身長や胸囲は日常的に変化するものではありませんが、腹囲に関しては一日の中でもかなり変動するのではないかと思います。
たとえば食後であれば腹囲はそれほど変化なかったとしても、もう少し上の上腹部がぷっくりと出っ張っていることは感じると思いますし、便意が出る頃には下腹部を中心に出っ張ってくることは感じることでしょう。
新生児もそういう一日の中の変動があります。
お腹がかなりふくらんでいるので「飲みすぎ?」「苦しいのか?」と思っているとうんちが出る直前で、排便とともに張りが少なくなります。
医学的に異常や疾患を疑わせる「腹部膨満(ぼうまん)」という言葉があるので、日々新生児に関わっている看護スタッフでも、お腹がふくらんでいるのをみるとまずは「異常」を考えた対応が先になりやすいように思います。
たとえば綿棒で刺激してみたり、しばらくうつ伏せ寝にさせるなどしていることが多いと思います。
こうした新生児の一日の中の腹囲の変化も、それは消化・吸収・排泄によって変化するのだと思いますが、そうしたケアをする側の経験則がまだ表現されていない部分です。
<新生児期の長期的な腹囲の変化>
一日の中でも腹囲の変動だけでなく、出生直後から生後1ヶ月までの腹囲の変動には特徴があるのではないかと考えています。
それは、ある時点から急にお腹全体が大きくなり「蛙ばら」のように変化することです。
身長・体重の増加に比べても、腹囲の大きさが著しくなる時期があります。
新生児用のオムツも、最初はきっちり止めていてもゆるゆるなのに、どんどんと止めるテープの位置が外側へと移ってお腹だけきつそうになっていきます。
急におなかが大きくなったと感じたお母さん方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事で、新生児の飲み方や母乳の分泌が生理的黄疸と関連して変動していく可能性や、黄疸の持続と体重増加期に入る時期の関連の可能性について書きました。
新生児のお腹が急に大きくなる時期にも、この黄疸と体重増加期に入るタイミングが関係しているのではないかと、日々感じています。
たとえば、退院後1週間ぐらいミルクを足してもなかなか体重が増え始めない新生児のほとんどが、黄疸が持続しています。
トータルビリルビン値でいえば、13〜15mg/dlぐらいで、光線療法の適応でもない新生児です。
たくさんミルクを足そうとしても頑としてのみませんし、母乳もくちゅくちゅと浅い吸い方が多い赤ちゃんです。
そういう新生児のお腹は、平らなままです。
ところが黄疸が引いてくると、母乳の飲み方も深い吸い方が多くなり、ミルク量も急に増えてきます。
そして体重増加期に入り、多い場合だと一週間に数百グラムぐらい一気に増えることがあります。
このような変化には2〜3週間ぐらいの個人差があるようです。
体重増加期に入った赤ちゃんのお腹は急に、「蛙ばら」のような大きなお腹になっていきます。
このあたりの、新生児の黄疸、体重増加期、飲み方の変化などと腹囲の変化もまだまだ十分に観察されていないと思います。
<なぜ急に蛙ばらになるのか>
新生児のお腹が大きくなるのは、単にどれだけ飲んだか・どれだけ出たかというin-outの問題だけではなく、急激に身体が発達するための消化・吸収に耐えられるように、当然、「腸自体が発達して大きくなっている」からとも考えれるのではないかと思います。
新生児の消化管の大きさや重さがどれくらい変化していくのかという基本的なデーターも見たことがないので、新生児の腹囲の変化はまだまだよくわかっていない分野なのではないかと思います。
こうしたデーターを集めるのは、新生児にも母親にも負担をかけるので倫理的にもなかなか難しいかもしれませんね。
<飲ませすぎと言われてしまう>
この生後1ヶ月くらいまでの新生児には、どこかで急激に腹囲が増加する転機がある可能性がもう少し見えてくれば、大きなお腹をみて「飲ませすぎ」と言われてしまうお母さんを減らせることでしょう。
まして、急激な体重増加期に入るときには一日あたり60〜80gの体重増加になりますから、「ミルクを与えすぎて体重が増えすぎた」=「過飲症候群」と判断されやすいのではないかと思います。
そういう急激にお腹が大きくなる時期があるのだということがわかれば、「不必要な人工乳」を「母親が足りないとついつい足したため」といったことに原因を求めることがなくなることでしょう。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。