年の瀬も押し詰まったのに、毎日、新生児の『吐く』話題ですみません。
新生児は「吐いている」という表現を使うのではなく、「胃結腸反射の大きな腸の動きの時に、飲んだものが口まで溢れて来る(溢乳)」というように表現を変えてみたら、お母さん達を不安にさせるいろいろな様子の理由も説明がつくのではいかと思います。
たとえば、「過飲症候群の症状」とされたものも、溢乳と関連した必然的なものであるといえるかもしれません。
<よく吐く、いきむ>
「吐きやすい」赤ちゃんも、必ずその前にサインを出しています。
出生直後2〜3日ぐらいだと、口まで溢れてきそうな時には2〜3分ぐらい前からかなり激しく啼くことがあります。
あるいは「もう何度も体験したから啼いて知らせなくても大丈夫」という赤ちゃんは、目をあけたり、モゾモゾしたり準備しています。
そのタイミングで、縦抱きにしてあげるとしばらくすると胃の中のものが口まで溢れてくる大きなゲップが起きることは何度か書いてきました。
こうするだけで、「吐く」ことは少なくなります。
溢れてきただけなので。
この溢乳が終わったあと、必ずと言ってよいほど赤ちゃんはお腹に力を入れていきみます。
胃結腸反射で溢乳がおきたあと、いきむ。
なにか消化・吸収の段階で必然的な行動だといえるのではないでしょうか。
<多呼吸、鼻閉、喘鳴(ゼロゼロする)>
大きな腸蠕動(胃結腸反射)とともに、胃の中のものが鼻の奥ぐらいまであふれてくるのですから、当然鼻の粘膜や気道と食道付近の粘膜も刺激されることでしょう。
溢乳のあとゼロゼロと聴こえたり、鼻が詰まったような音がよくありますが、しばらくするといつの間にか消えてしまうのは、やはりこの溢乳のタイミングと関係していると考えられます。
くしゃみも、またこのタイミングで出ることが多いようです。
<そり返りが強くなる>
溢乳が起きる前に、背中をのけぞらしてつっぱることがあります。
縦抱きにしていてものけぞっていくことがありますし、あるいは眠っていたのに急に起きはじめてのけぞったりします。
これも溢乳が起こることを察知して、新生児なりに対応しようとしているようです。
蛇腹を伸ばせば、それだけ容量が増えるのと同じような感じかもしれません。
ぐっと伸びれば、口の辺りまで溢れてきても吐き出すものは少なくて済むようです。
<赤ちゃんはいきみながら育つ>
私が助産婦学生だった時、「昔から赤ちゃんはいきみながら育つといわれていた」と授業で聞いた記憶があります。
おそらく昔から、幼児以降の子どもや大人であったら「異常な様子」に見えることも、新生児から乳児期には「普通のことである」ことを経験的に伝えられてきたのだと思います。
私は、このひとこと「赤ちゃんはいきみながら育つ」を聞いたお陰で、「赤ちゃんが苦しそう」な様子も「あ、これはいきんでいるのだ」と理解することができました。
学生時代から2十数年以上たったのに、新生児にもっとも近いところにいるはずの助産師は、この「いきむ」ひとつをとっても、いまだにこうした昔からの経験則を観察に基づいて検証をするためのシステムがないことが残念です。
「過飲症候群の症状」として挙げられたもののほとんどは、「胃結腸反射に伴う溢乳」で説明がつくように思います。
お母さん達を不安がらせる必要は何もないことです。
まして、「哺乳瓶をつかったせい」のように思わせる必要もないことでしょう。
「吐く」という言葉をできるだけ使わずに、「溢れてきた」と表現してみるだけで赤ちゃんへの見方が変わるように思います。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。