思い込みと妄想 3 <妄想は専門用語の形で入ってくる>

昨年書いた「助産師と自然療法そして『お手当て』」という記事は、ここから23番目の記事までは主にマクロビオティックについて、24番目の記事から46番目の記事までは整体についてです。


マクロビや整体に限らず、代替療法では治療の域を踏み越えて効果や効能を謳うときに、妄想へと発展するのかもしれません。


そしてそれは医学であるかのような専門用語の形で入ってきます。


<マクロビと整体の妄想>


たとえばマクロビのお手当ては、手当てを超えた「治療法」としての効果が書かれています。
さりげなく「癌」「リウマチ」「肺炎」などの疾患名を入れて、「必ず症状は改善します」と書かれています。


「羊水の冷えは胎児を萎縮させる」とか「胎盤早期剥離は陰性の食事、例えば甘い物や果物、酢の物などが多かったり、おかずが多いことが原因と目の前で言われたら、「関係ないですよ」と一言で却下される話です。


あるいは野口整体産後の骨盤万能論に出てくる「骨盤の収縮」「骨盤の後始末」「骨盤の調整」などの表現や、7ヶ月の早産児を「ペシャンコになって風船が縮んだ状態」だったものを「後頭部に愉気をしたらなおってしまった」なども、そのようなことを語る本人のほうが大丈夫かと心配されるような話ではないかと思います。


そうした疾患に日々対応している医療従事者であれば、失笑で終わる話ばかりです。
ところが専門職には鼻から相手にされない話でも、医学用語が使われているだけで「妄想」は社会の中に広がっていくことになります。


<議論にならない妄想の広がりを予防するために>


こうした代替療法系の妄想話に対して、医学的な根拠で説得しようとしても無理です。


思い込みなのですから、議論になるはずがありません。


全てを信じていたわけではなく少し心を魅かれていた程度の方でも、自分が良いと思ったことを否定されるかのような議論をもちかけられれば、否定されたと心を頑なにしてしまうこともあるでしょう。


そろそろ医療関係者の中にも、「こうすれば○○が治る」といった妄想話に患者さんやその家族が入り込まないような説明も大事であることが基本的な姿勢になる必要があると思います。


たとえば私は、妊娠中や産後の腰痛の話題では必ずお母さん達に、トコちゃんベルトのような整体やさらに乳幼児への整体の話には注意が必要であることを説明しています。


あるいは乳腺炎のトラブルを予防する方法を説明する時には、乳房マッサージに通い始めることで「病気にさせない(医療を受けさせない)自然な育児」「極端な食事」「予防接種拒否」などに巻き込まれる可能性も話しておきます。


また、生後1〜2ヶ月頃から出始める脂漏性湿疹も、アレルギー疾患を不安に思う気持ちからこうした代替療法の妄想話の入り口になる可能性があることも話しています。


妄想は専門用語の形で入り込んできますから、その入り口に立たせないように予防線を張る。
それは医療や看護にとって、大事なリスクマネージメントとして早急に対応策を考える必要があると思います。


特に代替療法が入り込んだ生育環境からひとりで逃げ出せない子ども達のためにも。




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