前回紹介した母子衛生研究会から出されている「『授乳・離乳の支援ガイド』実践の手引き」(2008年、母子保健事業団)には、「育児用ミルクの授乳間隔・授乳回数と授乳量の目安」(p.31)が掲載されています。
たとえば以下のようです。
出生後〜3,5日
ほしがる時 1日8回
初回10〜15ml、(1〜数日ごとに、10〜15ml/回増量)、一日60ml/kg、
7〜10日 150ml/kg
〜1ヶ月未満
1日7〜8回 0〜1ヶ月80ml/回
1〜3ヶ月未満
一日 5〜6回
1〜2ヶ月 120〜150ml/回
ミルクを哺乳瓶で授乳するのは「決まった量を決まった回数飲んで、眠ってくれる」というイメージがあるのかもしれませんが、実際には生後日数によっても、赤ちゃん個人によっても量も回数もさまざまです。
ですから、上記のような数字で表されただけのおおよその目安では、「必要な量を飲んでくれない」「飲んでも3時間持たない」「飲ませすぎではないか」など本当に悩むことがたくさんあるのではないかと思います。
現実の対応に参考になるような「ミルクの飲ませ方」が書かれたものは、ほとんどと言ってよいほど見つかりません。
そういうお母さん達の不安にさらに拍車をかけるのが、医学用語のような言葉ではないかと思います。
<過飲症候群?>
冒頭で紹介した「手引き」の「混合栄養の留意点」(p.32)に以下のように書かれています。
●人工乳首の穴の大きさ
哺乳びんの場合、少し小さめの穴のものを選ぶようにする。これにより、あごや顔の筋肉の発達を促進し、過飲症候群を予防することに役立つ。
「少し小さめの穴」の人工乳首を選択することが本当に役にたっているかどうかは、生後すぐの新生児でもssサイズの最も出にくいタイプの乳首を使っても20mlぐらいを1分もかからずに飲んでしまうことがしばしばあることからも疑問ですし、「あごや顔の筋肉の発達」に関してはこちらの記事に書いたように経産婦さんの赤ちゃんはどうなのかという疑問もあります。
この部分で最も疑問に感じるのは、「過飲症候群」という言葉です。
欄外に以下のように解説されています。
別名「飲み過ぎ症候群」ともいわれ、母乳不足感から母親が必要以上に多量な乳汁を与えてしまうことにより、嘔吐を引き起こしたり、喉がゼロゼロ鳴ったりすることがある。
正直なところ、最近になって初めてこの言葉を知りました。
私が不勉強だったからでしょうか?
違うと思っています。
それは、「乳頭混乱」と同じく、「いまだ医学的なコンセンサスが得られていない」言葉であるからだと思います。
「過飲症候群」について次回考えてみようと思います。