「和食」っていったいどのような食事でしょうか?
そして具体的にその「和食」を摂った場合とそうでない場合の違いは何かあるのでしょうか?
今回は、「和食」を推進する人たちに見られる考え方を見ていこうと思います。
<「生活習慣病が増えた」現代の食生活>
「桶谷式 母乳で育てる本」(桶谷式乳房管理法研鑽会/編、主婦の友社、2002年)の「母乳育児のためにはどんな食事がよいのでしょうか」という章では、以下のような説明が書かれています。
日本人は長い間、米を主食とし、小魚や野菜を中心とする食生活を送ってきました。しかし現代の食生活を見てみると、急速に欧米型の食事に近くなり、ここ50年間に動物性脂肪と動物性タンパク質の摂取量はそれ以前の3〜5倍に達し、パン、牛乳、乳製品、肉類、食肉加工品、油脂類、砂糖を多くとるようになってきました。その結果、日本人の伝統食であるご飯を中心にした和食であれば見られない肥満や心臓病、乳がん、大腸がんなどが増えています。
これに関しては私が説明するよりも、doramaoさんの「和食至上主義に潜む食養の思想」に書かれている答えをそのまま紹介します。
ガン死亡患者数が増えたのは、栄養改善と医療事情の改善により乳幼児や若者の死亡率が激減した結果、長寿化したためである。長寿化の影響を廃した年齢調整死亡データ(厚生労働省発表)で比較すると、ガン死亡率はむしろ減少している。
「日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる」というサイトの「平均寿命の推移(1947〜2012年)」を見ると、女性は53.9歳から86.41歳へ、男性は50.06から79.94歳と急激に長生きの時代に入っているのがわかります。
それまでは、ガンになる以前に感染症や栄養不良で死亡していた時代だったといえるでしょう。
もちろん、たとえば大腸ガンのリスクのひとつに赤肉や加工肉の摂取量が多いことも挙げられています。
ただし「野菜、果物をたくさん食べても大腸がんリスクは変わらず」という結果もあるようです。
要は、バランスの良い食事と適度な運動が基本であって、「和食」と限定する必要もない話だということです。
<「和食至上主義」への入口>
私は「こちらの記事」に書いたようにベトナム料理が好きなのですが、ベトナムはフランスの植民地だったこともあってフランスの影響をいろいろと受けていますし、隣国の中国の料理方法の影響もあります。
インドシナ難民キャンプで働くようになって驚いたのは、朝になると焼きたてのフランスパンのサンドイッチを難民の人たちが販売していたことでした。
パリッと香ばしく焼けたフランスパンに、東南アジアでお目にかかるとは思ってもいませんでした。
サンドイッチの中身は、大根を甘酢に漬けたものとベトナム風の焼き豚を挟んでありました。
日本でいえば「和・洋・中」ですね。
それらが混ざり合って絶妙な味わいとなり、はまりました。
これなんかは、ベトナムでしか食べられない「ベトナム料理」だと思います。
ちなみに、同じくフランス領だったカンボジアの人たちも似たようなサンドイッチを作っていましたが、カンボジアの人はキャンプ内ではあまり商売をしていませんでしたから、たまにしか食べられませんでした。
さて、では「和食」って何?ですね。
「和食」の理想像のようなものにあまりにこだわると、とんでもない話がいろいろ出てくるようです。
doramaoさんの「腸が長いのは気のせいです」では、こんな話が紹介されています。
日本人は昔からこの和食を食べていました。米や穀物中心の和食は消化するのに時間がかかります。ですから、欧米人に比べて日本人は腸が長いんです。
肉中心の食事で「洋食といいます」。日本人がこの洋食を中心に食べると体によくないのはそういう関係からとも言われています。
これ、小学校の授業です。
また「講演会でこんなはなし聞いてきたのだけど(前篇)」の「マクロビや自然流育児にありがちなQ&A」として、天然信仰、農薬・化合物・精製されたものへの過剰な危険視と必ずといってよいほどセットになって語られるのか「食の欧米化」です。
なんとなく「和食ってすばらしい」と思い込んでいると、いろいろな深みにはまりそうなキーワードのようです。
・・・続きは、doramaoさんの和食に関する記事で。
「母乳のあれこれ」まとめはこちら。