境界線のあれこれ 43 <足のないものと足が多いもの>

春になると一斉に草花が芽吹くように、小さな虫が活動を始めますね。


先日、お風呂場に生まれたばかり(かどうかわかりませんが)のごま粒ほどの小さなクモがいました。
お風呂場に残っていた水滴に向って歩いています。
そのまま水滴に触れたら溺死してしまうのではないかと、方向変換をさせ別の場所に移しました。


私にすれば助けたつもりですが、クモにとってはどうなんでしょう?
クモは水に弱いのかどうか、wikipediaではわかりませんでした。


我が家には毎年小さなクモがからなず出てきます。
たぶん棲みついているのだろうと思って大事にしています。
そして、なんとなく羅生門蜘蛛の糸が意識されて私には蜘蛛は殺せないのです。


<足のないものと足の多すぎるもの>


人によっては、クモは大嫌いで気持ち悪く感じるようです。


私はクモは嫌いではないです。
小さい頃住んだ山間部の地域には、通学路の雑木林にたくさんクモの巣がありました。霧がよく出る地域で、クモの巣に水滴がつく様子がとても美しくよく眺めていましたから、クモは身近な生き物でした。


私が苦手なのは、足のないへびやミミズ、反対に足の多すぎるムカデなどです。


同じように足のないうなぎや穴子は平気なのに、ウミヘビとなると鳥肌がたつのですから、自分でもその根拠のなさに理解できないでいます。


以前、暮らした東南アジアの農村で、すごいものを見ました。
道に鮮やかなオレンジ色のサンダルが落ちているので近づいたら、なんと大きなムカデのようなものでした。


いやはや、熱帯の動植物は色も大きさも本当にダイナミックです。


昆虫も嫌いではないので、私の苦手な動物の境界は脚が6本から8本までは許容範囲というところなのかもしれません。


<観察に基づく分類>


溺死しかけたクモのお陰で、少しくもについて勉強する機会になりました。


すごいですね。クモ学として、本当に細かいところまで分類されています。
節足動物門鋏角門亜門クモ綱クモ目に属する動物の総称」までに分類されるには、気が遠くなるような観察の積み重ねですね。


クモ「網」ではなく「クモ綱」とは一体何かといえば、「ダニ・サソリなどを含む大きなグループ・いずれも8本の脚を持ち、触角はなく、口には鋏状の鋏角という器官をもっている」とあります。


そういえば東南アジアでは玄関にサソリが出ることもありましたが、やはり嫌いという感情は沸きあがりませんでした。
あるいはダニも病害虫ではありますが、外来で毛ダニの標本を見てもやはり嫌いとか気持ち悪いという感情は起きませんでした。
脚が8本だからか・・・となんだか納得しました。


クモの観察で印象的だったのは、「クモの社会性」という項でした。
個体間でお互いに攻撃する行動をとらない「寛容性」とか、「個体間の相互作用」「共同作業」があることまで観察されているのですね。


もしかしたらクモ同士だけでなく人間に対してもあるのかと思うほど、我が家のクモは私の存在を認めてくれているような気がするのですが。


そして「人間との関係」のなかでは、益虫であることを「理解している人は、居宅や身の回りにクモが見られても気にしないことが多い」とあります。
私のクモに対する感情は、このあたりかもしれません。




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