看護基礎教育の大学化 9 <「スキルミクス」と「看護資格一本化」の矛盾>

こちらの記事で、看護師、看護助手などを組み合わせる「スキルミクス」について少し書きました。


実は私自身、こういう言葉がすでに十数年前から日本の看護の方向性を決める人たちの間で使われていることを最近まで気づいていませんでした。


スキルミクスに関してわかりやすい説明がありました。
「スキルミクスとチーム医療  〜コメディカルスタッフが支えるチーム医療〜」
(スライド用のPDFですので注意)


そのp.44にスキルミクスの言葉の説明があります。

スキルミクス


・もともとは看護職種における職種混合を意味していた
・看護スキルミクス
  看護師、准看護師、看護助手というように、資格能力、経験年齢などが異なるスタッフを混合配置することを指していた。

現在ではもう少し概念が拡張されて、多職種の機能ということで使われているようです。

スキルミクスの概念の歴史


スキルミクスの概念は1990年代に医師不足、看護師不足に悩んだOECD諸国で、その養成にも維持にも時間とコストがかかるこれらの職種の在りかたや機能が議論された結果生まれた概念である。

そして医師の一部の機能を担うための「看護師や助産師の業務拡大の議論」が日本でも表面化したのが2000年代半ばでした。


<「7対1看護」の現実>



母が最初に入院した急性期病院は「7対1看護」を取得していましたから、病棟のケアはほとんど看護師が行っていました。看護助手さんの患者さんに対する業務は配膳などに限られていて、直接の身体ケアには携わっていないようでした。
准看護師さんも勤務していたと思いますが、詳細はよくわかりません。
いずれにしても、有資格者による看護でした。


ところが転院したリハビリ病院では、看護師さんが来るのは検温と配薬ぐらいで、それ以外のトイレ介助、入浴・清拭介助、車椅子への移乗などの療養上の世話のほとんどを看護助手さんが行っていました。


「スキルミクス」と言うと聞こえはよいのですが、実際には有資格者と無資格者の看護ケアを医療現場に導入させてしまったとえるのではないでしょうか。


看護協会が政策提言してきた「7対1看護」の蚊帳の外になってしまった施設では、専門教育を受けた看護師はますますpassing medicationと、早期退院・転院のための調整役が業務の中心になるのかもしれません。


「看護の質の向上」を目指して看護資格の一本化を謳ってきたはずなのに、いつのまにかさらに多様な看護職を内包させるという矛盾がある、その事実を認めることがまず必要ではないかと思います。





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