天からの贈り物   スティールパン

先日、NHKの「地球イチバン」という番組で「世界一ドラム缶を叩く人々」がありました。


「ドラム缶を叩く」でスティールパンのことだとわかり、以前何かで知ったその楽器に興味があったので録画しておきました。


私自身が感情でのめりこみやすいので音楽と距離を置いていたことや、ドキュメンタリーでも伝える側の意図や感情に影響されていることへの警戒感のようなものがあるので、この番組もさらっと観るつもりでいました。


ところがあのスティールパンの澄んだ音に字幕に書かれた淡々とした事実が共鳴しあい、夢中にさせる内容でした。

スティールパンのルーツ  祖先に感謝する
奴隷としてアフリカから来た 全てを奪われた奴隷 祖先から受け継いだたましい 呼び戻す  つながる
故郷から引き裂かれてこられた奴隷

トリニダード・ドバコという国名やポートスペインという首都名から、スペインの植民地であったことがわかります。


1962年に独立するまで、先住民のカリブ族・アラワク族に置き換えられるようにアフリカから大勢の人たちが連れてこられ、イギリス、オランダ、フランスなどの植民地であったようです。

アフリカとつながる手段 アフリカンドラム  
特に大切にしたいもの
島にある材料で太鼓をつくりだした
プランテーションの重労働の合間に叩き続けた
アフリカから連れてこられた先祖
心臓の鼓動が一緒になった
19世紀 イギリスが太鼓を禁止 暴動を怖れた
やつらは心臓を止めたんだ
新たな抵抗 タンブー・バンブー
20世紀 タンブー・バンブーも道路を傷つけるという理由で禁止
従わない黒人は殴られ 牢獄に入れられた
抵抗を続けた 音楽をやめられなかった
路上に転がる鉄くずを楽器にした

「音楽がなければ生きていけません。 音楽は私たちの『声』だからです」
自分たちの存在を知らせる
自分はちっぽけな存在 音楽によって大きな力を持つことができる

そうしてできたのが「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器」と呼ばれるステイールパンでした。

天からの贈り物 
島で石油が産出された 
鉄くずさえドラムにする ドラム缶に手をつけないはずはない
へこみぐあいで音がかわる
競うように音階をつくった

番組を見逃した方のために、Trinidad All Starsをどうぞ。
テレビの方が比較にならないほど音がよいので少し残念ですが、でも圧巻だと思います。
プロのミュージシャンはほとんどいないくて、一般の人たちだそうです。


旅人・ナレーション役の浜野謙太氏が、問いを投げかけます。

大震災で音楽を自粛した自分
音楽は何のためにあるのか?
音楽なんてやっている場合ではないと仕事がなくなった

現地の人が答えます。

俺達も同じようにするだろう
大震災があれば、仕事がなくなることもあるだろう
でも1ヶ月もしたら音楽をしたくなるはずだ
人生は続くんだ
心の中には家族を失った傷が残っているだろう
妻や娘を失った悲しみは計り知れない
でも人生は先に進んでしまうんだ

相手の立場に自分を置いた言葉が、気負うことなくごく普通の人から出てくる。


それは奴隷としてつれてこられ植民地で生きてきた歴史が、心臓の鼓動とともにあるからなのだと思いました。