出産・育児とリアリティショック 12 <医療処置はもうたくさんと思いたくなる時 >

自らのお産の体験から自宅分娩推進運動を始めたというオーストラリアのCarolineさんの第一子出産時の情報を読むと、そのお気持ちは理解できるような気がします。


いえ「自宅分娩に」ではなく、「医療介入が少ない、優しいお産に」という気持ちに対してです。


たとえば子宮筋腫合併妊娠ですが、筋腫の場所や大きさによっては分娩方法や分娩時の管理にも注意が必要になってきます。
おそらく、第一子妊娠中にCarolineさんはそのリスクを理解されて病院での分娩を選択したのではないかと想像しています。


子宮筋腫だけだったら、おそらく予想以上の「医療介入されたお産」にはならなくて済み、次に自宅分娩を考えるほど出産の医療介入を拒む動機にはならなかったかもしれません。


ところが、予期しなかった胎盤癒着があり、胎盤の一部が残ったために処置が必要になった。
これが彼女の出産に対する理解を超え、医療処置に納得できない気持ちへと変化させてしまったのではないかと。


胎盤遺残・・・胎盤が残ってしまうこと>


私にとってお産は感動というよりも安堵感のほうがしっくりくることを以前書きました。


その安堵感も、ふたつあります。
まずは、赤ちゃんの産声を聞いた時です。


そして次に、10ヶ月その赤ちゃんを守り育てて役目が終わると同時に、自らはがれて母体外に出る胎盤を受け止めた時です。
その無事に出た胎盤の大きさや重さを測定し、胎盤所見を観察する胎盤計測のときというのは、「胎盤娩出まで無事にお産が終わったことに安堵し、何者かに感謝せずにはいられない気持ちでいっぱいになる」時であることをこちらの記事で書きました。


出てきた胎盤の子宮側の組織というのは、先ほどまでしっかり子宮壁に付着していたとは思えないほど、みごとにスルッと滑らかに剥がれた様子がわかります。


この一部分でも子宮壁に組織が食い込んでしまったら、胎盤が残ってしまいます。
子宮が収縮しきれないので大出血の原因になったり、残った胎盤を取り出すために医師が子宮内に手をいれて用手剥離(ようしゅはくり)という処置が必要になります。


それでも残ってしまった場合には、1〜2週間と時間をかけてはがれ落ちるのを待つ場合もありますが、感染を起こさないように出血を増やさないように管理が必要になります。
臨床で時々遭遇するこの胎盤遺残は、最悪の場合母体感染や子宮摘出などになりますから、けっこう緊張しながら経過をみています。


なによりも、産婦さんご自身が「赤ちゃんは無事に生まれたけれども、お産は終わっていない」「自分の体はどうなるのだろう」という大きな不安があることでしょう。


赤ちゃんが生まれても、胎盤が無事に出終わるまでさまざまな検査や処置が続きます。
思い描いていた出産とは大きく違ってしまったのでしょう。



お母さんと赤ちゃんが無事に生まれたのは医療があったからということは理解できても、どこかで納得できない気持ちが、もう医療処置はたくさんと思わせてしまったのかもしれません。


本当に説明というのは難しいと、このCarolineさんの記事を読んで思いました。




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