境界線のあれこれ 32  <看護職の適性のあるなし>

このところずっと、助産師を含めて、「看護職の適性」とは何だろうと考え続けています。


それについてはまたいつか改めて書いてみたいとは思っているのですが、ぐるぐると考えをめぐらせている中で浮かんでくるのは、「周囲の状況を一瞬にして察する能力」と「臨機応変に対応できる」、そして「優先順位を考えて行動できる」あたりはけっこう大事かなと思っています。


こうしたことが苦手な方には耳の痛い話ですみません。


ただそれは人間の優劣を指すのではなく、あくまでも能力の一つとして何かの仕事をするうえには向いているという話です。


そして私が看護師になった30年ほど前に比べると、最近は看護職の仕事の範囲も広がりましたから、もっと「じっくり対応する」あるいは「ひとつのことに集中力を発揮する」などの能力が求められ、生かせる業務もあると思います。


<看護職の業務の2つの柱と適性>


保健師助産師看護師法に規定されている看護師の業務は、「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話」と「診療の補助」が大きな二つの柱になっています。


たとえばシーツ交換は、実際には無資格の看護助手さんでもしています。
ただし一見簡単そうですが、そこに病気で治療を受けている患者さんが寝ている場合、どのような手順で何に注意して行う必要があるのか理解して行うためには看護の知識と技術が必要になります。


人工呼吸器やら複数の点滴あるいは医療機器が装着されている方には、シーツ1枚替えるにも安全性と快適性を考慮して実施しなければいけません。
シーツを替えながら患者さんの状態を観察し、医療機器などがきちんと作動しているか確認しながら行います。


そして、その患者さんのシーツ交換に何人のスタッフが必要で何分ぐらいかかるかあらかじめ予測し、病棟全体のその日のスケジュールを考えながら、何時頃にそれを実施すれば業務全体を滞らせなくてすむかなどの判断も必要になります。


これだけでも新人の頃にはいっぱいいっぱいで、他の業務にまで手がまわらなくなります。


でも20人から40人ほどの患者さんにその日のうちにしなければいけない「療養上の世話」と「診療の補助」の、氷山の一角にすぎません。


出勤して入院患者さんの状況をぱっと見ただけで、そこから業務の優先順位を考えながら仕事の段取りができるのが中堅達人級の看護職です。


そして途中で、患者さんの急変があったり、緊急の入院があったりしても臨機応変に段取りを変えながら、最終的にはきちんと目的が達成されていることが大事です。
時には「ごめんなさい。今日はできないから明日必ずしますね」ということもありますが、今しなければいけない治療や処置を「ごめんなさい。明日ね」とはいえませんからね。


<「適性」は資格には規定されない>


看護師の国家試験にも、准看護師都道府県試験にもこの「適性」を問うことはありません。
あくまでも知識が一定の水準に達しているかどうかを確認するものです。


准看護師と正看護師の教育時間はかなり違いますから、卒業時の知識量には当然差があります。


ところが、臨床に出て周囲の動きを見て学べる人は知識や技術を磨き、この資格の境界がなくなります。


では、教育の差はどこにでてくるのでしょうか?





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