境界線のあれこれ 45 <女性の精神の揺れ>

私はそろそろ更年期も終わる頃で、「では次は老年か、いやまだ中年だ」などとその境界線を自分で勝手に模索しているこの頃です。
いえ、定義的にはまだ中年ですが。


更年期というと、体調が悪くなったり女性が何か大きなものを喪失していくネガティブなイメージで語られることがほとんどです。


私は更年期障害らしきものは、少し汗が多くなる時期があったことと、こちらの記事で書いたように急に筋肉が減少していくような感じぐらいでした。


何より、月経周期に伴うホルモンの変化に左右されていた体調から解放されたことで、むしろ健康感を感じるようになりました。


「あー、世の男性というのは、こんなに精神的に平坦な人生を楽しんでいたのか!」と。


<月経を中心にしたサイクル>


wikipedia「月経前症候群」に、月経前1〜2週間の身体的・精神的な影響が書かれています。


月経前「症候群」というほどの影響を受けない人でも、この表にある状況のいくつかがあてはまるのではないかと思います。


小学生で始まり、更年期が終わる40代から50代までの40年ほどを、こうした月経を中心にしたサイクルが女性の人生に大きく影響を与えていきます。


いやぁ、本当に長かったなぁいうのが実感です。


<月経サイクルによる精神的なアップダウン>


私自身は月経そのものよりも、月経前つまり黄体期の体調の変化のほうが大変と感じました。


月経前症候群もその感じ方は個人差が相当あると思いますし、日常生活に影響を与えるのであれば受診して相談されるとよいと思います。


私は受診するほどではない程度でしたが、それでも低用量ピルがある時代だったら選択したかもしれません。
ピルも日本ではまだ手に入らない頃でしたから、自分で基礎体温表をつけながら自分の体調と精神的変化のパターンを予測し、できるだけこの精神状態のアップダウンに自分がまきこまれないようにするしかありませんでした。


wikipediaの「身体症状」にあるように、月経前には食べても食べてもおなかがすく食欲亢進状態にくわえて、むくみやすいので体重も増えました。
眠気が強くなり倦怠感も強くなり、集中力や判断力も低下しますし、涙もろくなりました。


そういう時期が2週間ほど続くと、いきなり大掃除を始めたくなりました。
普段から掃除好きだった私が、さらにあちこちを磨き、物を捨てたくなります。
さわやかな気分になると、たいていは翌日に月経が始りました。


けっこう、私の周囲でも月経の前日あたりに大掃除をしたくなる人がいますが、どれくらいの割合なのでしょう。


月経自体は軽かったので、始るとむしろ思考能力も判断力も戻って、感情も安定しました。


私自身は基礎体温表でだいたいの傾向と対策をたてていましたが、それでもあの黄体期の自分は、黄体ホルモンの影響に打ち勝てない無力な自分、怠惰な自分のように落ち込みました。


またわけもわからず涙もろくなりました。
感受性がたかまって日ごろは心の底にあるような感情の機微に向き合うことで人生の意味を深めていける利点もありますが、強い感情に押された善意や正義感で行動してしまったのではないかと、今、赤面するのです。


もちろん月経周期もほんとうに驚くばかりの人体の不思議によって成り立っているし、こういう不便さもあわせて女性として生きてきたこともそれはそれで良かったと思っています。


でも、もしもう一度人生をやり直せるのであれば、今のように精神状態が安定した中で判断、行動してみたいと思うのです。


それほど私にとって、更年期が終わったことは精神的な安定を得た実感があるです。


「出産と育児のリアリティショック」を考えるにあたって、この人生の長期間を生殖ホルモンによって精神的な変動を強く受ける女性という視点は重要ではないかと考えています。




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