前回の記事のような「哺乳瓶の弊害についての一般論」を読むといつも思うのが、「経産婦さんの赤ちゃんなんておっぱいも哺乳瓶並みの早さで飲んでいるのに」という点です。
生後2〜3日頃までの<新生児のうんちとの闘い>と私が勝手に命名している時期がすぎるまで、赤ちゃんはくちゅくちゅと浅く吸い続ける時間が長いのは初産・経産には差があまりありません。
ところが、母乳便に変化するぐらいになると、急に経産婦さんのおっぱいはかなり出始めることをこちらの記事で書きました。
このあたりから、経産婦さんの授乳は「あ、赤ちゃんが起きたかな」と思うと5分後ぐらいには授乳が終わっていたりするぐらい、時間がかからなくなっていくことが多いです。
初産婦さんの産後2〜3ヶ月目ぐらいの授乳ペースですし、まるで哺乳瓶での授乳のペースのようです。
経産婦さんでもさらに3人目になると初乳の量もまた違うのか、出生直後からぐんぐんと赤ちゃんが飲んで、ほとんど生理的体重減少もなく体重増加期に入っていくこともしばしば体験します。
<お腹を動かしながら一気に飲む>
このような経産婦さんの特徴を書くと、母乳の量に注目して、「量がたくさん出る」「お腹が満たされて赤ちゃんが落ち着く」というイメージになってしまいますが、それもまた違うように感じます。
どちらかというと、経産婦さんの赤ちゃんは目が覚めて最初に大きな腸蠕動が起こるまでを待つくちゅくちゅとした浅い吸い方でも、初産婦さんのおっぱいに比べてある程度まとまった量が胃の中に送り込まれるようです。
これも、新生児が哺乳瓶で飲む時の様子に近いのではないかと思います。
前回書いたように、哺乳瓶でも最初に浅めにくわえて少しだけ飲んだあと、大きな胃結腸反射が起きているようです。
初産婦さんの赤ちゃんがずっとくちゅくちゅしてようやく少量の母乳が湧き上がって大きな腸蠕動が起こるまでには、何分もあるいは10分以上も待っているのに対して、経産婦さんの赤ちゃんはそれこそ「哺乳瓶で飲むときのように」すぐに、一気に大きな胃結腸反射が起きている様子が観察できます。
哺乳瓶で飲む様子を観察すると、「一気にたくさん飲む」と表現しても実は、何度か大きな胃結腸反射を起こしている様子がわかります。そういう時には少し人工乳首のくわえ方を自ら浅く調節してくちゅくちゅ待っています。
生まれて2〜3日もすると経産婦さんの母乳分泌量は哺乳瓶並みに出始めますから、「どんどんと胃結腸反射を起こし、うんちをどんどんと送り出し、そしてたくさん一気に飲める」のか経産婦さんの赤ちゃんなのではないかと思います。
だから経産婦さんの赤ちゃんのおっぱいを飲むペースは、まさに哺乳瓶の授乳と同じだという印象です。
<経産婦さんの赤ちゃんは何か不利益があるか>
このように経産婦さん赤ちゃんは生後すぐから赤ちゃんも数分ぐらいで飲み終わることが多いので、初産婦さんの赤ちゃんに比べて顎や口周辺の筋肉を使う機会も少ないですし、最初から「楽にたくさんの母乳を飲んでいる」ことになります。
「哺乳瓶の弊害」として挙げられる一般論が本当にそうであれば、経産婦さんの赤ちゃんは初産婦さんの赤ちゃんに比べて、お母さんのおっぱいを早い時期から簡単に飲めるということで何か「不利益」があるということになってしまうのではないでしょうか?
初産婦さんの赤ちゃんと経産婦さんの赤ちゃんの成長のペースの違いも、なんとなく観察されてはいるけれどまだまだ明確にされていないこと、そして何より乳児がどのように哺乳瓶で飲んでいるのかが十分に観察されていないことが、この「哺乳瓶の弊害」という確証バイアスから抜け出せない理由ではないかと思います。