境界線のあれこれ 31 <「准」がつくこととつかないこと>

世の中の仕事で「准」がつくものと言えば、以前は准看護師しか思いつきませんでした。


いつ頃からでしょうか、准教授という役職名を聞くようになったのは。


wikipedia准教授によれば、助教授が「教授の職務を助ける」のに対して、准教授は「教授に次ぐ教員の職階のこと」と書かれています。


大学教育の雰囲気をよく知らないのであくまでも想像ですが、「准」を使うようになったのはそれまでの教授を助ける役というよりも、教授になるべく実績を積んでいる者という、独自性を表すためなのでしょうか?


「准」の語源には「(平らに)ならす」「なぞらえる」という意味があるようです。


ますます、准看護師がどのように命名されたのかわからなくなりました。
どなたかご存知の方がいらっしゃったら是非教えてください。


准看護師さんと働いた経験>



私が最初に看護師として働いた総合病院は正看護師のみを雇用していたので、当時私は、世の中に准看護師という資格があることさえ知りませんでした。


1980年代後半、難民キャンプでの活動のあと助産師への進学を決めてから一時的に働いていた民間の病院で、初めて准看護師さんたちと一緒に仕事をすることになりました。


またその病院では准看護学校の学生も雇用していましたから、彼女達は午前中は看護助手業務をして、午後から学校で学んでいました。
2年間、働きながら学校へ通います。


病棟の看護スタッフの半数は、准看護師さんでした。


施設によっては、准看護師の場合、リーダー業務(全体を把握し、医師の指示受けをするなど)はさせないところもあるようですが、私が勤務した3ヶ所の総合病院のうち2ヶ所は、准看護師と看護師の業務には何も違いがありませんでした。
リーダー業務もてきぱきとこなす、実力のある准看護師さんがたくさんいました。
年齢に関係なく、若い准看護師さんでも病棟全体や患者さんをよく把握して、臨機応変に動ける方もたくさんいました。


「准」がつくこととつかないことの違いはなんだろうと、その当時から考え続けています。


准看護師と看護師の業務の違い>


准看護師と看護師の業務範囲を公的に規定しているものはあるのでしょうか?
今のところ私は探し出せていないのですが、どなたかご存知の方がいらっしゃったら教えてください。


たとえば、保健師助産師看護師法第5条に「看護師の定義」があります。

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とするものをいう。

そして続いて「准看護師の定義」が第6条に書かれています。

この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

この「看護師の指示を受けて」が何を意味するのか、そのあたりのあいまいさが「准看護師制度の問題」という受け止めかたにもなるのかもしれません。


たとえば、「看護師の資格・仕事ナビ」というサイトで「正看護師と准看護師の違い」では、正看護師が「自らの判断による主体的に看護が行える」に対し、准看護師は「医師、歯科医師、看護師の指示により看護が行える」という解釈を書いています。


ただ、看護師は独立開業が認められていないので、つねに医師のもとで「傷病者もしくはじょく婦の療養上の世話」をすることを前提にしてますから、何をもって「主体的」とするかが難しいところです。



このあたり、看護師資格を1本化したい側にとっては、看護師と准看護師の業務を明確化したものを認めてしまっては、反対に看護師以外の看護職を存続させてしまうことを危惧しているのでしょうか。


「准」の一文字がつくだけで、いろいろな立場のいろいろな思いがたくさんある資格制度なのかもしれません。





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