産後のトラブルを考える 13  <仙骨神経刺激療法>

6月5日のヨミドクターに「便失禁に仙骨神経刺激療法・・・装置植え込み神経に電気」という記事がありました。

本人の意思に反して便が漏れる便失禁。その新たな治療法として、体内に植え込んだ装置で骨盤内の神経を電気刺激する「仙骨刺激療法」が4月から保険適用された。患者の体への負担が少なく、高い効果が期待されている。

ヨミドクターの記事に以下のように書かれています。

便失禁の原因で最も多いのは、加齢などで肛門の収縮力が弱まったケース。ついで女性が出産時に肛門周囲の筋肉や神経を傷つける場合が多い。

以前、私の勤務先で出産した方で、産後1ヶ月頃からこの便失禁がひどくなり精神的にも追い詰められた方がいらっしゃいました。


分娩経過の記録と担当した助産師の話を確認しましたが、難産というほどでもなく一回の吸引分娩でしたし通常の側切開の会陰切開でしたから、まさか肛門周囲の組織に損傷を起こしているとはそれまでの私たちの認識では考えられないことでした。


当時、いろいろと調べたり考えたりしたことで「産後のトラブルを考える」の記事を書いたのですが、特にこのあたりから出産と便失禁について書きました。


それまでの会陰4度裂傷などあきらかな肛門筋の損傷だけでなく、出産そのものが肛門や骨盤底筋郡に与える影響不顕性肛門括約筋裂傷について少しずつ研究が進んでいることなど、私自身も不勉強であり認識不足でした。


その方がいくつかの専門病院を受診して治療方法はないと言われ、いつ便失禁がおこるかわからない状況で日常生活を過ごすだけでも精神的に追い詰められているはずなのに、「赤ちゃんはかわいいと思うので頑張って育てる」とおっしゃられました。
その生活の不自由さや不安に思いを馳せるだけでも、「無事に出産が終わって何より」という意識だけでは私たちもいけないことを痛感しました。


「分娩の対応に原因があると責めているわけではないけれど、最初に相談したときにやはり医師ももう少し親身に対応して欲しかった」
「もう治療法はないと言われ、一生、便失禁におびえながら暮らすしかないことになりました。でも近い将来、新たな治療法が日本の病院で受けられるかもしれないと、今、通っている病院で言われたので、それを少し希望にして生きていきます」


その治療方法が、この4月から保険適応になったこの仙骨神経刺激システムだったようです。






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